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地球大進化

昨日『NHKスペシャル』の「地球大進化第3回を見た.

膨大な情報を1時間枠の映像作品に収める苦労は大変だと思うが,やはり変なところがあったのでコメントしたい.

まず,肺の起源について.

番組中では,肺魚や両棲類などの祖先にあたる淡水魚が,水が干上がっても生き延びるために進化させた器官ととれるような説明をしていた.

食道の一部がふくらみ,肺になったのだという.

誤りではないが,これでは魚の「浮き袋」との関係が説明されていない.番組スタッフは魚に浮き袋があることを失念していたのではと疑っている.

肺と浮き袋の関係は以下のように言われている


肺は食道の一部から生じたと考えられています。また、淡水での生活に適応するため水分と塩分の体内濃度を調節するために腎機能が進化しました。これらの魚類は条鰭類と総鰭類にわかれデボン紀中期(4億年前)に魚のままの姿を選択したグループと淡水で進化を続けたグループとにわかれました。このうち魚の姿を選択したグループがふたたび海にくだりそこで肺を浮き袋に作り替えて大繁栄したのが鰭に筋のある条鰭類(Actinopterygii: ray-finned fishes) のなかでも硬骨魚類(Teleostei;teleost fishes)とよばれるタイやマグロといった普通のお魚です、さらにこれらの一部は再度淡水に進出し今のほとんどの淡水魚、すなわち、コイやメダカ、マスといったものになりました。

つまり,「肺」を得た魚は肺魚や両棲類などの祖先だけにとどまらず,硬骨魚類のすべてがその魚の子孫ということになる.

私も昔は,魚の浮き袋が変化して肺になったのだと思っていたのだが,実は肺が先で,浮き袋の方こそ肺から変化した器官なのだという.

また,以前「両棲類は魚類から進化した」と聞いて,シーラカンスような海の魚(総鰭類の硬骨魚類)が淡水に進出し,それから手足を得て両棲類になったかのような気がしていたのだが,実は硬骨魚類そのものが淡水の起源であり,両棲類の祖先はその後一度も海に戻っていないらしい.

このような説と,両棲類と肺魚との共通点の多さ,または魚と両棲類の中間の色々な容態をもつ生き物がいたことを考えると,昨日の番組はまだまだこのテーマの面白さを捉えきっていないと思う.例えば指の発達がどのように進んだたかという話題も番組では触れられなかった.アカントステガの指が5本より多いことも言及してほしかったのだけど.

なお,これらに関してはよい啓蒙書が2冊ほど出ている.

番組の細かいところでは,アカントステガが手足を使って水中を歩くように移動したという説明のところ.イザリウオを例題に出すのもいいが,「脚が横に生えている」「陸上で体を支えられない」からすると,原生の両棲類,オオサンショウウオの移動方法そのものではないかと思う.彼らのような「生きた化石」も紹介すればよかったのではないだろうか.