政経分離

日中関係ではよく「経熱政冷」と言われる.朝日新聞あたりはそれが問題だと主張しているが,私は同意しない.

ちょうど松村劭氏の最新コラムもこの話題.

http://www.dupuy.jp/seikeibunri.html

外交問題は経済で解決できることもあるだろうけど,全てが解決できるわけではない.金で何でも解決できるならそもそも政治などいらない.むしろ,政治の究極的な存在意義とは,金で解決できない問題を解決することだろう.ふとそんなことを思いついた.安全や尊厳は金では買えない.金がないとまたそれはそれで守れないだろうけれど.

オチを色々探して細川幽斎を知る.あの有名な下の句は400年の歴史があるのであった.

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%B0%E5%B7%9D%E5%B9%BD%E6%96%8E

ここで別宮暖郎:『軍事のイロハ』(isbn:4890631798)のP.70.第一次世界大戦から現在までの5大虐殺を挙げつつ;

 これらの事件はすべて社会主義者により引き起こされ、合計八〇〇〇万人以上が殺害されました。これには政治哲学的な理由があります。マルクスの主張の根幹は唯物論にあります。唯物論が政治論とすれば、人間は「美しいもの」「正しいこと」に感動して、政治行動、すなわち投票したり、バリケードに立てこもったり、徴兵や納税を拒否したりするのではなく、「モノ」によって動かされるという考え方です。
 モノに動かされるとは、明日の給料や食事のみを念頭において人間は政治的行動をとるということです。そして、共産主義者は人間の行動をすべて経済的利害、すなわち人間が物欲によって支配されていると説明します。これは誤りです。人間は美しいもの、偉大なもの、正しいことに感動します。
 貧富の差や窮乏などはテロや革命の原因ではなく、口実です。歴史上、テロリストや暴力革命家は金持ち、または金に余裕がある人物が多いのです。

そもそも計画経済を是とする共産主義のシンパが政経分離を理解できるとは考えがたく,しかも「明日の給料や食事のみを念頭において人間は政治的行動をとる」という唯物論的政治哲学が思想の根幹にあれば,朝日新聞などが外交問題は経済で解決できるという認識に立ち,「経熱政冷」を嘆くのは至極当然のこと.

朝日新聞唯物論にどれだけハマっているかは2004年12月5日の社説でも分かる.


 人やお金だけではない。次期防には射程数百キロの地対地ミサイルの研究が盛り込まれる。敵基地攻撃力を高めることにつなごうということなら、専守防衛の原則を揺るがすばかりか、日本周辺の緊張を高める恐れがある。

兵器というモノが軍事的な緊張を高めるという認識.軍事的な脅威は軍事力という物理的な存在のみに依存するといういつもの朝日の論調.しかし「脅威とは、“敵意”である」のではないか? 唯物論的世界観では,脅威の本質が敵意という人の心であることを認めたがらない.

むしろ中国共産党の方がよほど政経分離を理解していることだろう.何しろ共産主義を保ったまま市場経済導入という離れ技.そして,先の潜水艦の領海侵犯が象徴するように日中間の軍事的な緊張も中国側の行動に起因する部分が大きい.「経熱政冷」という現状を向こうが気にしているとは思えない.単に日中間の交渉を有利に進めるためのキーワードという認識だろう.むしろ中国共産党は日中間の緊張を必要としているのではないかと邪推したいぐらい.そして一番困るのは「経冷政熱」に違いない.

共産主義者が日本に残した負の遺産のうち「唯物論」というのは相当ヤバいものではないかという認識をこのところ持つに至っている.その辺はおいおい文章にまとめてゆきたい.