スクリーンの中の戦争

スクリーンの中の戦争 (文春新書)

スクリーンの中の戦争 (文春新書)

戦争映画の解説本、というよりも、映画と時代の関係を考察する本。時代のなかに戦争がある。

戦闘や武器の話がメインの大久保義信:『徹底分析戦争映画100!バトル&ウエポン』(ISBN:476981156X)や宮嶋茂樹:『私の異常な愛情』(ISBN:4835609581)とは方向が全く違う。

この中では『太陽の帝国』と『東京物語』の解説が印象に残った。特に著者の小津安二郎評は大変納得がいく。

太陽の帝国』は場面を詳細に追って丁寧に解説している。

私はここしばらく、この映画を「反日映画」と思って、十数年前に劇場で見て感激したのをいささか後ろめたく思っていたのだが、これを読んで今の自分こそ恥じ入るべきだと思った。

この映画は、確かに悪い日本軍もいるが、映画にでてくるぐらいの悪事は実際にしていることなので、これは真摯に受け入れなければならない(映画ではもちろん描かれていないが、噂では租界でイギリスの女学校を襲撃した不逞な兵隊もいたらしい)。もっとも、洋館接収して寝るにしても寝巻きにハチマキはなかろうし、爆撃の報復に収容所の窓を割って歩くというのも本当かどうか気になるところだが。

この映画で心に残るのは、ジムの飛行機への憧れに敵味方の別がないところ。スピルバーグは力への素朴な憧れと、正々堂々と戦う者に対する畏怖をなんら否定することがない。

本書もこれについて指摘し、この映画を「反戦映画」などというくくりでお終いにはしない。

LDは持っているのだが長らく見なかったこの映画。これを読んでまた見たくなった。

なお、飛行機はリベットでできているので、修理に溶接は行わない。DVDのジャケットにあるような火花は映像上の効果を狙ったウソ。

太陽の帝国 特別版 [DVD]

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