緊張の中の平和

歴史を概観すると、平和が乱れ、戦争が起きるのは、現状打破派の国の野心と、軍事力のアンバランスが組み合わされた時であることが多い。

例えばアルゼンチンとイギリス(フォークランド諸島)、ソ連アフガニスタンイラククウェートなど。

逆に、東西冷戦が平和のうちに終了したのは、現状維持派の西側が防衛に本気だったためで、欧州にも極東にも軍事的な空白が生じなかった。

そして、経済破綻したソ連が現状打破派を諦め、これにより緊張緩和がもたらされ、ついに軍縮が実現した。

こんな簡単な考察からも、日本の武装解除がいかに平和を乱すかが分かる。日本は身を守るために軍事力が必要であり、現行憲法の芦田修正も自衛隊合憲という政府見解も、そして、自衛隊を軍隊に位置づけようという憲法改正の気運も、この事実を追認するためにこそある。

昨今の護憲派は、日本は改憲により侵略者となる、と主張する。自衛のための軍事力は侵略のために用いられるようになる。いや、侵略を行う意図があるため、自衛を口実に軍事力を手にしようとしているのだという。日本自身が侵略者となる、とは言わなくても、アメリカの侵略戦争に荷担するようになる、という。

侵略戦争は現状打破派の野心と被害国の軍事的空白がなければ成立しない。護憲派は、日本にどんな野心があるのかを説明しない。日本が侵略者となるのを阻止したければ、その野心を明らかにし、そこを批判すればよいはずだ。つまり護憲改憲とは別の次元の議論である。

要するに以下のような議論なわけで、結局のところ、護憲派は目の前のことしか考えていない。

護憲派の方にはぜひ、日本が未来永劫存続でき、かつアメリカの侵略に荷担しないですむ方法を示してもらいたいものだ。

改憲派として私は、改憲して軍事力を整備したところで、政策決定にあたってアメリカ追従とするかどうかはその時の日本人が決めることで、日本に得なら追従するしそうでないなら追従しないだけのこと。アメリカ追従がいやなら政策決定の時にそのように政治活動すればよい。従って改憲派にとって上記二項(軍事力保持と対米追従の否定)は難なく両立する。逆に、「無条件に追従する」と決めつけて軍事力の整備を怠る、という選択肢はナンセンスもはなはだしい。

さて、東アジアを見れば、中国と北朝鮮が現状打破派、日本は現状維持派となる。

日本が現在の国土を守るため必要な軍備を整えることは、何ら平和を乱すものではない。特に尖閣諸島は今現在日本の領土であり、これを保全することについて誰からも文句を言われる筋合いはない。

日本の平和を守ることとは、現状打破派の野心を押さえるに足るだけの軍事力を整備し、緊張の中の平和をつづけること。

中国が軍拡するのであれば、日本もバランスを保って防衛力を整備するしかない。日本が一方的に軍縮しても、むこうがつきあってくれるとは限らない。むしろ戦争したいという野心が増長するかもしれず、これはかなり危険な選択肢だ。中国が政策を変えて、軍縮を始めるまで、日本はお付き合いするしかなかろう。そういった軍事的緊張が続くことは、まだまだ平和の範疇に入る。互いに短気は禁物だ。

短気といえば、中国の反日の気運についても一言。

あれは地政学的な必然なので、少々謝罪したり「侵略」を反省したりするぐらいで収まるものではないだろう。

日中国交回復時は冷戦のまっただなかで、中国とソ連の関係もまた険悪な状態だった。なので、ソ連と対峙して利害が一致したことから「日中友好」が続いた。

現状は冷戦が終わり、むしろ経済発展著しい中国は資源確保のために海上に覇権を広げる必要が生じている。このため、日本と利害が一致しないどころか、尖閣問題では露骨に利害が衝突している。

市井の人間はどうするか。

  • 軍拡競争の中で互いの出方を研究し、これを楽しむ
  • 国家間のいざこざは互いの政府にまかせ、個人どうしは仲良くする

こういったところが妥当なところだと思う。