- 作者: 保阪正康他,ラクレ編集部
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2005/05/11
- メディア: 新書
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今年1月のNHKvs朝日新聞騒動を論じる本。保阪正康氏、稲垣武氏など複数の著者による記事を集めたもの。
中公新書というと一連の社説対決シリーズがあることから分かるように、概ね朝日に批判的なものが多いが、辺真一氏、斎藤貴男氏の二名は朝日新聞擁護の立場で書いている。「女性国際戦犯法廷」よりよほど「弁護側」の発言機会が多いようだ。
辺真一氏は<従軍慰安婦の強制連行は北朝鮮の日本人拉致と同じ*1>、<「証拠がない」という主張は北朝鮮の逃げ口上と同じ*2>、<個人賠償も含めて過去を清算せよ*3>といった内容。こんなDQNだとは知らなかった。斎藤貴男氏の記事は特に驚くところはないがこちらはびっくり。
この本の中では潮匡人氏のここが気に入った(P.125)。強調筆者。
以上のように、朝日新聞は、決して「知的」な新聞ではない。「知」の条件である「反証可能性」もなければ「創造的な忍耐」もない。それどころか、論点をすり替え、開き直る。その体質はNHKとの「論争」でも露呈した。
このところ朝日新聞の記事に馬鹿げたものが多いなと思っていたが、その辺をずばり指摘しているので感心した。
朝日新聞というと戦前は軍国主義万歳、戦後はマルクス主義万歳の変節漢と言われることが少なくないが、青山昌史氏の「現代史のなかの朝日論調」によると(P.75);
朝日がいわゆる「リベラル路線」から左翼にカーブを切り始める最初の契機となったのは、昭和八年暮れに初会合が持たれた、後藤隆之助、風見章らがお膳立てをした、近江文麿の「昭和研究会」だったと考えられる。<略>
したがって、現在の「右傾化」の風潮の中、世論に迎合して今度は右に舵をきるのでは、という予測は当たらないかもしれない。このままマルクス主義とともに没落してゆくのではないか、という予測もあり得る。
稲垣武氏も同書の「朝日・NHK問題──各紙はどう報じたのか」で以下のように書いている(P.49)。
<略>共産党もそうだが、おのれの無謬を信じるものに反省はないし、自己改革も不可能である。その結果、朝日は「常識」を取り戻すことなく、ますます過激な反日・左翼路線を突っ走るしかなく、ついには読者からも見放され、奈落の底に落ちるのは必然だろう。
果たして「組織としては最悪のサイクル」(稲垣氏、同書P.58)から脱出できるのか否か。これまでのNHK問題での対応を見ると脱出できる見込みはかなり低いと考えざるを得ない。