「三菱☆マテリアル」というネタをいつか使おうと思っていたらこんなニュース。おかげで既に散々使われてしまった。
『ネギま!』関係のマキシシングルを買うのが流行っているようだが、こういう本を読んでしまうと冷めた目で見てしまう。あまり業界の発展に寄与するように思えないから。
しかし、「仕掛けた本人の予想をこえるようなもの、それがブームのようだ」(P.8)ということを考えると、こちらはまだ「ブーム」と呼べる状態ではないか。ならば火傷をする人も少なかろう。
- 作者: 中川右介
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/01/07
- メディア: 単行本
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少し前まで続いていたクラシックカメラブームを題材に、ブームという現象を考察した本。この頃は中古カメラ屋に行くと若い女性が熱心に店員と話しているのが普通に見られた。
著者の中川右介氏は出版社アルファベータの編集者。田中長徳氏を主筆として雑誌『カメラジャーナル』を出版、おりしもクラシックカメラブームが沸き起こる。ブームでさぞや雑誌も売れ、商売も潤っただろうかというとさにあらず。結局赤字となったという。
目次を眺めつつ内容を思い出して大雑把にまとめると、ブームは「発見され」、「変質」し、やがて「終焉」を迎える。
「「終わる」ことがブームとして語られる条件」(P.12)というシニカルな言葉もある。ブームはカラオケのように「定番もの」として定着することもあるが、たまごっちを例に「商品寿命を短くする」(P.9)とも言われる。
ブームというのはマスコミに取り上げられる頃には盛りを過ぎているという。また、報道がブームを変質させるともいう。報道を受けてから参入する企業は火傷をすることが多いようである。
この本で興味深いのは、中川右介氏が自分自身を「「オタク第一世代」に属する」(P.67)と評していること。そして(P.67);
クラシックカメラブームに遭遇した私は、これが一種のサブカルチャーであることに気づいた。メインカルチャーは、当然ながら、各カメラメーカーの繰り出す新製品である。
一般にいうサブカルチャー――つまりは、コミック、アニメ、特撮もの、プラモデル、フィギュア、SF、ミステリといったものであれば、私にとって最もなじみの深いジャンルだった。
なんとこんな視点からクラシックカメラブームを論じている。「大きな世界の物語があり、その上でとてつもなく微細な細部にこだわりを持つ」(P.68)のように、巷間言われるオタク論を踏襲しながら。
本書が面白いのは、このように、著者がクラシックカメラを趣味とはせず、一歩距離を置いて眺めていたこと、また、オタクとしての視点を持っていたことによると思う。
ブームで火傷をしないため、また、現在ある微妙な現象から次のブームの予兆を見つけて楽しむために、一読をお薦めしたい。