もうこの手の大作アニメとハリウッドの映画というのは、CG部分は同じで、あとの部分を絵と声優が演技するか、役者が演技するかの違いだけではないのかと思っていたが、やはりそれだけではない。
言いたかないけど、イデオロギーくさくてたまらない。それ言うとハリウッド映画もそうだけど。
この映画で言えば武器が戦争を起こすという唯物論的歴史観。しかも戦争を起こすのはアメリカの資本家。
一方イギリスの科学者は「国家があるから人は幸せになれるんだ」とレイを諭す。納得しないレイ。国家の否定というこれまた左向き。「人が幸せのために国家を成してそれを利用する」という逆のベクトルとの相互作用が国家だとかいう常識的判断はどこへやら。
日本流のヘンな常識もこの映画を妙なものにしている。
万博に武器を展示するのは別に禁忌じゃない。万博に武器が出せないから隣にスチーム城を、そこで武器を展示して各国の武官を、という流れな訳だが、この基本設定からして違和感がかなりあった。
いったいスタッフは9年も準備期間をかけながら、ファーンボロ航空ショーみたいなイギリスの行事で何が行われているのか気がつかなかったのだろうか。かつて内藤一郎氏は、これを取材した日本の新聞記者が「まるで軍国主義博覧会だ」(大意)と驚いていたのを揶揄していた。
そんなわけで、映画は面白かったけれど、根本的なところでボタンの掛け違いがあってあまり好きな映画ではない。
なお、本作のテーマにかかわると思うが、科学の進歩と戦争の関係をちょっと概観してみよう。
- 科学が進歩する前から戦争はあった
- 産業革命が戦争犠牲者の数を数百万・数千万の規模に増やしたことは事実
- 21世紀になってみるとところが戦争犠牲者の数は第一次・第二次大戦程多くない
- 科学の進歩は武器の進歩を促したが人類はそれほど不幸になったのだろうか
報道であれ映画であれ、紋切り型の言い回しについてはいつも疑う姿勢を忘れないでいたい。
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