- 作者: 筒井末春
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/04
- メディア: 新書
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うつ病に関するとても分かりやすい啓蒙書。
タイトルには、近年の自殺者の増加に対する著者の思いが込められている。うつ病について知識がもっと普及し、適切な治療の機会を得られれば、自殺の悲劇は少しでも、いやかなり減らせるのではないか。そのような観点から本書は書かれている。
私も同じ問題意識を持っていたので、やはりそうか、という思いで本書を手に取った。
序章から少し引用すると(P.27);
うつ病は、今や決して珍しい病気ではなく、誰がかかってもおかしくない人間的な病であるということ、そして、時には自殺という形で死の危険をともなう病気であるということ、しかし、薬と十分な休養できちんと治せる病気であるということ、こうしたことを正しく理解し、的確に対処することを、専門医として強く望んでやまない。
最近のニュースでも、伊勢市の市長の自殺が伝えられたが、その背景に関して以下のような記事がある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060227-00000097-kyodo-soci
市によると、加藤市長は2月中旬から「気合が入らない」などと周囲に漏らし、かなり疲れた様子だったという。
http://www.nishinippon.co.jp/media/news/news-today/20060228/morning_news009.html
加藤市長の主治医によると、市長は二月初めごろから「ストレスで眠れない」などと心労を訴えていたという。
市長がうつ病を患っていた可能性はかなり高いのではないかと思う。
この本ではうつ病についてかなり簡潔で的確な説明があるので、それを紹介したい。例えばP.30。
うつ病は、ひと言でいうと、「生きる意欲」が失われてしまう病気である。
もう少し突っ込んだ記述ではこのようなものがある。P.36。
うつ病は、心の病気だとよくいわれるが、実際は、一時的な脳の機能障害なのである。脳の中で、科学的に説明できる一時的な障害が起こり、それがうつという心の状態を作りだしているのだ。だからうつ病は、適切な治療によって治すことができるのである。つまり脳の一時的な障害を取り除いて、元気物質が元のように働けば、以前のような「生きよう」という状態に戻すことができるのである。
こういった簡潔な表現に専門家ならではのものを感じる。