- 作者: 木全賢
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2006/12/16
- メディア: 新書
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工業デザインの分かりやすい入門書。2時間もあれば全部読める。
第1章は「身近にひそむ美しい比率」ということで黄金比や白銀比が紹介されている。IXYやiPODのデザインも黄金比だとか。
ただ、「ハイビジョンテレビの画面」は9:16=1:1.777...なので黄金比(約1.618)とは少し外れているようだ。以下に比率が決まった経緯が出ているが、どこまで黄金比を意識して決めたのかはよく分からない。
142ページから「「萌え」はキャラクターデザインの極北か」という項目がある。
「萌え」といえばかわいらしい女の子のイラストですが、あの風変わりなイラストをかわいいと感じてしまう背景には、「ベビーフェイス効果」があると考えられています。<略>
そして、この「かわいらしさ」だけを追求していくのが「萌え」のデザインです。キャラクターデザインの極北を目指しているということもできるでしょう。最近では「擬人化たん」というジャンルもあり、新幹線から人工衛星、さらには備長炭までもが、かわいらしいキャラクターになっています。もしかすると、ヲタク達は、擬人化の元になった製品にかわいらしさが足りないと訴えているのかもしれません。
著者の方はそこそこ「萌え」という現象をよく観察している様子。ただ、「元になった製品にかわいらしさが足りないと訴えている」というより、「元になった製品がかくし持っているかわいらしさを発掘している」の方が的確なのではないかと私は思う。
たしかに、「かわいらしさ」は、工業製品のデザインにも必要な要素です。特に、ミニクーパーやフォルクスワーゲン・ビートルなど。ロングセラーと呼ばれる商品にはかわいらしさを感じる部分があるものです。このかわいらしさを追求する感性をもったヲタク達は、工業デザイナーにとっても気になる存在です。
ということで、オタク文化が工業デザイナーから注目されているというのを本書で知ることができた。
あるいはオタクの工業デザイナーも確実にいるであろうから、そういう方にはぜひ萌えとデザインの関係を語ってほしいと思う。