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図説 前輪駆動車

図説 前輪駆動車―FF車の歴史と変遷を245点の図版から辿る

図説 前輪駆動車―FF車の歴史と変遷を245点の図版から辿る

今やFFは乗用車の標準的な形式であり、FRの車の方が少数となっている。そのFF車の歴史とメカニズムを解説する本。

著者の影山夙氏は元は富士重工の技術者で、自身もFF車スバル1000の開発にかかわっている。

今のFF車の標準的なレイアウトが決まるのは1969年のフィアット128あたりのことで、FRと比べるとずっと最近のこと。しかし、FFには自動車の歴史そのものと同じぐらい古い歴史があることが分かる。

スポーツカーや高級車というと後輪駆動が多いし、軽自動車でもミッドシップで後輪駆動のiが話題になったりするので、自分のティーダがFFであることにいくらか引け目を感じることがあるが、この本を読むと、FFも自動車として合理的なものと分かり、ほっとする。

直進安定性や操安性からは、自動車は前が重い方が望ましく(『図説四輪駆動車』によると、重心が前だと安定性が増し、後だと操縦性がよくなる)、エンジンは前の方に積む方がよい。前にエンジンがあるなら前のタイヤで駆動した方が駆動系の重量が減って軽く仕上がる。前輪のトラクションを稼ぐためにエンジンをフロントオーバーハングに押し出せば、前車軸より後ろは自由に使えるようになり、スペース効率が良くなって広々とした車室やトランクを確保できる。前輪駆動はアンダーステア傾向でカーブや雪道なども安全である。

合理的であることを考えれば、VWがビートルのRRに対しゴルフでFFを採用したのももっともな話。軽自動車もFFが主流で、iでは重量が重かったりタイヤが前後で異サイズだったりといくらか無理が出てきている。

前が重い方が操安性には有利、というのは、スポーツカーにも当てはまることで、日産がMID4ではなくフロントエンジンのGT-Rの方を製品化したのもそのあたりを考慮してのことではないかと思う。

逆に、リアエンジンでGT-Rと同じような速さを実現してるポルシェはそれはそれで化け物というかドイツならではの変態というか。

ただ、FFは後席の乗り心地にはいささか分が悪いようで、タクシーではまだFRが主流。FFでは後輪が支える重量が少ない上に、後ろのロール剛性を上げる必要があるためバネが比較的硬く、これらのことから、FRの方が後席の乗客には乗り心地がいいのではないかと思われる。高級車では、後席の乗り心地が比較的いいということに加えて、大排気量のエンジンはフロントに縦に置くしかないし、大馬力を活かせる駆動輪も自ずと後輪ということになり、FRが主流なのだと思う。