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モノアミン仮説

『こころの科学』2009年1月号は「精神科のくすり」が特集。

http://www.nippyo.co.jp/magazine/maga_kokoro.html
http://www.nippyo.co.jp/magazine/4154.html

この中で中村純氏の「抗うつ薬のはたらき方」という記事に、うつ病の病理に関する最近の知見が短く語られているので紹介したい。

薬を服用することに抵抗感があり薬物療法以外を希望する人が多いこという話に続いて、以下のように書かれている。

 もちろん、うつ病の誘因となった出来事に対する理解が深まり、その課題が解決する、あるいは医師が受容的な態度で話を聞くだけでうつ病が改善することもある。しかし、うつ病は、最近では、ストレス負荷により脳由来栄養因子(Brain derived neurotrophic factor : BDNF)が低下し、海馬、前頭前野などの萎縮が起こり、脳内のセロトニンノルアドレナリンドーパミンなどのさまざまな神経伝達物質が低下することが想定されており(モノアミン仮説)、抗うつ薬を投与することによって、これらの脳内神経伝達物質が増加し、神経の再生が起こり、うつ病が回復することが報告されてきている
 ただし、実際には薬を服用するだけでは治らない症例も多く、精神療法と抗うつ薬の服用を併用することが一般的な治療法となっている。

セロトニンノルアドレナリンが不足する、というのはよく聞く説明だが、「海馬、前頭前野などの萎縮」というのははじめて聞いた。また、「脳由来栄養因子」という言葉も初耳。wikipediaに「脳由来神経栄養因子」の項目があるがこれを読んでもよく分からない。とにかく、うつ病とはストレスにより脳が損傷を受けて発症する、と受け取ればよいか。

抗うつ薬が効く理屈も、セロトニンノルアドレナリンの再取り込みを阻害してそれらの量を増やすというだけでなく、「神経の再生が起こ」るのだという。ならば、薬を服用しても効果が現れるのに半月以上かかるというのも納得がいく。

うつ病研究の最新の知見をもっと詳しく、分かりやすく説明したものがあればぜひ読みたいと思った。