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カメのきた道

カメのきた道 甲羅に秘められた2億年の生命進化 (NHKブックス)

カメのきた道 甲羅に秘められた2億年の生命進化 (NHKブックス)

カメの進化を扱った本。

最近の研究によると、カメは無弓類の生き残りではなく、ワニ、恐竜、鳥などを含む主竜類に近い、双弓類であるとされている。著者はここで、カメがワニや鳥と同じく石灰質の硬い殻をもつ卵を生むことに気づく。硬い殻の卵というのも、彼らの共通の特徴であるという。

著者はここで、カメや主竜類に共通の形質としてさらに、脚を体の下にまっすぐ出す、直立歩行も挙げている。体の横に脚を出す、文字どおり爬行する爬虫類、要するにトカゲの仲間では、体を左右に大きくくねらせて脚のストライド(歩幅)をかせいでいる。直立歩行であれば体をくねらせる必要はなく、ここから、胴体を硬い甲羅で覆うカメの進化の可能性が芽生えたという。体を大きくくねらせる必要がないからこそ、硬い殻の卵を獲得できたのだとも指摘している。

ちなみに、アンキロサウルスのようなヨロイ竜、アルマジロやセンザンコウ、絶滅種グリプトドンのような、カメに似てヨロイを発達させた生き物は等しく直立歩行する動物である(恐竜と哺乳類)。

著者によると、カメが現在、脚を体の横に出しているのは甲羅があるからで、原始的な形質ではなく二次的に獲得したものだという。ワニもまた、水辺の環境に適応するため、二次的に脚を体の横に出すようになった。

このような話は、恐竜の定義を「直立歩行する爬虫類」と聞いていた自分にとって、なかなか衝撃的だった。直立歩行が恐竜が誕生するさらに前に、カメやワニとも共通の祖先が獲得していた形質だったとは。

すると、「恐竜」とひとくくりにされている生き物も、竜盤類と鳥盤類とでは別の2系統の進化を辿ってきたのかもしれない。

現在のトカゲ、ヘビ、ムカシトカゲ、ワニ、カメの5つの爬虫類のうち、文字どおり爬行する、原始的な形質を残すのは前者3つのみで、ワニ、カメはかつて直立歩行していたというのは、目が覚める思いがする新事実だ。爬虫類=下等動物などという先入観は見直したほうがいい。ワニやカメは直立歩行し、恐竜や鳥に至る可能性を秘めた生き物のグループがら進化した。そしてあえてあのようなライフスタイルを選んだ。そこには彼らなりの進んだ進化の道があったのであり、人間や哺乳類に対して劣っているかのような目で見てはいけないのだと思う。