今朝、僕はクルマの夢を見た。

今朝、僕はクルマの夢を見た。

今朝、僕はクルマの夢を見た。

1991年に出たクルマに関するエッセイ集。カウンタックに乗ったかた思うと次ではカローラに乗っていたり、衝突実験に使うダミーや芳香剤の会社やNSXのセールスマンや「ハイドロ」の改造アメ車を輸入する人などクルマに関する幅広い取材記事があってなかなか面白い。

中でも、1989年、現役F1ドライバーだった頃の中嶋悟が運転するレジェンドに同乗した話が興味深かった。

中嶋氏のレジェンドはAT。プロのレーサーであってもMTへのこだわりというのは特にないとのこと。レースデビューする前、峠を走り込んでいたときもAT車に乗っていたという(P.13-14)。

――なんでATにしたんですか。
「便利だから」
――でも、楽しくないでしょ?
「そんなことないよ。(シフトポジションを指さして)これだって、3つあるじゃない」
――ヒール&トゥや、ダブル・クラッチを使ったりする楽しみはないでしょ。
「そんなことしなくても、ちゃんと(シフトを)やってくれるんだから、こんなにいいものはない」
――若いころもそう思ってましたか。
「思ってたよ。オレ、いままで何十台クルマに乗ったかわかんないけど、マニュアルは最初の2台だけ」
――じゃあ、AT車で茶臼岳へ行ってた?
「もちろん。だから、壊れちゃったよ、ATが」
――AT車で峠を攻めて面白いんですか。
「面白いね。ATで最大限の努力をすればいいんだから。たとえばさ、たしかにATだと、コーナーの手前でどうしてもキックダウンしないことがあるでしょ。そういうときは、いったんニュートラルにして、ギューンと吹かしてから、1レンジなり2レンジに入れるんだよ。マニュアル車で回転を合わせるのと一緒。クラッチペダルがないだけで、やってることは同じ。どうやったらクラッチのない分を自分で補えるか。そういうことを考えるのが楽しいのよ」

MTじゃなければクルマを運転する楽しさなんてない!!!1! などというコダワリのある人も少なくないと思うが、中嶋氏はATで思う存分運転を楽しんでいるとのこと。そしてこう続ける(P.14)。

――中嶋さんの考える、運転の楽しさってなんですか。
「早い話が、自分の意思をどれだけクルマに通じさせられるかっていうことだね。だからオレ、クルマそのものには大してこだわらないんだよ。クルマなんて、なんだっていいんだよ」

「クルマなんて、なんだっていいんだよ」とは含蓄のある言葉。

ちなみに、マニアから熱烈に愛されるポルシェに対してはこんな意見(P.15)。

――ポルシェ911は?
「あれはイヤだ。乗りにくい」
――どういうふうに?
「自分の意思に反した動きをだいぶする」
――でも、911はドライバーズカーの頂点ということになってますよね。
「それは乗りにくいからだよ(笑)」
――でも、それを乗りこなすのが、クルマの楽しさの一つでしょ。
「乗りこなしてなんになる?」
――F1でいつもそれをやってるんでしょ。
「あれは競走だもの。普通の道で乗りにくいもの乗りこなして、なんになるのよ。乗りやすくて、楽してたほうがいい(笑)」
――じゃあ、中嶋さんが911の開発ドライバーだったらどうします?
「まず、エンジンの位置、変えてもらう(笑)」

それを言っては、という話をもろにしている(笑)。

雑誌なんか見ていると、ドイツ車にあらねば、またはスポーツカーにあらねば、そしてMTにあらねばクルマにあらず、みたいな風潮が感じられるが、F1ドライバーにしてそのようなこだわりはないというので、自分に合ったクルマを自分なりに愛せばいいのだなあとちょっとほっとする。