カレーライスの謎―なぜ日本中の食卓が虜になったのか (角川SSC新書)
- 作者: 水野仁輔
- 出版社/メーカー: 角川SSコミュニケーションズ
- 発売日: 2008/05
- メディア: 新書
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カレーが「国民食」として日本に定着する歴史、カレールウやレトルトカレーの商品開発、カレーのおいしさの秘密に関する考察などが書かれている。
知合いの中国人が、日本のラーメンが好きだと言っていた。
ラーメンは、もはや中華料理というより日本料理となっているが、カレーも日本料理と言えるレベルにまで進化し、普及している。ラーメンが外食の「国民食」なら、家庭料理の「国民食」がカレーライスである。
その日本のカレー、インド人に食べさせてもおいしいと答えが返ってくるという。フランス料理の巨匠が一番好きな日本料理として挙げたのもカレーだったとのこと。
カレーが家庭料理として爆発的に普及したのは、カレールウが発売されたことが大きい(P.62)。
カレーが本格的に全国の家庭に普及し始めるのは、1950年代に入ってからのことである。キーワードは「即席」。家庭で手軽に、あの憧れの洋食・カレーが作れることを端的に示したこの言葉をめぐり、各社が様々な商品を世に送り出していった。
現在でもカレー業界に「即席カレー」という言葉は残されており、それは、圧倒的な市場シェアを取る固形のカレールウのことをさす。
最初の即席カレーは1945年、名古屋のオリエンタルが出した「オリエンタル即席カレー」で、「小麦粉とスパイスを合わせて粉末状のカレー粉にしておくという商品」だという。次に1954年にエスビー食品が「ヱスビー固形即席カレー」を出す。1960年に江崎グリコが「ワンタッチカレー」として、すぐ溶ける「小さなポーションで作った」ルウを発売。ここに、今日のカレールウが完成したようだ。
66〜67ページ。
カレーの主流は完全に固形ルウにシフトすることになる。このカレールウこそが、日本人最大の発明なのであって、その製造工程はカレーの正体に関する秘密箱のようなものだと言える。
日本料理としてのカレーはついに宇宙進出を果たす。1992年に日本人として初めてスペースシャトルに搭乗した毛利衛宇宙飛行士が、宇宙食としてカレーを持って行ったという。今やISSで供給する宇宙食の候補になっている。
1982年1月22日、「カレー給食の日」として全国一斉に学校給食にカレーが出たというのが110ページから出ているが、ちょっとぐぐると、実施率は2割程度だったらしい。
http://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2005/06/__76e1.html
本で紹介されているこの日の朝日新聞夕刊記事はいったい何だったのだろう。「一斉カレー給食が全国の小中学校で行われた」と過去形になっているが、夕刊の配達時刻からして本当にこの日の給食の後に書かれた記事だったのだろうか。
このブログでも「一斉カレー給食」の話が出ている。
http://blog.livedoor.jp/doni001/archives/51297928.html
こちらも「全国全ての小学校で実施されたわけではありませんでした」「実際のところ、どのくらいの数の学校が追従したのかは定かではありません」とある。
朝日新聞、やっちまったのか? のか? のか?
また、これに関して111ページに、
今では当り前になっている給食カレーも、当時は物議を醸すちょっとした事件だったようだ。
とあるが、「事件」と言えるのは「全国一斉」だったからで、給食にカレーが出ること自体はもっと前からあった。1970年代の私が小学生だった頃既にカレーは出ていて、米飯給食の日もあったからまさにカレーライスが給食になったこともある。