- 作者: 足立紀尚,阿部玲子,木村宏,阿部信晴,嘉門雅史,土木学会関西支部
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/09
- メディア: 新書
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土木学会関西支部がブルーバックスで何冊か出している本の一つ。「地盤」について幅広く書かれている。章建ては以下のとおり。
- 地盤は語る
- 地盤と環境
- 地盤と災害
- 地盤を探る
- 地盤と暮らしの最前線
おおむね分かりやすくていいが、最初の方にちょっと変なところがある。
18〜19ページ。
太陽系の惑星の中で、水星、金星、火星は地球の兄弟星で、地球と同じように堅い岩盤からなっています。これらの星は、ほぼ地球と同じ経過をたどって誕生したと考えられていますが、地球と決定的に違ったことは、太陽に近かったり、大きさが小さかったことです。そのために、水が液体として存在せず(火星では、誕生してすぐの頃には水があったらしい)、誕生してまもなくマグマが冷えて活動が終わり、現在はまったく活動していない星になっています。水を持たなかったため、浸食作用や堆積作用は起こらず、その姿は誕生の頃とほとんど変化がありません。
これは舌足らず。この書き方では「誕生してまもなくマグマが冷えて活動が終わり、現在はまったく活動していない星」に金星が含まれてしまう。金星は火山活動が存在すると考えられている。例えば下記参照。
http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0320a/contents/taiyoukei/kinsei/kinsei_05.html
また、金星は濃い大気の強い風化作用と火山活動のため、地表面が誕生当時の姿を留めていない。
21ページ。
このように地球の表面は穏やかなように見えますが、内部はまだ冷えていないため、活動が続いています。ときどき起こる火山噴火や地震はその証拠であり、また、そのために「地殻変動」と呼ばれる大きな活動によって、ある場所が陸になったり海になったり、ということを何度となく繰り返してきました。<略>
「内部はまだ冷えていない」ではまるで、いずれは冷えてしまうかのような書き方。「地熱が地球ができたときの温度の余熱である」とも受け取れてしまう。
地球内部が高温なのは余熱ではなく、今も熱を発しているため。その大半は放射性元素の崩壊熱。wikipediaなどを参照されたい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%86%B1
放射性元素がいずれ尽きるという意味では、いずれは冷えるのだろうけれど、いつごろ冷え始める、という話は聞いたことはない。
あとこれはトリビア。
甲子園の高校野球といえば、これがためにNHK教育のアニメが時間がずれたり中止になったりしてしまう(先週の『獣の奏者エリン』も15分ずれた!)、じつにやっかいなイベントだが、それはNHKのTV中継の方針がおかしいので、アニメの時間には中継をNHK総合に移すなどして対策してほしいところだが、ともかくこのため私は高校野球が激しく嫌いなのだが、それとは別に、高校球児が記念に持って帰る「甲子園の土」。これが何であるかが出ている。
排水性と保水性のバランスをとるため、白土と黒土をブレンドしているという。白土、黒土とは以下のもの(P.323)。
「マサ土」とは、花崗岩が風化したもの。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%9F%E7%A0%82%E5%9C%9F
「シルト」とは、「砂より小さく粘土より粗い砕屑物のこと」。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%88
年に一回、グラウンドの表層の土を入れ換えるため、高校球児が持って帰るからといって、それで甲子園に大きい穴ができるとかそういう心配はしなくていいようだ。