科学で見なおす体にいい水・おいしい水

科学で見なおす体にいい水・おいしい水 (はなしシリーズ)

科学で見なおす体にいい水・おいしい水 (はなしシリーズ)

飲料水はフードファディズムの対象になりやすく、水と健康の本というとそういう傾向のものが少なくないが、本書はさにあらず。体によさそうというイメージだとかオカルトだとかを持ち出すことなく、冷静に飲料水について書いている。したがって、ある特定の水を飲めば病気が治るだとか、病気が予防できるだとかいう過激な主張はない。水道水も今は味に気をつけているので見直そうという章が設けられている。

水道水がどうも不味いとか安全性に不安があるとか、浄水器を買おうかどうか迷っているとか、アルカリイオン水整水器を勧められているとかいう時に読むといいと思う。

アルカリイオン水を例にどのように書いてあるか紹介すると、最初の方のP.12〜13では以下のように健康への効果を記している。

 整水器が売り出された当初は、アルカリ性の水を飲むと、体液もアルカリ性になり、健康維持に効果があると宣伝して売っていたメーカーも多い。人間の体液は弱アルカリ性に保たれているが、これは体内に備わったコントロール機能が働いているためで、飲み水によって左右されることはない。また胃酸過多症による胸焼け、消化不良などの症状が改善されるという点については、胃酸の酸性度が高い場合、少しぐらいの弱アルカリ水を飲んでも、あまり制酸効果は期待できない。症状がひどい場合は、やはり薬を飲まないと駄目で、アルカリイオン水で症状が改善されることは期待できない。アルカリイオン水はカルシウムの量が多く、効率よく体に吸収されるという点についても、量はそれほど多くはなく、水道水よりはやや多いが、外国産のミネラルウォーターより一桁少ない量しか含まれていない。また効率よく吸収されることと、血液中のカルシウムの量が増えることとは結びつかないようだ。

後ろのほうでさらに詳しく書いてあり、アルカリイオン水の神秘性を完全に否定している(P.116-117)。

 アルカリイオン水というと、ハイテク水のように思う人もいるかもしれないが、その原理は一八〇〇年代にイギリスで発見され、小学校の教科書にも出ているポピュラーなもので、魔法の水でも軌跡の水でもない。

 水を電気分解すると、含まれる物質はマイナスかプラスの性質を持っているため、プラスの性質を持つカルシウムイオン、マグネシウムイオンなどはマイナス極側に引き寄せられ、アルカリイオン水ができる。一方マイナスの塩化物イオンや炭酸水素イオンなどはプラス極側に引き寄せられるため酸性水ができる。

 「アルカリイオン整水器」はこの原理を応用したもので、水道水をまず活性炭、セラミックス、中空糸膜などをセットしたカートリッジでろ過し、それに電気分解を促進するためのカルシウム剤を添加してから、電解槽で電気分解する。槽の両端にはプラスとマイナスの電極があり、中央にはアルカリイオン水酸性水を仕切る隔膜がある。したがって、名称はアルカリイオン整水器だが、同時に酸性水もできてしまう。アルカリ水を得るだけが目的なら、酸性水は捨てることになるが、商品は目的により両方の水を使用するようになっている。

アルカリイオン水」と言えば神秘的に聞こえるが、水にカルシウムを添加して陰極に集まった水を抽出とは、すなわち出来上がるのは「水酸化カルシウムのごく薄い溶液」だ。pHは9〜10あたりだという。添加する「カルシウム剤」とは後ろの方(P.179)で「乳酸カルシウム製剤」と出ている。

水道水にはマグネシウムなど他のミネラルも溶けているから、アルカリイオン水が単純に水酸化カルシウムの溶液とは言えないまでも、それは水酸化カルシウム溶液と水酸化マグネシウム溶液とその他諸々の水酸化○○の溶液の混合液の薄いやつ、ということになるだけで、ともかく、こう考えると何ら神秘的なものは感じられない。

本書を読んでいて1ヵ所だけ首をかしげたところがある。「「ルルドの泉」も「日田の水」も活性水素水?」と見出しがつけられているところ(P.155)。

 活性水素水の効用については、活水器のところで説明した通りだが、電気分解によりつくられた電解還元水よりも、天然水の方が活性酸素消去能力が二〇%程度高いことから、活性水素の含有量が多いと見られている。健康維持のために毎日飲むという人も増えているが、病院や診療所などの医療現場においても、生活習慣病アトピー性皮膚炎などの治療に使ったところ、中性脂肪や血糖値の低下、かゆみや発疹の緩和が見られたという。

 「日田の水」がなぜ活性水素を多く含むようになったのかその理由は不明だが、千メートルを超える深い地層に秘められた大自然の贈り物と考え、その研究と利用方法のさらなる広がりに期待したい。

確かに前の方で活性水素活性酸素を消去できるようなことが書いてあったが、還元水を作る活水器のところでは活性水素水を作れるとは書いてないし、活水器はテストしても効果がはっきり確認できず、「メーカーが謳っている驚異的な効果はあまり期待しない方がいい」(P.136)と否定的に書かれている。なぜここで突然活性水素水が賞讃されているのか理解に苦しむ。ここだけ浮ついた書き方で他と比べておかしい。

wikipediaにも以下のようにあるので、

製造・販売元では、九州大学大学院の白畑實隆教授の分析に基づき、天然の活性水素を含む活性水素水であるとしているが、このような水の存在は科学的には認められていない。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%94%B0%E5%A4%A9%E9%A0%98%E6%B0%B4

信販売で宣伝されている還元水素生成装置は医療機器のカテゴリーには存在しない。それらの装置の中には、いわゆる疑似科学商品のひとつと考えられるものもある(外部リンク参照)。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%BB%E6%80%A7%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E6%B0%B4

この本で肯定していたからといって、活性水素水を信用するのは待った方がいいようだ。