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日本人だからうつになる

日本人だからうつになる (中公新書ラクレ)

日本人だからうつになる (中公新書ラクレ)

精神科医の書いたうつ病本は沢山あるが、こちらはうつ病を10年もわずらっている人の書いた本。

医者の立場からは「うつ病は治る」「半年から1年で」「とにかく治る」と書いたものが多いが、そう書く動機は分かるとしながらも、治療にかかるのが遅れた場合などは長く患うことになる、うつ病はまだ謎が多いので必ずしも治るとは限らないのではないか、ということが率直に書いてある。

うつ病は糖尿病や高血圧のように、すぐに治るものではなく、むしろつきあっていくべきものというスタンスで、「スローライフ」の実践などが勧められている。目標を設定して達成できたらさらに少し上の目標を設定し、と達成感を積み上げてできることを増やしてゆくような、いわば行動療法のようなことも勧められている。一方、だらだらと何年も休職するようなこともよくないとある。患者自身のためにもよくないし、制度的にも本当に休職や生活保護を必要とする人のためによくないとしている。

病気であってもできる範囲で努力はすべきということは、医者の立場からはなかなかいいずらいだろう。これは、実際に患っている人だからこそ書けることだと思う。

一方で、題名から連想されるように、日本のうつ病事情というのもこの本の主要なテーマになっている。うつ病対策が行き届かず、かかったら辞めざるをえないようなうつに厳しい職場が少なくないことが紹介されていたり、「頑張れ」が好きな日本人の国民性についても考察している。逆に、うつ病対策に本気で取り組む大企業も紹介されており、自衛隊うつ病対策も取材している。陸上自衛隊の取材では下園壮太ニ佐が登場する。

題名を見て日本がきらいな人の本かと思って心配してしまったが、そういう政治的な臭いは特にない。

以下は著者の主催する「うつコミュニティ」のサイト。

http://www.utsucom.net/