- 作者: 黒井文太郎,佐藤優
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2009/04/08
- メディア: 文庫
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黒井文太郎氏の本は面白いので書店で見かけたら内容を確認するようにしているが、この本は特によさそうなので買った。
章建てはこのようになっている。
戦後の共産国による謀略が具体的に書いてあるとしたらかなりすごい内容ではないか。
共産国の対日工作の全貌を明らかにする、という程のものではないが、刊行されている資料や関係者へのインタビューで明らかにできることはきっちり書いてある。それだけでも謀略の一部が明らかになっていて興味深い。
「KGBの謀略」の章では、社会党は思った通りソ連の工作の対象になっているとあるが、自民党の議員にも工作を受けた者がいるという。マスコミも工作の対象になっており、東京新聞、朝日新聞などは当然として、産経新聞にもソ連の協力者がいたという。
自民党の議員では石田博英元労働相の名前が挙げられている。産経新聞では「Y編集局次長」と書かれており、具体的な工作として周恩来遺書のスクープ報道がそれであるという。
「北朝鮮スパイの暗躍」に関しては、在日朝鮮人のインタビューなどがあるが、そこで明らかになる工作の実態は、以外にショボいと思った。極左暴力集団との連携だとか、有事の際に蜂起するテロ集団の潜伏だとかいうことは書かれていない。北朝鮮に翻弄される在日朝鮮人の人生みたいな話が多い。
とはいえ、拉致事件に在日朝鮮人が協力していたという話は出ている。日本人にして工作員になった人のインタビュー(P.231)。
──具体的な拉致の事例を何か聞いていませんか?
「実行した人は知っています。今も大阪にいますからね。東京にもいます。三〜四人知っていますが、それは申し上げられません」
──日本にいる他の工作員のことも知っていますか?
「今、三人程知っています」
──その三人のなかに、拉致を実行した人もいますか?
「いますよ。もちろん在日の方ですけど」
北朝鮮が覚醒剤を製造し、日本の暴力団がそれを売りさばいていたという話も書かれている。
「中国の諜報工作」では、まずハニートラップの話が出て、次にアメリカでの工作の話が出てくる。
そのひとつがマイク・ホンダ米民主党議員。江崎道朗日本会議専任研究員のインタビューでこう語られている(P.289)。
「決議案を提出したのはマイク・ホンダ氏というカリフォルニア州選出の日系の民主党議員ですが、その背後で動いていたのは、主に二つの団体を中心とする勢力でした。在米中国人組織の『世界抗日戦争史実維護連合会』(以後『世界抗日連合』)と、韓国の反日組織『挺身隊問題対策協議会』のワシントン支部にあたる『慰安婦問題ワシントン連合』です。この二つの組織がメインになって、それに『アムネスティ・インターナショナル』などが参加するかたちで慰安婦決議を働きかけてきたという経緯です」
やはりあの議員の裏には中国と韓国がいたということだ。
『ザ・レイプ・オブ南京』の出版も中国が仕組んだことだという(P.290)。
「そもそも従軍慰安婦決議の前にあった南京大虐殺問題からの流れです。これは中国系アメリカ人のアイリス・チャン氏が『ザ・レイプ・オブ南京』という本を出版したことでアメリカでもたいへん話題となった話なのですが、このアイリス・チャン氏も世界抗日連合のメンバーであり、同書自体がこの組織の宣伝工作として出版されたものでした。こうした流れはすべて、在米中国人組織による“日本の戦争犯罪追求の機運をアメリカ世論に喚起しよう”という戦略に沿って仕掛けられてきたものです」
ただ、中国の工作がこうも奏功する背景には、アメリカの「ニュー・レフト」の共感を得たことが大きいという(P.291-292)。
「この問題の火付け役は、むしろアメリカのニュー・レフト(新左翼)の活動家たちだったのではないかと思うんですね。それは六〇年代から七〇年代にかけてベトナム反戦活動をやっていた学生運動家の流れなのですが、この人たちが七〇年代以降、アカデミズムに入り込んでいったのです。
ニュー・レフトの人たちは、中国から何か報酬を得ているというより、信念から行動しているという(P.296-297)。
──アメリカのニュー・レフトに、北京からカネが出ている可能性はあるのですか?
「それはないと思います。ニュー・レフトは信念でやっていますからね。今でこそ中国は資金力がありますが、八〇年代から九〇年代にかけては、それほど資金力はありませんでした。むしろニュー・レフトの側がいろいろ持ち出しているのではないかと思います」
日本のサヨクな皆さんも、ほとんどは、中国韓国北朝鮮から何かもらっているというより、良心から反日しているのかもしれない。中には工作員もいるだろうけど。
「狙われる日本」では、イラク戦争後の村上和巳氏の調査で明らかになった、イラクの対日工作が書かれている。
といっても、そんなにすごい工作が行われたわけではない。ただ、その結論が意味深いと思えるので紹介したい(P.320)。
しかし、日本の一般国民が遠いかなたの国と考えていたイラクの諜報機関が過去に日本での工作活動に邁進していたというのは揺るがない事実であり、現在もそのような活動を行っている国があっても不思議ではない。今後の日本の安全保障を考えるうえで忘れてはいけない視点を提示しているとはいえないだろうか。
イラクでさえ遠い日本で工作しているのだから、日本の近くでしかも大きい国が、日本に何の工作もしていないと考えるのは、まったく現実的ではない。