- 作者: 川西剛
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2000/06
- メディア: 単行本
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故糸川英夫博士が著書の中で、日本とペアを組むべき国としてイスラエルを紹介していた。
それでも日本でイスラエルへの関心が高まる様子はなかったが、2000年にもイスラエルを日本に紹介する本が出た。
その後10年近くたつが、やはりイスラエルと日本の連携は進んでいないように見える。本の影響力というのはこの程度のものか、とも思うが、一方、イスラエルは現在も科学技術に優れた国であるようであり、この本で訴えることも特に古くなってはいないだろう。
著者が日本とイスラエルの連携を訴える理由は、イスラエルが日本とは逆の国であり、互いに補いあうことができるから。イスラエルの独創的な研究開発の能力と日本の優れた量産化・マーケティングの能力が手を組むのがよいという。
イスラエルの得意な分野は「情報通信」、「ソフトウェア」、「医療機器」、「マルチメディア・エレクトロニクス全般」、「農業技術・バイオテクノロジー」、「代替エネルギー」などであるという(P.81)。
本書ではイスラエル大使館のL・エラッド公使(当時)の発言として、「ユダヤ人の発想のユニークさはどこからくるのですか」という問いの答えを以下のように書いている(P.18)。
一つは民族の苦難の歴史から、“知識こそが何物にも代え難い財産である”と考えるようになったこと。二つは、迫害を受け続けてきたため、商いをして稼ぐ以外に生きる道がなく、必然的に知識を磨かざるを得なかったこと。そして三つは、ユダヤ教の教えに負うところが大きいこと、であると。
イスラエルの「技術人材の質の高さ」は以下によって支えられていると考察する(P.30)。
- 優れた教育システムの存在
- 軍との濃密な関係
- 旧ソ連からの優秀な科学者や技術者の大量移民
著者は東芝出身で電気・情報関係が専門らしく、専門外の話には1点だけおかしなところがある。98ページ、「ミラージュにアメリカ製の強力なエンジンを搭載したのがクフィルだというのだが、真偽のほどはわからない」とあるが、クフィルがアメリカ製のJ79エンジンを搭載しているというのは本書の刊行前からよく知られていた。
イスラエルというと日本から遠く、あまり縁がないように思えるが、コンピュータやネット関係の技術ではイスラエル発のものがかなりある。本書では「ファイアウォール」とはCheck Point社の製品「FireWall-1」が元であるとか、DSLもイスラエルで開発された技術とある。インテルのMMXはイスラエルで開発されたもので、今多く使われているCore 2もそう(Core 2は時期的に本書には出てこない)。
http://blog.goo.ne.jp/blue_kingdom07/e/adc9fdb6d7d6fb419f26ba8a2ec6af05
パレスチナ問題に関心が強いあまり、イスラエル製品のボイコットをうったえるブログのエントリーを読んだことがあるが、イスラエルの技術がてんこ盛りのネットでそういう情報を発信するのは、かなり滑稽に思えた。