必中への急降下

必中への急降下―海軍爆撃機戦譜 (文春文庫)

必中への急降下―海軍爆撃機戦譜 (文春文庫)

渡辺洋二氏の新刊。

日本海軍の急降下爆撃機の記録。

急降下爆撃の黎明期、94艦爆〜96艦爆による中国戦線の戦いについてかなり詳しく書いてある。

一方、太平洋戦争での99艦爆の戦いはセイロン島攻撃の部分のみ。それから艦爆に搭乗した指揮官のインタビューがある。

彗星艦爆の戦いとして本土に接近した艦隊に最後の出撃にのぞむ33型、43型の話と、芙蓉部隊の話がある。芙蓉部隊の話は『彗星夜襲隊』には載らなかったエピソード。

とにかく降下爆撃可能な機体を取り上げようというので、銀河と東海の話もある。特に東海の実戦の記録は貴重。

銀河のエピソードにはこう書かれている(P.238)。

 欧米では、上方銃はドイツ版斜め銃の「シュレーゲ・ムジーク」があるが、対地用の下方銃は求めにくい。ユンカースJu87D急降下爆撃機の外翼下に付ける、七・九二ミリ機銃六挺内蔵のWB81Aコンテナがその珍しい一例である。ただし機銃の俯角が十五度と小さいから、水平飛行での射撃は無理で、いくぶんかの降下を要したと思われる。また小口径ゆえに、兵員、トラックを主目標にしたのだろう。

 すなわち対地攻撃用下方銃は、ほとんど日本独自の武装と称していいだろう。その極め付けが陸上爆撃機「銀河」の多銃装備機だ。「銀河」の腹からムカデの足のように出た十二挺の二〇ミリ機銃の斉射により、マリアナ諸島の基地にならんだB-29群に痛打を浴びせる、烈作戦に投入されるはずだった。

対地攻撃用の下方銃を装備した双発機は、「銀河」が唯一なのではなく、実はソ連にもある。

ツポレフTu-2Shがそれで、Tu-2双発機の腹の下に88挺のPPsh短機関銃を斜め下に向けて装備した。短機関銃なので弾丸の威力は知れているが、1機の飛行機が装備する銃器の数としては世界記録。

ただし、この機体の開発は第二次大戦後のようであり(『ソビエト Xプレーン』ではAC-47開発の18年前と書かれており、AC-47の登場が1964年)、大戦中に開発して実戦で使用したということでは、やはり「銀河」の多銃装備機は独自の存在だったようだ。