かなりぶっとんだアニメだという噂は聞いていたが、レンタルで見かけないしどうしたものかとずっと思っていた。バンダイチャンネルがネット配信しているのを最近知った。で、時間ができたのでShowTime経由で視聴した。
以下、視聴時にTwitterに投げたつぶやきとその補足。
第一章「時のしずく」
第二章「青い光」
ShowTimeで『地球少女アルジュナ』を見始めた。ずっと見たかったのです。2話であまりに型どおりの原発批判が。これがアルジュナか! 今では地球温暖化で原発が見直されるという皮肉。
テレサが原発の採算性についてどうこう言っていたが、石油が安定供給されていればその理屈もあろうが、そうでない場合も考えればいちがいに採算性が悪いとは言えない。
第三章「森の涙」
『アルジュナ』3話。ゴミの染み出した水が流れ込んでなければ沼の水を飲んでもいいような描写だな。山でそのまま飲めるのは湧き水だけですぜ。あと、正規の産業廃棄物処分場は水を汚染しないようきちんと止水してあります。
あ、雨水をためて飲むのはOK。
日本アルプスの森にいきなり放り出される樹奈。食べ物もなく飢えと疲労にぐったりしていると、クリス様から<人間というのは何を食べたらいいか自分では分からない生き物なのだ>みたいなご高説。
人間は森で一人で生きる生き物ではないから。アゲハの幼虫をキャベツにとまらせて「食べるものも分からない」とか言うのと同じ。
人間だって、家族や社会の中でなら、うまく生きられるよう遺伝子的にプログラミングされているように私は思う。
第四章「転生輪廻」
『アルジュナ』4話。本格的に宗教アニメになってきました
川森氏は自分で野菜育てたことあるんだろうか。害虫に全滅させられた経験とかないのか? それともうちで育てた野菜が全部虫に食われたのは育て方が悪くて「悪い部分」ばかりだったんですかね。
川森は河森のtypo。
wikipediaの「自然農法」を読む。実践者の一人、福岡正信に関してはリンクをたどると無肥料、無農薬はウソだったとある。比嘉先生の名前も出てる。EMで土壌の菌のバランスを変えるのは「自然」のうちに入るのだろうか。そもそも「自然農法」という言葉自体が形容矛盾。農業は自然じゃない。
うちの実家が道楽で無農薬で野菜を作ってる。だから虫食いの野菜ぐらい食べるのは平気だが、枝豆だけは、一粒一粒虫がいないか確認しないと食えない。飲み屋で枝豆を鞘からまとめてかっ食らうと、農薬万歳! 農家の皆さんありがとう! と賛辞の声を送りたくなる。
耕さず、雑草を刈らず、害虫を駆除せず、の自然農法、無耕農法を礼賛。耕すと土が死ぬなどといって農業1万1千年の歴史を否定。害虫に関しては、害虫に食われるのはもともと弱っていたところだ、と言って自説を合理化。
害虫に関しては、福岡正信の信奉者が同じようなことを言っている。
よく害虫で畑や山林が全滅したなどといった話を聞きますが、害虫や病源菌というのは、植物の寿命がきて、80%は枯れてもいいときにやってくるものなんじゃないでしょうか。
つまり害虫がついたから作物に被害が出るというんじゃなく、実はもう弱りきって死期が近づいているからこそ害虫が発生してくるともいえるわけです。
だから害虫というのは決して作物に被害を与える「原因」ではなく、むしろ「結果」であって、植物の健康度を教えてくれる存在であるのかもしれないんです。もっと分かりやすくいえば、自然から死ねと申し渡されるときに害虫がきて片付けてくれる(笑)。
http://www.creative.co.jp/space/nature/farm/sizen3.html
ところが、福岡正信自身が肥料も農薬も使っていることが、なんとその著作から分かるという。
- http://blog.goo.ne.jp/rgriggs1915/e/25531999282f59d0c075cb3c6961997c
- http://blog.goo.ne.jp/rgriggs1915/e/d5378b58b86fca675bb5129e0cbf7d7c
自然農法というトンデモを信奉しているのみならず、ちゃんと読めば分かる、提唱者の矛盾にも気づかない。『アルジュナ』の背景にある信念体系には、どうも「知性」というものが十分そなわっていないようだ。
なお、無農薬野菜はかえって体に悪い場合があるという話もあるので以下に紹介。
第五章「小さきものの声」
『アルジュナ』5話。宗教コメディ、エココメディというアヴァンギャルドな試みだったのか。やあ失敬、とんだ思い違いをしていた。
樹奈がハンバーガー食べられなくなるところは笑った。あれはさすがにギャグだと思う。「ハンバーガー食えないヒロインかっこいい!」というふうには感じられなかった。
第六章「はじめの一人」
『アルジュナ』6話。数学の先生にひたすら問い詰められる。マインドコントロールの手法で言うところの「解凍」の過程。先生の言う「感動が教育」とは「変革」の過程における恍惚感を連想させる。それはそれとして、「そのほうが楽」は捨てたものじゃない。生き物がどれだけローコストを極めているか。
第七章「見えない言葉」
『アルジュナ』7話。震災復興記念公園で「電気もガスも水道もいらない!」ですか。震災復興否定しますか。
第八章「とおい雨」
第九章「生まれる前から」
『アルジュナ』9話。「ポールシフト」キマシタワー!!! しかしこの内容で夕方放送したのか…。そして水中出産。もうこの手のネタなら何でもありだな。
誤り、9話は放送されていない。
水中出産については下記参照。夜の海水浴自体危険なのに、水中出産など自殺行為。
http://www.chigasakitokushukai.jp/guide/medical/depart/og/guide0208.html
失敗百選にも載っているのか。
第十章「ゆらぐ遺伝子」
第十一章「かえらざる日」
『アルジュナ』11話。上から目線でものすごい偏った思想を説教されたけどストーリーに関係ないよ(;´Д`)。硝酸アンモニウムが戦争のため増産され、余ったから肥料になったとか偏見(それも悪しき化学肥料!)。アンモニア合成は最初から肥料生産が目的という話。http://bit.ly/1BJ7Kv
第十二章「国ほろびて」
『アルジュナ』12話。あれだけの大災害なのに水道の蛇口から水が出る不思議。蛇口から水が出ないなど想像もつかない文明人の思考の罠。というか神戸舞台にしておいて被災者の話満足に聞いてないのか? 私の先輩も豊中で建物は無事だったが何日も水が出なくて悲惨だったと言っていた。
第十三章「今」
『アルジュナ』13話。まごうことなき宗教アニメ。悟り開くと「害虫は地球を浄化してる」とか信じられるようになるのか。あと、9話はテレビ未放映だったとShowTimeの解説にも書いてあった。さすがにそうか。
全体として、面白いのは面白い。1話も見ていて退屈という話はなかった。河森氏のアニメーション作家としての手腕は確かなようだ。
しかし、作品全体の背景にあるいびつな信念体系にはうんざりする。
狂い方がユニークならそれはそれで人を惹きつけるものもあるだろうが、トンデモへのはまりかたがあまりに平凡で、それがまたやりきれない。
どうも、農作業などを実地でやることなく、書物や伝聞などからトンデモ系の信念体系を築いていったのではないかと伺える。
世界各地を旅したり、常人よりユニークな体験を多くしているのだろうから、こんな平凡なトンデモさんでいるのはもったいない。
あれから8年、河森氏はやはり何か飛躍を成し遂げているのだろうか。それともやっぱり、普通のトンデモさんなのだろうか。それはその後の河森作品を見て考えたい。
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