新しいPCにぼちぼち慣れた頃、x-アプリをインストールして音楽データの引越しを試みた。前のPCで使っていたデータはすべてDドライブにレストアされている。
x-アプリで「フォルダーから検索して取り込む」を実施。
MP3のファイルはすべて問題なく取り込み完了。埋め込んだジャケットのイメージも引き継がれた。
ATRACのデータはどうか。著作権管理しないデータは取り込めた。一方、著作権管理されたデータは、権限がないとかどうとかで取り込めなかった。CDからリッピングした曲のほぼ半数と、moraで購入した曲のすべてが取り込めなかった。
まあいいかな、と最初考えた。なにしろ、新しいPC、新しいWindowsでまっさらなところからスタートする。過去のデータにいつまでもこだわっていてもしょうがない。
とりあえず、去年の夏ごろ、SonicStageで音楽データをバックアップしてあったので、それをレストアすれば、最悪ここ半年ぐらいに購入した曲をあきらめるだけですむ。それらの曲はWalkman上にはあるので、当分の間聞くこともできる。
で、x-アプリのバックアップツールでポータブルHDDにあるSonicStageのバックアップデータを読みに行った。読めない。x-アプリはx-アプリでバックアップしたデータしかレストアできない。なんという融通の利かない仕様。
ならば、とSonicStageをインストールした。64bitでは動かないことになっているようだが、問題なくインストールできて、問題なく起動できた。そして、SonicStageのバックアップツールで、バックアップデータを読みに行った。
ところが、バックアップデータが見つからない、という返事。同じSonicStageだというのに、4.4では4.2のバックアップデータが読めないというのか? あるいは何かの手違いでバックアップに失敗していたのだろうか。
これはもうしょうがない。あきらめよう。とりえあえず心にそう言い聞かせた。
しかし、あきらめきれない。何か手はないか? そればかりが頭の中を支配するようになった。
前のPCのパーツはまだすべて手元にある。データも、ポータブルHDDの中にイメージバックアップとしてすべて残っている。
まだ何か手はあるはずだ。
ひとつの手。
前のPCのマザーボードにCPUとメモリーとビデオカードを挿して、古いHDDを取り付けて、新PCのケースから電源等のケーブルをつなげて起動する。PCというものは電気的につながっていればケースに入っていなくても動く。
しかしこれは、漏電の危険がともなう。また、旧PCは寿命が来ていることも問題だ。うまくつながっても起動できる保証はない。
何か手はないか。
3日ぐらいたって、ようやくひとつの事実を知った。新PCにもXPがインストールできる。
これだ! ひらめいた。
会社から帰ってきてさっそくとりかかった。
旧HDDを新PCのマザーボードに接続。そして新HDDのWindows 7を起動。
ポータブルHDDから旧PCのCドライブとDドライブを旧HDDにレストア。MBRの復元も忘れない。そしてWindows 7を遮断。
旧HDDをSATA 0に接続、新HDDは外す。そして電源ON。うまくすればこれでXPが立ち上がる。HDD交換によるプリミティブなデュアルブート。
さすがにうまくしなかった。起動のごく初期でストップ、回復コンソールで起動するかどうか尋ねる画面まで行けるが、それ以後先に進めない。
問題ない。これなら希望がもてる。HDDがないとかそういうエラーではない。
おもむろに光学ドライブにXPのインストールディスクを挿入して再起動。
XPの再インストールを実施。Cドライブの既存のXPが認識された。やたっ、修復インストールできる!
ということで、新PCのハードウェアで、HDDを物理的に交換してXPを修復インストールして、旧PCの環境を再生した。
さすがに、修復インストールそのものは順調とはいいがたかった。最大の難関はライセンス認証。インストールが終了し、かつてのユーザーIDでログイン、というところで、ライセンス認証が必要というメッセージ。そして、それなしにはログイン不可能。ではライセンス認証すればいい、はずなのだが、2002年に購入したXPではこのPCのネットワークが認識されない。オンラインでライセンス認証ができない。
手詰まりか? いや、残された手がまだある。電話。まさかの電話によるライセンス認証。これをするはめになった。
正直、電話で話をするのは苦手だ。知り合いならまだしも、見ず知らずのオペレーターと話をしなければならない。何を話せばいいんだ。この状況をどう説明する。PCを更新したらATRACのデータが取り込めないから旧PCの環境を復元するからどうこう。これで相手が納得してくれるのか。まさか。ああドキドキする。しかも時間は夜中だ!
しかしこれは、完全に想像がエスカレートしすぎだった。「待てよ、もしかしたら、相手はコンピュータじゃないのか? プッシュボタンで全部済むんじゃないの?」。で、思いきって電話してみたら、まさにそのとおりで、こちらは一言もしゃべる必要はなく、電話機のボタンを押すことですべてが進んだ。
いらぬ緊張をしてしまったが、とにもかくにもライセンス認証が終了して、晴れてXPにログインできた。懐かしいデスクトップが起動。
分かったことは、ネットワークとサウンドは、古いXPでは動かないということ。モニターは1024x768なら動く。USBマウスも使える。マザーボード付属のDVDから、ひとまずネットワークとビデオのドライバーをインストールした。
次は怒涛のXPのアップグレード。しばし時間がかかってから、何度もリブートして、ようやくSP2にアップグレードできた。
この時点でサウンドのドライバもインストールできるようになった。そして、x-アプリの起動テストもできるようになった。起動すると、かつての音楽データがすべてそこにあった。これはいける! あとはバックアップツールでバックアップするだけ。
XPのアップグレードが一通り落ち着いてから、そして、USB 2.0のドライバもインストールしてから、x-アプリのバックアップツールで音楽データをポータブルHDDにバックアップした。アップグレードがまだ少し残っているようだが、音楽データを吸い出せたのでひとまずXPの用事は終了。アップグレードはまた今度。ということでPCを遮断。
HDDを交換してふたたびPCを起動。何事もなかったかのようにWindows 7が起動した。
x-アプリのバックアップツールからデータの復元を実施。こんどはバックアップファイルが無事読み込めた。ネットで認証。そして、先ほどまでのx-アプリの登録データを削除する形で、旧PCの音楽データが新PCにすべて復元された。x-アプリを起動すると、数日前までの、旧PCでのx-アプリのウインドウがそのまま再現された。moraで購入した曲を含めて、すべての音楽デーが新PCに移動できた。これで引越し完了。
ただし、ことはそううまくはいかない。バックアップ、レストア時に、ATRACとMP3を区別できないという問題がある。バックアップ時は、登録された音楽データはATRACもMP3もなく、まとめてすべてがバックアップファイルに収納される。復元するときは、元のディレクトリに復元すると、ATRACもMP3も区別することなく、いずれも元あったデータに上書きで復元される。
今回は、Dドライブにあった音楽データをバックアップした。ということは、元のディレクトリに復元しようとすると、そこは光学ドライブなので、復元できない。やむなく、Cドライブの、x-アプリにとってデフォルトのフォルダーに音楽データを復元した。
MP3は、EドライブにかつてのDドライブのデータが移動してきてあった。そして、それとは別に、Cドライブに同じデータが重複してコピーされることになった。MP3の音楽データが二重にPCに存在してしまう、これだけが、今回の音楽データ引越しで生じた唯一の誤算。
次にPCを引っ越すときは、忘れずに音楽データもバックアップをとろうと、そう心に誓った。今回、ATRACの著作権管理の厳しさを甘く見すぎた。旧PCが完全に壊れる前に移行したから音楽データを救出できたからいいようなものの、毎回うまくいくとは限らない。日ごろのバックアップは音楽データも忘れてはいけない。