都合のいい「うつ」

都合のいい「うつ」(祥伝社新書212)

都合のいい「うつ」(祥伝社新書212)

香山リカファンはやめたらしい

『うつは薬では治らない』のあとがきで著者は香山リカ氏のファンだと書いているが、本書ではかなり厳しく香山リカ氏の本を批判している。twitterのつぶやきなども見ると、どうやらファンをやめたらしい。

ブロガーを中傷

著者が毎日新聞に書いたコラムが批判され、人格攻撃された。それに対し本書で相手のブロガーを中傷している(P.185)。

 ちなみに、先に取り上げたブログで私を非難したうつ患者らしい女性は、他の記事を読むと、調子のいい時は、スポーツジムのプールに通って、一日で一〇〇〇メートルも泳いでいるようです。「ドタキャンOK。だってうつだから」という理論と、一〇〇〇メートル泳ぐ元気があるという事実の間に、私は違和感を覚えてなりません。もしかしたら、この人も「新型うつ」なのでしょうか?

同じ本で「うつなのに、本が書けるなんておかしいのではないだろうか」(P.174)という声に反論していながら、この発言はなかろう。

また、著者は、相手のブロガーの発言を179ページで「好きでドタキャンしているわけではない。うつだから、しょうがないのだ。ドタキャンしたことをうつ患者も悪いと思っている」と要約しておきながら、それを後の方で「ドタキャンOK。だってうつだから」と捻じ曲げている。その自分で捻じ曲げ、捏造したブロガーの発言に対して「この人も「新型うつ」なのでしょうか」と非難している。これをタチの悪い中傷と呼ばずしてなんとしよう。

なお、相手のブログは「上野玲 毎日新聞」で検索すれば到達可能。googleではご丁寧に、「上野玲」と入力するとこれらがセットで表示される。google気が効きすぎ。

それはほとんどクレーマーだと思います

230ページから「急病人に水を売りつける航空会社」としてスカイマークを批判している。これもひどい。著者はまるでクレーマーだ。

スカイマークは飲料水が基本有料らしいが、病気で薬を飲む人には無料で水を出すという。著者は離陸後水平飛行に移ったときに隣の席の人のビールの匂いで気分が悪くなった。そこでCAに水が欲しいと言うが、上記を確認した後、<薬は飲まないし有料なのも気に入らないから>と水をもらうのをやめた。

そして、著者は着陸までひたすら我慢し、着陸してから激しく航空会社に苦情を言い始めた。

そんなに気分が悪いなら再度CAに話をすればよかったのではないか。その上でCAが水を売ろうとした、というならまだ同情の余地がある。

なにかおかしくないだろうか。私には、水を手に入れるあらゆる努力を放棄したことから、著者の自己責任のように思えるのだが。努力はいらないというならそれこそ「うつ病患者の権利意識」だろう。

多分最適解は、最初に水をもらって抗不安剤を飲んでおくことだったのだと思う。

水なんかに金は出したくない、というつまらない意地のせいで多くの不幸が連鎖しているような気がしてならない。だいたい、過剰なサービスを削るから格安航空会社(LCC)の経営が成り立つ。その分運賃が安いのだから水ぐらい買えやしないか。それでJALANAより高くなるわけもなし(wikipedia調べでは100円)。

航空会社はCAが客の体調不良を即座に察知し、自発的に無料で水を与えるなり対応しなければならない。心筋梗塞脳卒中など命にかかわる病気ならこれは言えるが、うつ病のような病気では「気づかないほうが悪い」と言えるほど分かりやすくもなければ致死的でもない(当人が死ぬほど辛いのは自分の経験からも分かるけれど、悲しいかな、鬱はどんなに苦しくてもそれそのものでは死ねない)。

このエピソードは、苦しいときの対処方法の失敗例を伝えるなら適切だが、企業のモラルハザードを訴えるには不適切だったと私は考える。

ネットの匿名批判

著者はネットで匿名で悪く言われることに強い嫌悪感を持っている。175ページにこうある。

(基本的に私は「批判」をされても正々堂々と受けてたちます。ただし、批判するなら実名で立場を明らかにしてするのがルールだと思っています。匿名で「批判もどき」をするのは、単なる誹謗中傷です)。

ネットの批判は内容にかかわらずすべて「誹謗中傷」であると言わんばかり。

これはちょっと残念な認識だと思う。このような考えの人にはぜひ見てほしいブログがある。「週刊オブイェクト」だ。

http://obiekt.seesaa.net/

ここを読んでみれば、実名と立場を明らかにするということが、態度の誠実さや発言の正確さを必ずしも保証しないということがよく分かると思う。

そして、どこの誰かわからない、匿名のブログ主のJSF氏が、いかに冷静に、理論的に、実名の人のおかしな発言を批判しているかを、つぶさに見ることができる。

匿名だろうと実名だろうと、要は内容だというのが、私の18年ぐらいのネット生活で得た実感。

この本に対しても実名の人が読みもしないで的外れな非難してるんだが…、と某ツイートを紹介しようかと思っていたところ、著者本人がやっちまった。

http://b.hatena.ne.jp/entry/ameblo.jp/utsunekotei/entry-10649856937.html

実名であることが誠実さや正確さの保証にならないことを、なにも自ら証明しなくても…。

なお、先日、この本の著者と同じようにネットの匿名の発言を批判した方が、こんな失態をやらかしてしまった。

http://obiekt.seesaa.net/article/161941046.html

実名主義の人が匿名でおイタをするなんてそうそうあることじゃないだろうと思いつつ、amazonの『うつは薬では治らない』のレビューに寄せられたコメントを読んでみた。

http://www.amazon.co.jp/review/R190HR1PBWTQXJ/ref=cm_cr_dp_cmt?ie=UTF8&ASIN=4166607537&nodeID=465392&tag=&linkCode=#wasThisHelpful

著作権に配慮し記事のほとんどはぼかしてあります。

この発言で、上野玲氏のamazonでのIDがakatukidanであることが分かった。さて、この人は他ではどんな発言をしているのだろう、とクリックしてみると…。

http://www.amazon.co.jp/gp/pdp/profile/A1CAF464UMGS88/ref=cm_cr_rev_detpdp

ええ!?

これはどういうことだろう。以下の3通りが考えつく。

  1. akatukidan氏が「上野玲」の名前を騙っている
  2. 上野氏がakatukidan氏のIDを乗っ取っている
  3. ハンドルネームで自分の本の宣伝をしている

まさか2番目はありえないと思うが、ではどれが真実か。神ならぬ身では真実はさっぱり分からない。賢明な読者におかれてはいかにお考えだろうか。