アカルイつうつ生活

アカルイうつうつ生活   「うつ」と上手に付き合う40の知恵 (知恵の森文庫)

アカルイうつうつ生活 「うつ」と上手に付き合う40の知恵 (知恵の森文庫)

はじめに

看護師に対するセクハラツイートが炎上して世間を騒がせた後、看護師のせいで二人が自殺未遂しますという謎のメッセージとともにtwitterとブログを突然やめた上野玲氏。

その短い間に、この人について色々知ることができたので、改めて、過去の著作を読んでみた。標記の本は約1年前、うつ病を患いつつ頑張っているジャーナリストだとこの人を信じていた頃にネットで買った本。

191ページ、

 ずっと順風満帆でこられた人なんて、ほんの一握りしかいない。

うつ病は人生を走りぬくためのピットインだ。などという話にふむふむとうなづいて読んだが、さりとてブログに積極的に書評を書きたくなる濃い本でもなかったので、家の隅に放置していた。

このたび読み直してみると、ツッコミどころが案外ある。これは無視できない、というところだけでも数箇所見つけた。それについて順次書いていきたい。

うつのパニック発作

うつ病の人はパニック発作を起こしやすい。パニック障害抗うつ薬SSRIが処方されるところからして、うつ病パニック障害は親戚のような病気なのかもしれない。両方を患っている人も少なくない。

パニック発作とはどういうものか、ぐぐると解説が沢山ある。その一つが以下。

パニック発作は、心臓がドキドキしたり息が詰まったり、吐き気がしたりという状態が、このまま死んでしまうという不安・恐怖感とともに強く起こるものです。

通常、数分でピークに達し、数十分後には消えますから、「大変だ!」と救急車を呼んでも、病院についた時にはすでに治まってしまい、「どこも悪くありません」と帰されることも稀ではありません。

http://www.karacli.com/panicdisorder02.html

この本でも108ページから、「突然のパニック! さあ、どうする?」という項目がある。

上野氏によると「パニック」とはこういうものだという(P.108-109)。

 うつの患者はおとなしい、とされている。

<略>

 このうつ患者だってこころの中まで凪いでいるわけではないことはこれまで何度も書いてきた。むしろ、表面上の「静」とは対照的にこころは「動」と言えるかもしれない。

 絶えずアレコレと考え事をしては、イライラしたり、不安になったり、こうしちゃおれんと焦りまくったり。

 そしてこの内面的な「動」に対して、ちっとも体が反応して動かないことに怒りに似た感情を持っていることは確かだ。

 それが時として爆発する時がある。

 それがパニックである。

あれ? 通説となんか違う。

パニック発作の定義を正しく認識していないのは、単なる不正確な記述ということでどうということはないが(よくもないけど)、問題は「私の事例を出そう」と109ページ以降に書かれていること。

 無性に怒りがわいてくる。それも誰かに対する怒りではなく、自分自身に対する怒りだ。

「この頭が悪いんだ」

 と頭をぶった切ってしまいたくなる。

 それが高じるとついに爆発してしまう。

「もうどうしていいかわからない!」

 壁に頭をガンガンとぶつける。

<略>

 だが、ガンガンと額から血が出るほど壁に打ち付けたって、痛いだけでちっともうつうつはとれない。当たり前だ。昔のテレビじゃないんだから。

 このように、自傷的な行為をとると周囲は困ってしまう。

 もっと困るのは、自分を痛めつけるだけではなく、家具を壊したり、家族や子供に暴力を振るってしまうケースだ。

うつ病パニック発作は不安から生じるもので、怒りから生じるものは別のものではないだろうか。そして、怒りに任せて自傷行為を行い、さらには家族に暴力まで振るう。これは多分、「うつ病」という病気の容態としては、あまり標準的ではないと思う。

岩波明:『うつ病――まだ語られていない真実』では「心中」の事例が挙げられており、うつ病患者といえども人を殺傷することがあると書かれている。しかしそれは、妄想と絶望、そして希死念慮という、この病気特有の症状がもたらしたものだろう。怒りが爆発して衝動的に暴力を振るったという例は、うつ病の本ではあまり見ない。

この後、自傷行為家庭内暴力に関して、家族は優しく本人に言い聞かせて、「パニック」になりそうだったら抗不安薬を飲ませて大人しくさせてほしいと書いてある。自分の感情、というか暴力的衝動は、人に頼るよりまず自分がコントロールするのが大人ではなかろうか。

「偽うつ」という批判

著者はうつ病と診断されて治療を受けているのだから、堂々としていればいいと思うのだが、本の中で時々、「偽うつ」呼ばわりされていると書いている。

7ページ。

 だから私は抗うつ薬抗不安薬を飲みながら文章を書く。そして講演を続ける。詐欺師、ペテン師、そして自称うつと誹謗中傷されながらも。

186ページ。

 私も講演会をやったり、NPOを起こしたりしているからか、散々、「偽うつ」だと非難された。

この本だけ読むとそれは唐突に見える。しかし、本書が出版された2004年(文庫化は2007年)より、ちょっと前のネットの掲示板のログの存在を知って合点がいった。

http://mimizun.com/log/2ch/utu/1050159016/

ここで散々なことを書かれているためだ。

でも、NPO起こしたからとか、講演したからとか、そんな単純なことで「自称うつ」呼ばわりはされてないと思う。その辺は読者の皆さんご自身で確かめてほしい。あるいは他のところで安易に上野氏が「自称うつ」と中傷されているなら、その場所を教えてほしい。

講演会についてはこんな有様だから批判されるのだろう。

387 :優しい名無しさん:03/08/28 19:50 id:TaL7j/g3
8月3日(日)雨
青森講演会。同じ会場で青森出身のナンシー関の消しゴム版画展をやっていたが、
そちらはチラシやらポスターを入り口に貼ってあるのに、
うつコム講演会はチラシを貼るのも禁止される。排他的。
この会場(青森市民中央センター)は、書籍の販売も禁止。見本として入り口に置くのも禁止。苦肉の策で青森で一番大きな書店に著書を入荷依頼してもらうよう
2ヶ月も前に連絡していたのに、成田本店新町店という本屋に行くと、
月曜日にならないと入荷しないという。
本屋が本を売らないでどうするのか。
出版不況は出版社だけでなく、
こうした書店の販売意欲のなさも要因としてあげられるだろう。

http://mimizun.com/log/2ch/utu/1050159016/

講演会は本の宣伝のためですって白状してしまっている上に、会場や書店を非難する他罰的な態度。これではうつ病の人らしく見えない。

NPOについてはこんな話。

609 :608続き:03/09/27 00:20 ID:/rpZqIKN
なまえ:うつコミュニティ事務局 2003/9/26<金> 09:17:43/性 別/年 齢

うつコミュニティの活動には資金が必要です。そのために私たちは製薬会社
(例えばグラクソ・スミスクライン、藤沢薬品、ヤンセンファーマ)に
協賛金の御願いをしています。
しかし、それがそんなにいけないことなのでしょうか。
私は私費を300万円以上、投じています。なおかつ、4月の活動開始以来、
無給です。それはすべて協賛金を得られた時に精算する予定があるから
できることで、なにも私は大金持ちではないし、むしろ経済的には厳しい状況
にあります。それでも私たちにはお金を得てはいけないのでしょうか。
製薬会社はいろいろと協賛金の話を先延ばしにして、
払ってくれる様子があまり見られません。
つまり、抗うつ薬を飲みましょうと私たちが訴えても、
薬を売って儲けるのは製薬会社で、製薬会社は私たちが財政的に破綻しても
知らんぷりをするつもりなのでしょうか。
そうなればせっかくここまで育ってきたうつ病患者と家族の会がまた日本から
なくなってしまいます。
それでも製薬会社は構わないと考えているのでしょうか。
どうか、うつコムを本当に必要とされている方がいらっしゃったら、
上記の製薬会社にうつコムが必要であることを
メールでアピールしていただけないでしょうか。
はっきり言って、私の貯金ももうありません。
うつコムを続けていくためには、
私が死んで生命保険で充当すべきとお考えですか?

http://mimizun.com/log/2ch/utu/1050159016/

620 :優しい名無しさん:03/09/27 07:10 id:lw15Xltv
何ですかこれは。
猫鬱亭の日記より、一部抜粋。

なにも実情を知らないヤツが偉そうに常識はずれなことを書き込むので腹が立つ。こっちは必死で金集めのために東奔西走しているのに、何の具体策も足さず、批評ばかりしているのは楽なものである。
病院から金をとれ? そんなこと出来るわけはないじゃないか。それにある病院のひも付きになるのはゴメンだ。
どうして私たちが無料で参加できるように腐心していると思っているのか。本当にうつコムを大事に思っているのか。

「本当にうつコムを大事に思っているのか。」

お前管理人やめろよ・・・てか、この文章だけでうつコムから人が去りそうだ(w
にしても酷いなこいつ。

http://mimizun.com/log/2ch/utu/1050159016/

ここでも他罰的な傾向が見て取れる。うつコミュニティについては、掲示板の書き込みがよく削除されるようだし、上野氏自身も、不用意なことを書いては日記をたびたび削除しているという。

このログを読んで分かったのは、上野氏の行動パターンがこの頃から今まで特に変わっておらず、「炎上」を起こす素地は常にあったということ。そして、うつ病の認知度の急激な上昇と、twitterという新しい情報伝達形態の登場という背景が揃っている中で、例のセクハラ発言をしたものだから、いちやくネットの有名人になってしまった。

匿名掲示板のスレッド1つぐらいでとやかく言われているうちは、まともな文章が書ければ本を出すのに差し障りはないが、今後はどうなるのだろう。今回の炎上を乗り越えた上野氏がどんな本を書くか、色々な意味で楽しみにしているのだが、少なくとも一人、編集者を本気で怒らせてしまっているので(http://twitter.com/yukiholyを参照)、次に本が出るかどうかはなんとも言えない。

それにしても、「病院のひも付きになるのはゴメンだ」って言いながら製薬会社のヒモつきになろうとしていたとは。かつてのブログ名、「ジャーナリストの真剣勝負」が空しく聞こえる。

そして、製薬会社からの支援が得られなかったことを考えると、amazonでこんな暴言を吐きたくなる気持ちも分からなくもない(発言がひどすぎてデフォルト非表示にされている。著者なのに…)。

医療者が真摯な態度で、抗うつ薬だけでいいのか、と考えている点をまったく評価しないのは、
やはり製薬会社の利益相反があるか、あるいは「うつ」であるをアイデンティティにしている
救いようのない人です。そんな人は読まなくて結構。勝手に自滅しなさい。

http://www.amazon.co.jp/review/R190HR1PBWTQXJ/ref=cm_aya_cmt?ie=UTF8&ASIN=4166607537#wasThisHelpful

なお、NPOうつコミュニティの本部は現在機能していないらしい。サイトは閉鎖されている。

http://www.utsucom.net/

2009年の6月まではサイトはあったのだが。しかし上記ログを読むと、よくまあ去年まで存続していたと感心してしまう。

他にもネタがあるので、書評の続きをいずれまた書きます。