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一週間フレンズ。の三幕構成

2次元美少女には格がある。この場合の「格」とは法則や規則のこと。

基本はギリシャ時代には確立していた「美」の理論で、漫画的な顔パーツをそれに沿って配置すると美少女のできあがり。

しかし何事も、格があれば破格がある。格を極めることが基本だが、そのうえであえで格の枠からはみ出すとそこに新しい美をみつけることができる。

最近のアニメ美少女の破格というと2013年の『ゆゆ式』。眉の位置が極端に上にあって格をぶち破っているが、それでも魅力的なキャラクターにできていて、様々なフェティッシュな描写も合わせて、独特の女性の美を描いている。

そしてもう一つの破格が2014年のアニメ『一週間フレンズ。』。これも顔のパーツの配置が独特で、よく複数のアニメーターが統一された絵を描けるものだと感心する。

しかしこの破格のおかげで、「現実ではこんな顔だろうか」という想像がより強く刺激される。格に従ったキャラクターデザインではイメージが二次元の枠からはみ出すことがなかっただろう。原作者やキャラ設定の人のリアルをしっかり見る観察眼がこの破格のデザインを成立されているのだと思う。

という絵の話で自分にとっての『一週間フレンズ。』の話は半分終わってしまうのだが、もちろんストーリーもいい。

テーマは友情。とても明快。途中で丁寧に、本作の主題は友情であり、恋愛はちょっと脇に置いてますよ、というメッセージが発せられている。もちろんキャラクターに感情移入して鑑賞すれば、藤宮&長谷ペアは鉄板だが、話の主題はあくまで友情。一週間ごとにリセットされる記憶の障害のため友達を作ることができなかった藤宮さんが、友達のいる普通の学生らしい青春にエントリーできるようになる、というのがストーリーの基本。

キャラクターデザインは破格だけど、シナリオは格、というか三幕構成のパラダイムにしっかり準拠している。こういう場合破格はどちらか一方にしておかないと視聴者がついて行けない。

第1幕は1〜3話。

長谷が以前から気になっていた藤宮さんに友達になってほしいと告白するところからスタート。友達を作らない、という信念を持って学生生活を送っている藤宮さん。冷たい態度がクラスの女子から不評。でもそれは本当の藤宮さんじゃない、という確信から、藤宮さんと仲良くなろうとする長谷。願いかなって友達になれた。昼休み限定だけどある程度話ができる。やった、という展開から週が明けて月曜日。一緒に過ごした時間も、まして、長谷の顔さえも忘れてしまった藤宮さんの態度に大ショック、というのが1話。

藤宮さんと長谷のキャラクター、藤宮さんの記憶障害、普段なぜ彼女が友達を作ろうとしないのか、そういったことが一通り説明されている。そして、改めて「友達になってください」とめげない長谷でエンド。

2話で藤宮さんが日記をつけるようになり、リセットされる記憶を外部媒体に保存することで一歩前進。そして3話。藤宮さんが理系女子だというのもさることながら、完全リセットされるはずの記憶がふとしたきっかけで少しだけ戻る。障害を克服できる希望。そして何より長谷との友情が一段と深まって第1幕完。

第2幕は4〜9話。

第2幕前半は、まず4話で藤宮ノート紛失による友情の危機。危機を乗り越えて前に進んでいく藤宮さんとその友達たち。友達には長谷と、長谷の親友の桐生と、そして、藤宮さんが友達がいらないというのは嘘だと見抜いたもう一人のクラスメートの山岸さんが加わる。

藤宮さん、長谷、桐生、山岸さんの4人の友情が温まったところで6話Bパートのミッドポイント。藤宮さんの母親が長谷と密会(笑)。小学6年のとき交通事故にあってから娘の記憶障害が始まったと打ち明ける。事故は何か友達とのトラブルがあってその結果起きたらしい。これ以降の長谷は、藤宮さんの記憶障害に何かの理由があることを知り、それと向き合ってゆかなければならないと自覚する。

第2幕後半は夏休みの楽しい毎日。長谷はアクセスできる機密レベルが上がって大きい役割が期待される、と見せかけて、それより藤宮さんの方が格段に進歩していて、月曜日の記憶のリセットがほぼ消失するという素晴らしい変化が。

話はそううまくはいかないぜ、と容赦なく第2幕の終わりが近づく。9話ラスト、藤宮さんの幼馴染の九条が地元に戻ってきて2学期から転校してくる。彼に心無い言葉をぶつけられた藤宮さんは倒れて保健室へ。目覚めた藤宮さんの目つきが…

第3幕は10話〜12話。

9話でまるで悪役だった九条だが、藤宮さんの交通事故と記憶障害のことを知らされ、かなりのショックを受けてむしろ長谷に近いポジションに来る。九条はせっかくうまくいっていた藤宮さんと長谷の友情をぶち壊したわけだが、第3幕からは長谷の敵というわけではなくなり、むしろその幼馴染人脈が、藤宮さんの交通事故と記憶障害をもたらした出来事を解明することにつながる。

10、11話で一通り謎が解明する。12話最終回は、また「友情」が回復して楽しい最終回が見られるというような期待をしていた。しかし実際はそんなすっきりしたラストではなく、第一印象は寂しい気持ちになった。

謎は解明したけど、それが即解決に至らないところは、事実上の心の病という微妙な問題を扱った作品として、節度ある態度だと思う。

即解決、はないけれど、二人の友情がこれからまた深まってゆくという期待とともに作品は終わる。

長谷が藤宮さんと友達でいたいという気持ちに素直になること、障害に物おじせず藤宮さんと近づくこと、「友達」が今は沢山いること、そして、原因となった出来事がほぼ明らかとなっていること。

1話と同じところに戻ってきたようで、実は一回り高いところにいる。こうしてらせんを描いて、徐々に二人の人生も幸せになっていくのだろうなあ、という希望が湧いてくる。

2回目以降抱いた感想はこんな感じで、自分としては後になって評価が高くなった作品。

物語は課題解決のシミュレーション。物語が必ずしもそうである必要はないが、人気のある作品はおおむねそうういう物語になっている。三幕構成の第3幕は物語が取り組む課題の解が示される。

本作はすっきりした解決を見せてはくれないが、解決を放り出したわけではないので、課題の深刻さを考えると、十分いいまとめだと思う。テーマが「友情」だと改めて考えれば、友情が修復された時点でひと段落というのは最良の着地点の一つだろう。