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ニコン1V2

ニコン1は2012年に試しにV1を買ってみてから早5年。気がついたら手元にボディがV1、V2、V3とそろっていて、持ち出す機会も多く、完全に主力カメラになっている。

その中で一番便利で、しかし一番曲者のカメラがニコン1V2。

入手の経緯、外観デザイン、撮影の得意不得意、写真の画質、そしてトータルでのカメラとしての使いやすさ。こういった要素のいずれも印象的で、常に意識に上がってくるカメラ。

ニコンがミラーレスカメラシステムとして2011年に販売開始したニコン1は、当初はあまり好調ではなく、売り出すカメラがいろいろ試行錯誤し続けていた。その結果として、2015年にJ5が発売され、これが価格がこなれたここ最近になってランキング上位に顔を出すような売れ具合になっている。ここまでよく頑張ったものだが、途中で奇妙な製品も販売されたこともやはり事実となる。

その奇妙なカメラの筆頭がこのニコン1V2。V1の不評から大きくデザインの方針を変え、2012年の新たなニコン1のフラッグシップとして登場した。

V1とV2を比べると、ニコンが何にこだわっていたのかが見えてくる。まず大きさと重さ。V1は電池が一眼レフと共通のEN-EL15ということもあり、やや大きく重いカメラだった。カタログデータでボディの質量が電池SDカード込み383gとある。V2は337gで46gの軽量化。

一方で、グリップをつけ、EVFを高く持ち上げてより「高性能な」カメラに見える外観にした。V1はぱっと見カメラらしくないデザインで、機能や性能をあまり表に出さないシンプルデザインであるので、ここは明らかな路線変更。

実はV1もカメラらしさにこだわったデザインなのだけど、目標がライカのような古い小型カメラにある。というかライカM3と見比べるとやはりデザインの方向性が似てると思う。

胴体を直方体の左右に半割りした円柱をくっつけた形にしたのはまさにライカの形。正面から見てボディが正方形2個分、縦の高さに対し幅が2倍ならよりライカ的になる。そこはV1は少し幅が狭い。

ただし、V1はこの左右が丸められた直方体とした躯体に電子部品類が収まらず、後ろにかなり出っ張っている。白ボディでは黒く塗って目だないようにしてあるけれど、この厚みは意匠的にはマイナス点となる。

V2はライカにぜんぜんにていない角ばったデザインで、ボディ背面を黒く塗りつぶして厚みをごまかすようなことはしていない。

ではいかほど薄くなったかというというと、撮像面からボディ背面までV1は約18mmに対し、V2は約17mm。いや、1年で1mmも縮めたのはすごいと思う。でも、実はメカ的にはあんまり小さくなっていない。

でも持ってみると実際に薄いし、意匠的にも「黒塗り」でごまかしてはいない。

V2が削って薄くしたのは撮像面より前で、特にマウントとグリップの間を大胆に削っている。V1はボディからマウントの突出が約1mmだが、V2はこれが約10mmもある。

電池をより小さいEN-EL21に変え、しかも収納位置をグリップにしたからできた薄型化。

ユーザーとしてはグリップをもう少し大きくしてEN-EL15を引き続き使えるようにしてほしかったのだけど、どうもここはニコンがやりたいこととユーザーが求めているものが食い違っている。ボディの小型化といえばレンズ着脱ボタンがボディ左側から外にはみ出しているのもやりすぎで、ここまで骨身を削るような小型化はユーザーは求めていないだろう。

あとはV2では、ボディの上部を台形に絞って天端の平面を狭くし、より薄く、小さく見えるようにしている。

デザイナーの意図は分かるが、結果としてほぼ直角にEVFがそそり立ち、一方ボディはやせぎすで、第一印象は「奇妙な」と言いたくなってしまう、そんなカメラが出来上がった。ちなみにそそり立ったEVF部には折畳みストロボも置かれている。

ミラーレスカメラを高性能な一眼レフに近い意匠にするというのは実はアリで、オリンパスはOM-Dとしてその方針のカメラを発売して成功している。

ニコンは上に一眼レフがあるから、ニコン1がOM-Dのようになることはまずないだろう。

デザインの話をしたら長くなってしまった。

デザインとしてはあと1点、モードダイヤルとコマンドダイヤルを追加したのがV2の特徴。

ある意味、ダイヤルを装備したことがこのカメラの脱「シンプルデザイン」のきっかけだったのかもしれない。

これが実際使いやすい。まずコマンドダイヤル。回すだけではなく、水平方向に奥に押し込むことができる。回して選択、押して確定、というのを指一本でできるのがいい。

また、飛行機を撮影するならモードダイヤルでSモードにしてコマンドダイヤルでシャッタースピードをすぐ変えられる。V1ではモードを変えるのにメニューから選ばなければならない。

しかも、PSAMモードでは最後に設定した値を覚えていてくれる。例えば、Sモードを飛行機撮影用にした上で、オートモードで地上展示を撮影するような使い方ができる。飛行機が飛んで来たらすぐモードダイヤルをSにすれば、フォーカスエリア、AFモード、連射の設定などがその直前と同じ設定で撮影に入れる。レンズ交換が必要ない場面ならこの、モードダイヤルですぐカスタムした設定の撮影に入れるメリットはより活かされる。

この辺の使い勝手はいかにも手馴れたニコンらしさで、ニコ爺をやめられない理由。V3もこれは継承されている。

操作性は、なにしろそれ優先でデザインされているのでそこそこいい。GPSユニットを装着していてもストロボがポップアップできるとか心憎いと感じる。

ただ、メカシャッターでAF-S及びAF-Aのとき合焦音を消す選択肢がないのは納得いかない。V1のアフタービューが消せないのと同程度に納得いかない。V3でようやく両者が解決(ただしEVFGPSユニット等のアクセサリが排他的となる)。

さて、このV2を購入した経緯だが、そもそもは1 Nikkor 70-300mmを買ったところから始まる。2014年の9月に注文して11月に入手。V1に装着していざ飛行機を、と入間基地に行ったところ、困ったことに飛行機の動きをピントが追ってくれない。AF-Cを選定しているにもかかわらず。AFエリアをターゲット追尾にしてもダメ。

で、当時の最新機種V3を買わねばならないかと調べていたところに、V2と10-100mmの便利ズームのセットが売られているのに気づいた。しかも、10-100mmのレンズを単体で買う場合に比べて、V2とのセットはプラス3000円程度。V2ボディたった3000円。レンズもほしかったのでもうポチるしかない、というので購入。

10-100mmはそれより前に、J3とのセットだとレンズより安いという現象が起きていたのだけど、J3は別に欲しくないので見送っていた。

そしてさっそく飛行機を撮りに行った。

http://glemaker.hatenablog.com/entry/20141115/p1

↑がニコン1V2の飛行機デビュー。AFは飛行機を追える。これは確実。

ただし、EVFの方にコストダウンが大きかったせいか、今度はフレームが飛行機を追えないという事態になった。その理由はおそらくEVFのタイムラグ。V1とV3は比較的動いてる物体も追えるので、V2だけが残念なことになってる。

とはいえ、動きが予想できる被写体であればこれぐらいは撮れる。

さて、最後に画質。

1000万画素のV1から1400万画素に増えたV2。ローパスフィルターを持たず、ベースのISOが100から160になって解像度も高感度耐性も向上しているという売り文句。

結論から言うと、ノイズが多くて等倍鑑賞ではがっかりする。

ニコン1はJ5以外どれもややざらついてる印象があるが、V2は一番それが目立つ。

例えばこの写真から等倍で切り出すと、

同じようにピクセル等倍にしたV1の写真が以下。

V3だとこちら。

V2はSNSで写真を披露する分には問題ないが、撮影画像をそのままネットに上げるのはあまりしたくない感じ。

以下V2の外観写真。

カメラの方が主張が強くて10mmf/2.8が似合わない。

正面から見ると角ばったデザインから「ニコンの白いモビルスーツ」と言いたくなる。まあ不人気の白をわざわざ選ぶ方もたいがいだが。

ダイヤル装備は使いやすい。V3ではサブコマンドダイヤルもついてさらに改善。

ストラップに着いている黒い袋は赤外線リモコンのケース。めったに使わないけど邪魔にもならないので持ち歩いている。

黒いのは液晶ディスプレイ回りのみ、というV1からかなり変わった背面。モードダイヤルも勝手に回ったりしない。

普段使ってる形態。GPSユニットGP-N100を装備、レンズは10-100mmf/4-5.6。花形フードは「別売」。2000円ちょっとする。それでもいろいろな場面で使うのでフードはレンズの保護に有用。保護フィルターも装着。

なお、決して乱暴に扱っているわけではないが、何度か落としたことがあって、気がついたらトップカバーに欠けとひび割れが。V2だけトップカバーがエンプラ。あと、隙間から見たところ、防滴のシーリングはないらしい。小さいので傘でおおむね雨はよけられる。
以下は今日撮ってきた写真。

10-100mmは歪曲収差があるが、V2以降は補正がかかるのでまず気にならない。

V2の10-100mm。

V1の10-30mm。

違うと言えば違うし、このサイズではどっちでもいいといえばどっちでもいい。

V2の10-100mm。

V1の10-30mm。

オートモードの色温度の選定がカメラによって微妙に違うようだ。

ニコン1は現在J5とAW1だけが販売されている。J5はミラーレスとしてはコンパクトでまた値段も割安、AW1は水中撮影が可能なレンズ交換式カメラとしてほぼ唯一の現行機(ただし水中でレンズ交換はできない)。

今後ニコンから新しいミラーレスカメラが発売されるのは確実と思われるが、それがニコン1かどうかはまだ不明。ただ、1インチのカメラでDLを中止し、ニコン1が残っていることから、ニコン1はまだまだ続いてゆくと思っている。そう遠くない先にSnapBridgeに対応したJ6が出るのではと考えているし、高級路線のV4もいずれ出ると期待している。

そうでなくても、電磁絞り、ステッピングモーター沈胴式レンズ、DL用EVF(アクセサリーシューがニコン1専用でなくなったので、他のフォーマットのミラーレスカメラが出る場合でも流用可能)など、ニコン1の開発から派生して他のカメラに取り入れられている要素は少なくない。ニコンの製品のメインストリームはデジタル一眼レフなので、その傍流のニコン1は様々な試みがなされてきたことが分かる。それがニコンのカメラ全体にいい影響を与え、また、それがまわりまわって新しいニコン1のカメラが出る、という良好なループが形成されるならとても楽しいことだと思う。

ニコンのいろいろな試みが詰まったカメラ、ニコン1V2は、形は変だけど面白くて使いやすくて、ただちょっとノイズが残念なカメラ。まだまだこれからも使ってゆきたい。