『宇宙よりも遠い場所』STAGE09「南極恋物語(ブリザード編)」
ストーリー
流氷の間を進むペンギン饅頭号。4人は藤堂吟隊長が花を持って甲板を歩くのに気づく。報瀬がそれを目で追っていると、「好きなんです!」と財前から唐突に告白される。
財前が藤堂吟隊長を好きになったので相談に乗ってほしいと。改めて鮫島料理長と相談に来て、報瀬が隊長と知り合いだから仲を取り持って欲しいという。
報瀬は、ただの知り合いという以上では特にないという。では次に隊長に話を聞こう、となるが、報瀬はそれに激しく抵抗する。
一方、吟はかなえに報瀬の話をする。2人は古くから知っているが、あまり話をする間柄ではなかったという。お互い距離があり、今更話すこともないという吟に、かなえは、母のことをきちんと話するよう勧める。
吟は、貴子が行方不明になった時も隊長だった。雪上車がブリザードに襲われているとき、彼女が消息を絶った。貴子の救出を諦め、犠牲者を出す形で前回の観測を終えたのは、吟の判断だった。
一方、報瀬抜きで動画取材した結果、吟隊長にとって財前は「雲みたいな人」という答えだった。
迎船長も吟と報瀬がきちんと話しをするべきだと言う。吟は、報瀬が自分を恨んでいると考えている。
そして、吟と報瀬が話をする機会が来た。吟は自分を憎んでいるのかと訊く。
「憎んでません」と答える報瀬。吟に落ち度がないならそれでいいじゃないかとも。
それが本心かと聞く吟。それに対し、どう感じるのが正しいのか、そこからがまず分からないと報瀬。普通に南極観測に出かけた母が、帰ってこなかった。学校に通う日常で、母だけが消えた。死んだはずと言われても、それをどう感じたらいいかさえ分からない。そんな宙ぶらりんな毎日がただ続いていたと涙声で語る。それを変ええたくて、「宇宙よりも遠い」南極に行くんだと。
そのとき、大きい音と揺れが。船がついに凍った海にぶつかった。「砕氷」が始まる。
一方、財前の恋の行方は…
視聴コメント
- 船上長縄跳び大会とか小学校の長縄跳びよりシビアなスポーツが世界にはあるんだな
- 「死ねばいいのに」www
- 幼女報瀬(もどして)
- 吟隊長は子供はいない(未婚とは言ってない)
- 貴子の殉職を伝えに来たのが吟隊長なんだよな
- 「雲みたいな人」で「上層雲と中層雲と下層雲と違うし」とふたたび松岡氏のマジレスw
- 今回回想シーン長め
- 幼少期からの知り合いでよく家に来ていた母の友達が、母の行方不明を伝えてきた当人というのはつらい
- 報瀬のモヤモヤした状態が、船が氷にぶちあたった場面と重なるのだな
- そして何度も前進後退を繰り返して氷を砕く報瀬
- 「「「行け!」」」
- 砕ける氷
- なかなかの爽快感
- 貴子は夜に雪上車から遭難
- 「きれいだよ、とても」と無線をよこす
- 多分それが最後の交信
- 南氷洋まで来て、藤堂吟隊長の目に涙が
- 財前、鮫島に恋するw
- 氷の上に降りてもいいという。「半径5mまで」
- しかし、彼女たちにとってそれが初めての南極
- で、出てくる言葉が
- 「ざ ま あ み ろ ! ! !」
- マジ言いやがったwww
- 後ろ姿は泣いてるみたいだったのにまったくw
- それも船全員かよ!
解説
陸地はもう少し先だけど、ついに南極に到達した。
半径5mとはいえ、タラップから氷の上に降りられる。多分、5mより先は氷が一体となってるか分からず、下手すると漂流する事態になるんだろう。
その第一声が「ざまあみろ」かよwww
この爽快感はたまらない。
小淵沢貴子が3年前に行方不明になり、突然日常にぽっかりと母の分の穴が空いた報瀬。母の死を実感できず、モヤモヤした日常が続くという。家族の死を、死の実感がない状態の家族の不在というところにフォーカスしたのはさすがだと思う。
並行して、吟も貴子の捜索を諦め、しかも最後の交信を聞き、犠牲者を出す形で隊の帰還を決断しなければならなかった。日本に帰ったら貴子の家族にもその事実を伝えなければならない。大人組のつらい事情もしっかりと描いている。
報瀬はモヤモヤしていて吟に会いずらい。吟は、自分が貴子を死なせたのだから恨みを買っているはずで、報瀬に会いずらい。
それでも報瀬は自分の隊に加わって南極を目指している。
会いずらいなら会わないでいい、という行動をこの旅は許さない。
2人の気まずさと心のモヤモヤを、氷の海にぶちあたる船で見える形にして表現しているところもさすが。
そして、砕氷船ならではのラミングで氷を砕く。報瀬と吟のモヤモヤした気持ちと一緒に砕く。満載排水量22,000tの重さで砕く!
見ていて一緒に「行っけぇぇぇぇ!」と心で叫んだ。
ペンギン饅頭号(元しらせ5003)の船内がメインの回はここまで。
砕氷艦しらせ(5003)はリアルでは海上自衛隊が南極観測任務のために保有する艦艇。ユニバーサル造船舞鶴事業所で建造。2008年4月16日進水。2009年5月20日就役。
基準排水量12,650t、満載排水量22,000tは、同じ年に就役したDDHひゅうがに対し基準排水量はやや小さく、満載排水量はこれを超える、当時海上自衛隊最大級の船。
南氷洋のその先の昭和基地に到達するため、ラミングにより氷を砕く砕氷艦。
砕氷艦なので、船体がそれに適した形になっていて、さらにフィンスタビライザーをもたないため、外洋ではよく揺れるとのこと。それが8話のあの展開になる。
推進機関はディーゼルエレクトリックで、ディーゼルエンジンで発電し、その電力を使ってモーターによりプロペラを回す。エンジンとプロペラの間に複雑な歯車は不要になり、モーターは逆回転も容易に可能なので前進後進も簡単に切り替え可能。
ディーゼルエレクトリック推進はしらせ5002で実績を積み、5003からは統合電気推進となり、動力用のディーゼルエンジンが艦内の他の用途の電力も担う。
電気推進はしらせ5002が直流モーターだったのに対し、5003は交流モーターで、インバーターにより回転数に応じた交流電流を生成する。要するに電車やハイブリッド車と同様の高効率の推進システム。
検索したらこんなPDFを見つけた。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jime/45/2/45_206/_pdf/-char/ja
しらせ5003は現代の船らしく、環境にも配慮し、昔の船ならそのまま海に捨てていたであろう廃棄物も船内で処理するようになってる。汚水は海に流す前に浄化し、固形物は船に保管して持ち帰る。
『Febri』誌の記事によると、南極に着くまではくすんだ色合いにし、南極では強い日差しを意識した鮮やかな色合いにしたという。そう思って見ると確かにこれ以降色合いがすっきりしてる。
人物の光の当たる側が白い縁取りになっているのも、南極の強い日差しをイメージしたという。
9話は南極に到達する直前。長い旅のゴールを前に、問題を解決するための障害を取り除く話。
まずは報瀬と吟の間の壁を、氷を砕くシーンに重ねて粉砕。
そして報瀬がやりたかった「ざまあみろ!」を全員で。女子高生4人と、民間観測隊の大人組の気持ちが完全に同調する。
そして次回からはいよいよ南極大陸に到達。
この辺から年度末で忙しくなってきたので、遅めに帰ってきて毎回生で見ていた。BS11では火曜日の23:30~の放送のため。その後でニコニコ動画でもう一度見て、録画は見直さなかった。なので、ストーリーのところをノートPCに打ち込みながら見たのが録画の初視聴になった。
で、時間を置いて改めてみたら、南極に行くことで女子高生4人の色々なことが解決してゆくという展開だった。まさに、目的地を目指す旅の物語。
欲を言えば、全13回ではなく、もっと話数を確保できていればよかった。それでも、オリジナルアニメとしては取材などの準備も予算もたっぷりで、非常に恵まれた作品だと思う。それはいしづかあつこ監督や花田十輝氏らが提示する作品の企画が魅力的だったからだろう。そういう制作のためのリソースを確保するところもアニメスタッフの力量のうち。
関連リンク
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