『凪のあすから』第二話「ひやっこい薄膜」
ストーリー
翌朝。まなかの膝から呪いの魚が去っていった。紡が気に入っていた魚。こんどは呪いが解けたのを知られたくなくてハンカチを巻いて学校へ。
光は姉のあかりが働くサヤマートでいたずらしていた女子小学生2人と遭遇。海村の人を激しく嫌ってる様子。要も通りかかる。
学校。恒例の「おふねひき」のお祭りが中止になるというので、海に捧げるおじょし様を今年は生徒で作ろうと先生が提案。紡が志願。対抗して波中の4人も手を挙げる。
帰り道、埠頭まで男に車で送ってもらうあかりを見かける。完全に恋仲でショックを受ける光。陸の人と結婚すると海村から追放される厳しい掟がある。冷静さを失って波中の4人が仲たがい。
翌日。学校の裏山の焼却炉にゴミを燃やしに来たちさき、そこで地面が掘られているのに気づく。追加のゴミを持ってきた紡が、それは昔あった池を掘りなおしてると説明。
夕方、うろこ様に「呪ってください、お願いします」と頼み込むまなか。そこに女性の大声、男達の荒ぶった声。両腕をつかまれて連れてこられたのは…
視聴コメント
解説
サブタイトルがそうであるように、胞衣(エナ)に守られている海の人、がこの回のキーワード。
胞衣は後産で娩出される胎盤や臍帯などの総称。この作品の中では、このうちほぼ羊膜と等しい意味で使われている。
現生の脊椎動物では、両生類までは羊膜を持たない。このため、卵が水から出ると胚が乾燥して死んでしまう。両生類は丈夫な四肢を得て陸に上がれるようになったが、卵〜幼生の間は水中に棲むことが必要で水場から完全に離れることが難しかった。
(羊膜は胚を乾燥から守るというより、羊水を保持して胚の環境の変動を抑えるという効果の方が大きいようだ。卵の陸上進出は卵殻や卵白の方が貢献しているらしい。というのが国立科学博物館の生命大躍進展を見たりwikipediaを読んだりして分かった)
古生代のあるとき、羊膜を獲得した種がいて、陸に卵を産めるようになり、四肢動物は水辺を離れ、完全に陸で生活できるようになった。そこから哺乳類、爬虫類、恐竜−鳥が進化して陸地に大型の動物が沢山棲むようになった。また、一部は海に戻っていった。こんどは海に卵を産めなくなったのでペンギンなど相当の苦労をしているが話が長くなるので先に進む。
人間は胎生だから羊膜が乾燥から胚を保護する機能を果たしているわけではないが、内側を羊水で満たして胎児を守っている。また、母親と子供は遺伝子が違うため、母親の免疫系から胎児を守る役割もある。
この作品での胞衣は、人間の身体を羊水の中の胎児と同じ状況に保護し、また、海の中でガス交換を粉って人が窒息しないようにする役割を持っている。胎児が窒息しないのは胎盤で母親の血液から酸素をもらっているからなので(栄養等他の物質もやりとりする)、胎盤の機能もあるようだ。それもあって、羊膜ではなく胞衣と呼んでいるのだろう。また「エナ」という言葉も神秘的な響きでいい。
羊膜は半透明の薄い膜なので、アニメの表現はなかなかよくそれを表している。
物語的には、この話で光がまなかの「胞衣」でいたいと強く願っていることが示されている。しかし、その気持ちとはうらはらに、まなかは胞衣から外へ出たいという願望があるのも分かる。意識してそうなのかは不明だが。1話で濱中の制服を着ていたのも、陸の世界に踏み出したい気持ちの表れと指摘されている。
一方で、ちさきが4人の関係が変わらないことを望んでいることも示される。ちさきとしては4人が胞衣に包まれて、いつまでも変わらず海で楽しく暮らしていたい。多分このときは本心からそう望んでいる。
なお、陸に住む人は生まれるとき胞衣を脱ぎ捨ててしまうという。リアルの人間と同じ。海の人は胞衣が完全に乾燥すると命にかかわるようなので、胞衣をなくした人々は陸の環境に適応した遺伝的形質を持っていると言うことができる。
脊椎動物の陸への進出についてはこの本が面白い。羊膜については後ろのほうにちょっと出ている。
声優の話とかしたかったけど長くなってしまったのでまた後の話のときに。
手足を持った魚たち―脊椎動物の上陸戦略 シリーズ「生命の歴史」〈3〉 (講談社現代新書)
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