翼を90°曲がったてこで例えて、高さが低いと力が大きく苦しい、高いと楽になる、というのが前回の話。
図のバールのようなものが止まった状態にあるためには力のつり合いが要るから、それを図にするとこうなる。
もう少し翼っぽい図にすると、
こんな感じ。付け根には揚力に対する反力が作用するけれど、それは水平方向の力に比べればずっと少ない。
また、翼の上と下で逆向きに水平方向の反力が作用することにも注意。
翼の高さを倍にすると付け根の水平方向の反力が半分になる。
厚い翼は見た目重そうだけど、実は材料が少なくていいので軽くなる。
ここで今日のお題、「ブレンディッドウイングボディ」。
翼と胴体をなだらかにつなげた造形で、F-16戦闘機が有名。
ちょうど自由に使える図があるので示してみる(著者権は私にあります)。
デッサンが微妙におかしいとかはひとまず置いて。
主翼の上面が背中のくびれとなだらかにつながっていて、主翼の前と後ろにも水平な出っ張りがある。これがブレンディッドウイングボディ。
この部分の役割を前から説明していくと、
- ストレーキ(高迎角時に渦を発生させ失速を遅らせる。着陸速度を遅くしたり運動性を高めたりする)
- バルカン砲収搭載位置
- 主翼と胴体の結合部
- 水平尾翼取り付けアーム(後ろに下げて重心から離せば面積を小さくできる)
- エアブレーキ
これらを翼断面に近い形で結んで抵抗を小さく、揚力も出るように、というのがこの形の狙い。
F-16の断面図はざっと書いてこんな感じ。
主翼は超音速機なので薄く作ってあるけれど、ブレンディッドウイングボディにして主翼の付け根で高さを高くしている。そして高さの高い位置で胴体と結合しているので、結合ボルトに作用する力は、薄い位置で結合するより少なくて済むようになっている。というか付け根ではボルトのスペースがない。
F-16の場合は胴体の真ん中にエンジンの空気の通り道があって主翼の桁を通せないので、主翼を左右別々に作って胴体の側面に取り付けるようになっている。
先日到着したF-16ですが、当博物館の51機目の航空機となりました。Ready for Lift Off!#太平洋航空博物館パールハーバー #ハワイ #F16 pic.twitter.com/78W3ULNW1O
— 太平洋航空博物館パールハーバー (@PacAviation_J) 2016年8月4日
こちらはその、F-16の胴体の主翼取り付け部が分かる貴重な写真。
戦闘機は翼とエンジン以外はできるだけ正面から見えないようにしたいけれど、そんなギリギリの設計をすると後で出っ張りをいろいろつける必要が出てくる。それなら最初から容積を確保することにして、それが空力的にも望ましいように配置できればそれに越したことはない。F-16のデザインはそれをうまくこなしている。
それでも最近のF-16はドーサルスパインとかコンフォーマルタンクとかゴテゴテつくようになっていますが。
本日はこの辺にて。