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恐竜博2019

国立科学博物館の恐竜博に行ってきた。

dino2019.jp

特別展に入ってすぐの展示は恐竜ルネサンス。象徴的に置かれていたのがデイノニクスの後脚の化石。このかぎ爪からフィル・カリー博士らが「恐竜は今まで考えられていたような変温動物で愚鈍な生き物ではなかったのでは?」と考えるようになり、以後、中生代の地上を活発に生きていた恐竜の研究が大きく発展することになる。

恐竜ルネサンスは、「恐竜が絶滅しなかったら人類のような知的な種も現れたのでは」という想像力を掻き立てた。そうして考えられたのがこのディノサウロイド。

長い中生代を通して人類のような知的な恐竜は現れなかったことから、むしろ人類が極めて特殊な動物ということになるけれど。

それはそれとして、ディノサウロイドの模型は文化的に非常に貴重なものだと思うので、それを直接見られて大変感動した。

恐竜ルネサンスは、羽毛恐竜の発見で新たな段階に昇る。写真は最初に発見された羽毛恐竜のひとつ、シノサウロプテリクス

恐竜は鳥のように恒温だったことが恐竜ルネサンスを通して解明されつつあったが、これでその事実が確定した。また、恐竜の多くが羽毛をもっていることが判明し、鳥と恐竜の関係がますます深いものと認識されるようになった。

そしてこれはアンキオルニスという、恐竜というより中生代の鳥の化石。この化石は羽毛の色が判明し、それまで「絶対に分からない」とされた恐竜の色についても解明されつつある。

そしてこの恐竜博の売りの一つ、ディノケイルスの全身骨格。『NHKスペシャル』でも放送された通り、巨大な前脚だけが知られていた恐竜は、全身が見つかると、やはり前脚が大きいこと以外は案外普通の恐竜だった。

ディノケイルスと対峙するように展示されていたタルボサウルス。ユーラシア大陸に分布していたティラノサウルスと近縁の肉食恐竜。

展示は日本の中生代の化石コーナーへ。写真は北海道で全身の80%が発見されたというカムイサウルス。

ひところは「日本は海だったから恐竜の化石は出ない」と言われたが、日本も大陸の一部だった時期があることが判明して、恐竜の化石が産出している(ムカワリュウそのものは海成層で発見)。そのほか、海洋プレートに乗って運ばれた岩石も日本を形成するので、海生爬虫類の化石も多く産出している(既に広く知られているように、そういった爬虫類は恐竜ではない)。

そして展示の終盤にティラノサウルス

中生代の終わりを示すK/Pg境界層を境に生き物がどう変わったかという展示。カメ、ワニ、哺乳類といった絶滅を生き延びた生き物もどう変わったかが示されている。

展示を一通り見て出口に進むと、化石のクリーニング作業が見学できるようになっていた。

恐竜の化石は、人類の古代の遺跡のように土の中から出てくるのではなく、岩石の一部になっている。このため、写真にあるようなツールで慎重に周囲の岩石を取り除いて化石を取り出す。

日本でも本格的な化石のクリーニングが行われているというのはなかなか感慨深かった。

世界的に見て日本人は恐竜が好きで、なんだかんだ言って恐竜博が定期的に行われている。その甲斐あってか今では恐竜研究の先端に日本人も関与している。

中生代の自然を理解することは、温暖化や隕石の落下などが気象にどう影響し、生き物がどうなるかを示している。温故知新のことわざ通り、恐竜の研究は現代を生きる人類のためにも有益な情報を与えてくれる。