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kindle洋書の世界

洋書は日本人にとって主に英語の教材として認識されていると思う。

同時に、ペーパーバック1冊2000円からの贅沢な世界でもある。

それが電子書籍の登場で全く違う様相となっている。

こればっかりは、国際企業のAmazonに足を向けて寝られない。kindleの洋書は、物理的な本を輸入するコストがかからないので安い。著作権が切れているものは100円+税からある。いや、他のサイトを回れば著作権が切れた洋書は無料で手に入る。しかし、kindle洋書はkindleアプリで読め、しかも100円+税。これはもう実質無料と言っても過言ではない。

そうでない場合も1000円を超えることは稀。そんな価格では払わない方が申し訳ない。しかもたまにキャンペーンで格安になっている。

kindleアプリで洋書を薦めるのはなぜかといえば、単語をタップすれば辞書から訳語が表示されるということに尽きる。このため、中学生レベルの英語の初歩が分かっていれば、あとは単語をタップして訳を確認しつつ内容を理解できる。

ある程度読んでくると、英語とは所詮は決まった言い回しの集合体にすぎないことが分かってくる。これは日本語も同じ。文章表現というのは結局は、決まった言い回しに自分の思いを乗せることにすぎない。文章を理解するということは、決まった言い回しの中で作者が行った改変部分を見つけ、それを文脈に乗せて理解するということにほかならない。

学校で習った文法は何だったのか、ということになる。確かに文法は意味がある。言語の中から厳密な理論を見出すことができる。しかし、結局のところ、幼児でも使う言葉にそんなにちゃんとした理論などありはしない。言語の九割は決まった言い回しとその若干の改変。決まった言い回しを覚えてしまえば英語といっても怖いことはなにもない。

とりあえず年に2,3冊の洋書を読んでTOEICは570点ぐらいは取れる。ヒアリングをNHKのアプリなどで強化し、試験中にシャーペンの芯が出ないといったトラブルを回避すれば600点は軽いだろう。洋書を読めばこれぐらいは取れる、と思うのも洋書を読むのにこの程度の英語力で十分と思うのも自由。

言いたいのは、日本語で不足していた情報が英語の世界にある。ただそれだけ。

あとは何冊か既読の洋書を紹介してみる。

Spitfire Pilot (English Edition)

Spitfire Pilot (English Edition)

バトル・オブ・ブリテンスピットファイアパイロットの手記。日記をもとに著者の死後書籍化されたらしい。100円ぐらいで購入したのに今見たらえらく高くなってる。著作権は消失しているはずなのだが。

バトル・オブ・ブリテンの本は複数あるが、この本が一番読みやすい。イギリスの一番の危機を救った「かくも少数のもの」の実体が分かる。

同時に、イギリスの児童の読み物がこれ系統というのも重要な事項。国家総動員体制で厳しい制約の中過ごした英国人。これは実は日本もあまり変わらない。最大の違いは勝ったか負けたか。負けた日本は児童から戦記物が遠ざけられ、イギリスは逆だった。

こんなのを読んで育ったらゴーグルかけて犬小屋にまたがるのも当然。

イギリスの危機とそれを救ったパイロットの物語を本書で詳細に読むことができる。こんな情報は日本語ではそうそうない。

表紙がほぼ全ての、トーネードパイロットの手記。

冷戦時代の西ドイツ駐留のトーネードパイロットの心情など、日本語でどれほど読めるだろう。

英語ならたっぷり読める。

著者はエアロカデットという英空軍の下部組織の少年航空団的なところで飛行機の操縦を習い、現場叩き上げでトーネードパイロットからさらに参謀的な地位にまで至っている。日本で同様のキャリアパスがないことについていろいろ考えさせられる。

トーネードの前は偵察機型のEEキャンベラに乗っていて、マルタ島から離陸してソ連の航空機搭載護衛艦キエフのを撮影する任務などをこなしている。情報将校から「嵐で波が高いから、『ハル』が見えるかもしんない。ちょっと撮ってきて」と任務を与えられ、激しい横風の中離陸、任務を達成するも着陸も無茶な横風、という体験はスリリングで手に汗握る。有名なキエフとF-4Kのツーショット写真もこの人の機による撮影。

正直、これほど情報量の多い本が日本語で読めないのは理不尽な思い。

Hostile Skies (English Edition)

Hostile Skies (English Edition)

フォークランド紛争に従事したシーハリアーパイロットの手記。

世界の傑作機』のシーハリアーの号にもインタビュー記事がある。イギリス海軍パイロットにして詩人という人。任務中に家族に宛てた手紙、「ソウルメイト」たる西ドイツで知り合った若い女性に宛てた手紙、それに著者の詩も差し込まれている。

しかし、地の文はリアルな戦争の世界。日本語資料では分からないフォークランド紛争の詳細が描かれている。

フォークランド紛争そのものは日本としても非常に強い関心を持っており、防衛省のサイトに詳細な研究結果が上がっている。

www.nids.mod.go.jp

しかし、空母が常に抱える敵潜水艦に対する恐怖や、敵の攻撃機が空対艦ミサイル「エグゾセ」を放った後の艦内の様子などは多分書いてないと思う。

ハーミズから見た燃える輸送船アトランティック・コンベアー、その船がなぜ沈まなければならなかったのか、沈んだ結果イギリス軍にどんな影響があったのか。そういったことも詳細に語られている。

電子書籍版は戦後にフォークランド諸島を訪れた記事も乗っている。著者は大事にしていた妻と別れることになり、再婚した妻と現地を訪れている。戦争により歪められた著者の寂寥な心が描かれていてしんみりした気持ちになった。

とりあえず3冊ほど紹介してみた。

「本を読むには人生は短すぎる」ということを、洋書まで含めると如実に実感できると思う。