Great Spangled Weblog

コメントははてなにログインすると可能になります(SPAM対策です)

ニコン双眼鏡スポーツスターEX 8x25mm

双眼鏡の記事を独立して書いてなかったので改めて。後悔のない双眼鏡選びについても少し。

2012年に購入して今も使っているのがニコンスポーツスターEXの8X25mm。

www.nikon-image.com

ニコンは戦前から双眼鏡を作っていて(戦前の得意先は日本海軍)、戦後も双眼鏡で行くかカメラを開発するかという分岐点を通過してきた。双眼鏡だけを作っていたら今のニコンはなかったと断言できる。ニコンの双眼鏡は性能はしっかりしていてツァイスほどは高くないという立ち位置で今も人気があるが、双眼鏡はカメラに比べて買い替えサイクルが長く、すぐ市場が飽和して売り上げが伸びなくなる。双眼鏡だけで大企業を運営するのは難しい。

スポーツスターEXはニコンブランドとはいえ、中国製で驚くほど安い。カメラ量販店で税込み9000円弱で買える。

口径25mmと小さくダハプリズムで鏡胴は直線なので、2ヒンジで折りたたむとかなりコンパクトになる。

接眼部は回転繰り出し式で、畳むと眼鏡で見るのにちょうどよく、引き出すと裸眼にちょうどいい。

8倍と10倍の2つのシリーズがあるが、これは、「倍率が高い方がお得に感じるのでラインナップに加えた方がトータルの売り上げが伸びる」という販売戦略と推測される。経験的には8倍と10倍の差異は小さく、8倍では見えないが10倍ではよく見える、というシーンはちょっと考えられない。一方、10倍は視野が狭くなり手振れは2割増しになる。

選ぶなら倍率は8倍。同じような設計で2通りあるなら倍率の低い方を選んだ方がいい。手持ち前提なら8倍より大きい倍率はいらない。

8倍のスポーツスターEXの特徴は広い視野。実視界8.2°はかなり広い。メガネを介して見ると視界が蹴られる。つまりこれ以上の視野角は実用的ではない。視界が広ければターゲットをすぐに見つけられる。野鳥を見るにはこれは重要。

ズームの双眼鏡は人気があるが、ニコンの8-24x25など8倍時の視野が4.6°しかない。見られる面積は径の2乗に比例するからその差は約3.2倍になる。ズームを選ぶとその時点で固定倍率の1/3の広さしか一度に見られない。また、複雑な光学系はコストを上げ画質は下がり、ズームして拡大しても暗くなる上に手振れでよく見えない。

大メーカーニコンでもズーム双眼鏡が大衆向けのコンパクト機しかないのは、「市場がズームを求めているので出しています」以上の意味はないだろう。後悔しないためには固定倍率を選択する方がいい。

スポーツスターEXのもう一つの特徴は窒素ガス封による防水仕様。雨で浸水することはなく、ひどい汚れはさっと水洗いができる。それ以上に重要なのは、双眼鏡の内外で空気の移動がなくカビの胞子が入らないので、中がカビない。カメラのレンズと違い防湿庫は不要。保存場所に迷うぐらいなら日常的に持ち歩けばいい。

主力の双眼鏡として長く使い、野鳥、コンサート、天体(ガリレオ衛星ぐらいは見える)、飛行機などを見てきた。

去年うっかりソフトケースをなくしてしまい、むき身で使ってきたが(キャップも使わない)、これといって不具合はなかった。

ただ、ネットの評価で「表面がベタつく」というのがあり、確かに柔らかい素材だがそんなことは、と思ったものの、最近はうちのもベタつくようになってきた。さらに材料の劣化が進んで一部が剥がれてきた。

これはもうさすがに寿命と言っていい。

光学系はまだまだ使えて、星とか見ると光軸の精度が辛い部分はあるが(要するに星がちょっと二重に見える)、それ以外の用途には問題ないのだけど。

もっと前に使っていたのがビクセンのアスコット8x22mm。これはソフトケースがまだある。

こちらは見た目まだまだOK。

接眼部がゴムで、ゴムを折ると眼鏡用、伸ばすと肉眼用になる。このゴムの折り畳みが面倒であまり使わなくなった。ストラップも細い紐が固定式で不便だった。

裏側。これも防水で中はカビてない。日本製で、1991年あたりで1万円ちょっと。20年後に同じような双眼鏡が中国製の8000円程度というのが、日本を悩ましている長期のデフレというやつ。

双眼鏡が8倍でちょうどいい、というのは、はるか昔に家族で野球観戦に行ったとき、父親が球状の近くの店で8x30mmのノーブランドの双眼鏡を買って、特に不便を感じなかったあたりがスタート。大学で生物部に入り、先輩が皆8x30mmを使っていて、これで8倍が最適、が確定した。

ちょうどビクセンの8x30mmが実視界8.5°で登場し、覗かせてもらって視野の広さに驚いた。その後バイトして自分の金で買える、となって選んだのがニコンの8x30mm。これも実視界8.3°。まだ実家のどこかにあるはず。

この双眼鏡はマイナーチェンジを繰り返して今も売っている。実視界は8.8°になってる!

www.nikon-image.com

ここで、双眼鏡のノウハウとして先輩に教わったのが、「キャップは外してどこかに保管しておけ。ソフトケースに入れておけばレンズは傷つかない」。現地で4つのキャップを管理するのはしんどいし、キャップなんてつかわなくても実際問題ない。

ただ、ポロプリズムの昔ながらの双眼鏡は重くてかさばる。学生の頃はカメラを持ち歩かなかったからよかったが、今は一眼カメラも一緒に持ち歩く。ということで口径20mmクラスの双眼鏡を主に使っている。

ビクセンの8x22mmは、今でこそ光軸がずれて鳥が2羽に見えるので長期保管状態だが、買ってすぐに阪神大震災があったので、現場の仕事には持って行った。大阪支社に行くと「双眼鏡誰も使わないんだよ」と口径40mmのズーム双眼鏡がデンと置いてあり、その重さ、大きさで「そりゃこんなの持って行かないよ」と思った。一方、8x22mmというささやかなスペックでも、現地では双眼鏡があるのとないのとでは大違い。地上を歩きながら高架橋の壊れ方を見るにはかなり重宝した。

双眼鏡はあるのとないのと大違い、という体験はけっこう皆してると思う。ここで、ちゃんとしたメーカーのそこそこの値段の製品を選べば、ズームや手振れ補正など欲をかかなければ、後悔することはまずないはず。最初の1台が変なのだったとしても、その経験を活かして次にいいものを買えばいいと思う。2台めを買うのに躊躇しないでほしい。今なら双眼鏡は食っていけなくなるようなとんでもない金額ではない。