Great Spangled Weblog

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SAIからクリスタに移行した話

液タブを購入したときにCLIP STUDIO PAINTの1年分のライセンスがついていた。

そこで、何枚かクリスタで絵を描いてみたが、このときは結局SAIに戻ってしまった。

クリスタから撤収した最大の理由は、「消しゴムツールのサイズ変更がSAIと同じではない」ということ。

デジタルペイントの特徴は修正が無限にできることで、これは要するに、「描くことと消すことが等価」ということ。

ワコムタブレットであれば、ペン側で描いて、消すときはペンを上下逆にすれば尻の方が消しゴムなのですぐ消せる。描いたものを消すことは何も悪くない。特にラフの段階では、太いペンでガシガシ描いてから、消しゴムで不要な部分を消すことで本当に描くべき形が見えてくる。アナログではこうはいかない。

その大事な消しゴムツールが、思うように太さが変えられない。デジ絵を本式にやろうと思ったのはSAIがアナログと似た感覚で描けるからで、それはクリスタに移行しなくても変わらないので、これでいいやと思った。

一方、プロのイラストレーターが使っているツールは、と話を聞くと、「Photoshopが使えれば申し分ない。あとクライアントが認めてくれるのはCLIP STUIDO PAINT」。また、何枚も描くうちにSAIの限界も見えてきてはいた。それではと、今年になってクリスタをちゃんと覚えようと思うようになった。

ちょうどKindle Unlimitedでガイドブックが読めるのも分かり、本とネットの情報で見よう見まねで始めてみた。

消しゴムツールの太さの変更は、キーボードの[]でできると分かった。太さは全般にこれで変えられる。

SAIではペンの太さパレットをペンでタッチすればペンの太さ、消しゴムでタッチすれば消しゴムの太さが変わる。クリスタはペンの尻の消しゴムに関してだけはこれができない。やはりこれはちょっと不便ではあるが、ガイドブックで「透明色」の機能を知った。つまり、ペンで描いたものを消す場合は透明色を選べば、ペンで同じように消せる。太さもペンツールとして変えられる。まさに、「描くことと消すことは等価」を実現する色!

「さすがクリスタこいつはすごい」と思ってさっき確認したらSAIにも同じ機能があった。マジか。知らなかった…。

ガイドブックを一通り見て、おおむねSAI並に描けるようになった、というのはこれ。

背景にはクリスタで選べる多様な筆を使わせてもらった。

ただ、どうしてもSAIと同じようにいかなかったのが筆ツール。「濃い水彩」をカスタマイズしたりしたが、結局は液タブの筆圧検知がうまく機能していなかったと分かり、設定を修正して解決した。「濃い水彩」はデフォルトに戻した。

それではと、ネフレンを新たに描いたのがこれ。

クリスタの機能のおかげで制作ペースも上げることができている。便利なのが、バケツツールが複数のレイヤーを参照して塗る範囲を決めてくれるところ。線画は人物や衣服や髪の毛でレイヤーを分けているが、それでもバケツツールでサクサク塗りつぶしができる。バケツに頼らずやると塗り分けだけで2、3時間かかるが、今は1時間もかからない。

一方、クリスタよりSAIの方が圧倒的に優位にある点が1つだけある。「スポイトで色を抽出する速さ」。クリスタでSAIのつもりでスポイトを使うと、実際に色が抽出できる時刻には既にペンを動かした後で、全然違う色を抽出してしまう。選んだはずの色が選ばれず、違う色で塗ってしまうのは割とストレスになる。これだけはまだ慣れることができていない(その後、クリスタでは「ボタンを離すとき」の色が選定されると分かった。そうと分かればあとは慣れるしかない)。

なぜスポイトがそれほど重要か、をちょっとだけ書いてみる。

デジ絵でアニメ塗りをやる場合、色ごとにレイヤーを変えてベースとなる塗り分けをする。このときは区別がつくように適当な色で塗る。塗り分けができてから、各レイヤーの明度・彩度・色相を調整して、狙った色に変える。

次に、ベースのレイヤーにクリッピングして影やハイライトのレイヤーを重ねる。ベースのレイヤーの色をスポイトで抽出し、HSVパレットで色をどう振るかを考えて色を選択。影なりハイライトなりを塗る。このとき、筆ツールでさっと塗って、「この色がベスト!」というのを見つけたら、それをスポイトで抽出(ペンの人差し指のボタンに割り当ててある)し、他の部分にも塗る。

パレットで最適な色なんてそうそう選べないので、筆で塗ってみて、微妙な濃淡の中からいい色を抽出するということ。これを一連の流れのなかでやるとき、スポイトの抽出に遅延があるとテンポを乱される。

アナログでは絵具を混ぜて色を作るとき、全く同じ色は二度と作れない。デジタルでは絵から好きなように色を抽出できる。これもデジタルペイントならではの機能なので、スポイトのスピードアップは切に願う。

なお、ブログに掲載した絵は下記で制作サイズを公開しています。

www.pixiv.net