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ディファレンス・エンジン

ディファレンス・エンジン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ディファレンス・エンジン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ディファレンス・エンジン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

ディファレンス・エンジン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

原書が出版された当時話題になっていたのでいつか読んでみたいと思っていた本。日本語版が出た頃にはすっかり存在を忘れていたが、このたび文庫化されたので思い出し、手にして読むことができた。

19世紀についてかなりよく考証してあると思う。色々有名人が登場するし、ガジェットも色々よく考えてあるし、メスメリズムや犯罪人体測定学などの擬似科学や、恐竜発見のような科学的イベントなどもうまく話に織り込んである。

だがしかし、すらすらと読み進めることはできたが、大してトキメキを感じることもなかった。小説として、物語の部分で出来が凡庸だったのではないかと思う。第2〜4反復のマロリー氏の冒険譚など、力押しで話が解決してしまってひねりがない。第1反復で伏線を貼ったラドリーのカードはフランスの「エンジン」を狂わせはしたが、それだけのことで、それで世界がどうこうなるということもなかった。

せっかく目玉アイテムとして出てくる蒸気コンピュータも、ストーリーに大して絡むこともなく、その存在が19世紀の人々を激しく変えることもなく、SFとしての読み応えに乏しかった。

ここは逆に、19世紀時代感覚でコンピューターの方を大幅に改変たというのが正解か。19世紀時代感覚こそがセンス・オブ・ワンダーとなるべきなのだろうが、そこにそれほどの魅力を感じなかったのは、私の方の興味関心の問題で、作品の出来とは別のことがらのように思える。

上巻の巻末には伊藤計劃氏、円城塔氏の共著による解説がつくが、これが意味不明で解説の体をなしていない。