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『殺戮の天使』ネタバレ考察:作品全体について

話を短くまとめる

『殺戮の天使』についてつらつらと書いてきたが、どういう話かを思い切り省略して書くとこういう話と理解した。

生い立ちの不幸から人を信じること、人を愛することを知らなかった二人が、試練を通してそれを知り、罪を赦されて天国に迎え入れられる話。

といっても、盲目的に神を信じろ、という作品ではない。むしろ作中では神が否定されまくる。

人間が思い描く、人間にとって都合のいい「神」を否定して否定して否定しまくった先に、本当の神が見えてくる、という展開。

また、レイチェルとザックがどんなに相思相愛になったとしても、その先は最善でも天国しかない(地獄にはちょっと前までいた)。

二人が現世で負った罪

これは、二人が現世で重い罪を犯しているため。殺人鬼のザックもそうだけど、レイチェルもかなりやばい。ダニー先生がなぜか(レイチェルを収容した)施設で動物が死ぬという話を始めて、やばすぎてゾクゾクした。父親を撃ち殺したのは正当防衛と言えるが、その後両親と拾った犬と数日楽しく過ごした、という話もやばい。

どちらも、生まれた時から殺人鬼と決められて人生を始めたわけではない。たまたまその素養があったにしても、恵まれた家庭に育てば道を踏み外さなくて済んだであろう程度の話。

ザックの不幸ぶりはレイチェルを上回り、母親の愛人に火をつけられて大やけどを負う。その際火をつけた男も道連れにしている(自業自得だ)。母親はザックを治療する気がなく、違法孤児院になにがしかの金を払って預ける。孤児院では同じような境遇の子供を集めているが、世話らしい世話をせず、死んだ子供は最終的にザックに処分させている。ゲームでは描かれていない要素をアニメでは追加してあって、ザックの成長過程で字を覚えることも殺人が悪だということも知る機会がないということを十分に説明している。

違法孤児院の主である夫妻を殺害してから(当てもなく殺し、奪って過ごす後に)目の見えない老人に保護されるが(8話のアニオリ)、その老人も強盗に殺され、後から来たザックが犯人らを殺す。これが「楽しそうな人間を見ると殺したくなる」というザックの性癖を確定させる。知性が育つ余地がなかったので人から騙されることも極度に嫌い、嘘をつく人間も容赦なく殺す。

レイチェルはザックに会いたかったわけでも、彼を救ってやりたかったわけでもない。ザックも、レイチェルは、B6の住人として殺すべき人物の一人でしかなかった。ただ、今まで命乞いをする人間ばかりを見てきて、自分から殺してくれと言う人間に会わなかった。レイチェルを奇妙な人間と思いつつ、殺さず、外に出るために一緒に行動することにする。

こんなささいな出会いが、物語の中の設定では、おそらく神が用意した(確実に言えるのは作者が用意した)、二人が救われるための糸口。

神は願いを叶えてくれるのか

話が進んでいくと、二人の間に信頼関係が徐々にできてくるのが分かる。

ザックは、レイチェルに死なれると外に出られないから、危険な役目を買って出る。致死量の毒薬を注射しても死なないという特異体質もここぞと活かす。薬の効果でレイチェルを殺したい衝動に襲われても、(レイチェルが今私を殺しちゃっていいの? と問いかけて)「今だけ、俺に殺されるな」と自分を抑える(5話)。それこそ「我慢ができれば、俺はこんなことになってねえ」で、誰かを助けようと思ったことも、実際にそうしたことも、彼の人生ではなかったことだろう。

レイチェルも、いつの間にか、自分を殺してくれるから、ではなく、ザックに生きていてほしいから、彼を助けるようになる。

神がザックの誓いを叶えてやるつもりがあったかどうかは分からない。殺してほしいというレイチェルの願いならなおさら。

そもそも、神は個々の人間の願いを叶えるものなのかどうかも分からない。現実世界でも人の願いが叶わないことはいくらでもある。ここから観察される事実は、もし神がいたとしても、それは人の願いを聞いてくれるような都合のいい存在ではないのでは、ということ。人によっては、願いが叶わないなら神はいないのと同じだと思うかもしれない。ザックの「神なんかこの世にいない」という認識もこのたぐいだろう。レイチェルにしても、神が「ザックに自分を殺させる」という願いを叶えると疑いもしない。

この作品はキリスト教的な世界観でできており、神が存在することが前提で作られているが、人が言葉で願うような表面的な願いを聞いてくれる神というものは描いていない。

秘められた本当の願い

ただ、願いが行動のきっかけになることは否定していない。どんな俗っぽい自己中心的な願いであれ、それを思って行動し、成長することで最終的に神の意志に沿うのであればそれで十分ではないか、というような価値観が見て取れる。

B2まで上がってきた過程でレイチェルとザックは互いに信頼できるバディになっている。テレビ放送は12話までなので、放送を見ていたときは教会で話がついて次は地上に上がってハッピーエンドかな、と思わないでもなかったが、話が進むとそうはならなかった。

B1のフロアで最後の最大の試練が待ち構えている。せっかくザックと信頼関係ができてきたのに、B1に上がるとレイチェルは自分の罪が全部ザックにばれてしまう。

ゲームではB1では、レイチェルが自宅を模した建物に様々な罠をしかけてあって、ザックがその罠をかわしつつ謎を解いていく展開。しかし、アニメではそれはほどほどにして、回想シーンを挟んでレイチェル自身の秘められた過去を明らかにしていく。

前のブログで、レイチェルが「神の奴隷」から、自立した人間として神と向き合うようになると書いたが、それが完成するのはB1のフロア。邪魔をするダニー先生を射殺したり、愛情表現としてザックを殺そうとしたりするなど寄り道をしながら、ブチ切れたザックに諭されて、自分自身のことを自分で決めるということを知る。人は誰もが自分の意思で行動するのであって、神の操り人形ではないと理解する。

そしてB1をクリアし、B2の教会から地上に続く長い長い階段を上る。ヤコブの階段がこの世と天界を結ぶように、「地獄」と現世も長い階段でつながっているということなのかもしれない。

「地獄」は神父が気まぐれに作ったものだと暴露され、レイチェルとザックが脱走したことで役目を終えて爆破解体される。階段にまでその火が及ぶが、レイチェルとザックの信頼関係があればどうということはない。二人のイチャコラが続く……。

途中でダニー先生が横やりを入れてラストへの展開になるが、ダニー先生がぶちまけたレイチェルへの愛が全部見返りを求めるもので、最終的に神父にダメ出しされて終了。神の愛は無償の愛であり、見返りを求めるのは本当の愛ではない。というのを分かりやすく描いたエピソード。

誓いは、約束はかなわなくてもいい

レイチェルはダニー先生に撃たれて意識不明になり、その後地上の施設では本心を語らないので、意識を失う直前に吐露したことが、最終的にこの物語で彼女が見つけた本当の願いだということになる。「一瞬でも望まれて生きて、望まれて死にたかった……」(15話)。

その少し前にザックが、「俺に殺されるまで、生きろってことだ」と護身用にナイフを渡す。「望まれて生き」るというレイチェルの願いは、神が手を伸ばすまでもなく、このときに叶っていることになる。誓いや約束は二人の信頼が本質であり、叶うかどうかはどうでもいいということが語られるよりもっと前に。

ザックはそもそもレイチェルをそんなに殺したいわけではなかったので、既にレイチェルが生きること、そのために彼女を救うことが願いになっていて、地上で彼女が救急搬送された時点でだいぶ叶っている(なお、地上が、時間を巻き戻してガードナー家事件のしばらく後の現実世界につながったのか、二人が過ごした後の時間に仮想の地上世界を神が構築したのかははっきり分からない)。

神が何かをするのは結局最後の最後ということになる。裁判にかかって死刑判決を受けたザックは、多分処刑されたのだと思う。そうやって罪を祓ったあとに、その魂がレイチェルの部屋の窓を叩く……。

これ以上は多くを語るまい。とても美しい結末だと見るたびに思う。

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『殺戮の天使』ネタバレ考察:神様が、そうおっしゃったから?

レイチェル・ガードナーがザックに自分を殺してくれと願う。なぜ自分で死なないのかと問うザックに、

「自殺は、駄目だから。神様が、そうおっしゃったから?」

と答える(2話)。

普通に考えれば神を持ち出すまでもなく、やってはいけないこと。それを「神が許さない」と答えるので、「ああ、レイチェルはカトリックの家庭に育ったのか」となる。「聖書で読んだ」程度ではここまで強い信念にはならないし、直近で読んでそう思ったのならそう答えるだろうが、自分がなぜそう思うのかを彼女は答えられない。それは知識ではなく育った環境で植え付けられた信念と分かる。

イスラム教とカトリックでは自殺はタブー。どれぐらいタブーかと言うと、冨高振一郎氏が『うつ病の常識は本当か』で指摘したように、統計地図でイスラム圏、カトリック圏がはっきりと人口当たりの自殺者数が低い分布になっている。

この図は2016年の図でwikipediaから。

ja.wikipedia.org

2011年の本と状況は変わらず、中東や地中海南岸、インドネシアなどのイスラム圏と、南米のカトリック圏の自殺者が顕著に少ない。欧州ならイタリアやスペインが少ない。南米で自殺率が高い国は、プロテスタントの国のイギリスが植民地にしていたガイアナと、無宗教者が多く移住したというウルグアイ

宗教は本質的に布教をするが、一番強い布教ルートは親→子。家庭では親から子に様々な信念が受け継がれ、宗教はその一つ。

終盤でレイチェルの家庭が出てくるが、アメリカのありふれた中流の白人家庭というふうで、この家の信仰がどうだったかは特に描かれない。が、警察官でありながらアルコールに溺れるDV夫がいて、精神を病みながら母親が死なずに生きてきたのは、信念として自殺が宗教的タブーだったからと考えると整合する。

でまあ、死にたいからと殺人鬼に殺してください、「はいどうぞ」では、殺人鬼はただの手段で当人の意思で死んだことには変わらない。さすがにレイチェルもそれはないと分かっているので、ザックの逃亡を助けることにする。

ザックはザックで、レイチェルを必ず殺してやる。「神に誓ってなw」という答え。

いくら神に誓うといっても、自分の名前も読めないような人間(この設定自体が振り切れててすごい)の言うことをすぐ信じるのもどうかとなるが、相手を値踏みするより自分の願望が強すぎてそれで信じてしまった様子。

ザックが神に代わって自分を殺してくれるというレイチェルの信念は、B2で神父にさんざん砕かれる。「ザックが神に誓いを立てたとして、その誓いを神が選ぶか、君には分かるかね?」、「もし神の御心が願いと違ったとき、君はどうする?」(9話)。

レイチェルが必死に助けようとしているザックは「神なんざ、この世にいねえんだよ」と言ってさらに突き放す(9話)。

9話まで来てレイチェルの気持ちが神に大きく依存していることが示される。それはいわば「神の奴隷」。

何事も神が第一。善悪も今日何をするかも神に決めてもらわなければならない。それは信心深いというよりやはり、「神の奴隷」と言った方がいいだろう。中世のヨーロッパではそれに近い状況で教会が神の意志を独占し、挙句魔女裁判で無辜の人々を数多く殺してきた。神父がB2にいるのはおそらくそのせい。

ただ、意識としては「神の奴隷」でありながら、無意識的なレイチェルの行動はやや違っている。傷ついたザックを助けようとする姿に、「自分を殺してもらうため」という打算はほとんど見られない。9話でレイチェルはザックから「神はいない」と告げられ、ナイフを渡される。そして薬を探しに走り出す。ここからは「神の奴隷」から一歩踏み出すためのレイチェルの試練が始まる。ナイフは自分は自分で守るという意思の象徴。これを渡したザックも、もう殺すことしか知らない愚者ではない。

その試練の一つがゲーム3話のクライマックスでもある10話の魔女裁判。キャシーの「私が一番悔しかったのは、この女の罪人ぶりに、喜んじゃったことなのよ」は草。

ちなみに死んだはずの殺人鬼が復活しているのは、前に書いたように彼らが地獄の仕置き人でどちらかというと天使で人間でないからで、舞台が現実と違うのだから登場人物もほぼほぼ人外というのはごく自然。

魔女裁判で神の奴隷が神に裁かれる、という状況。裁かれるだけの罪状が次々に証言され、実際レイチェルがそれだけ罪深いというのは間違ってはいない。結果火あぶりになる。

もし心の底から神の奴隷であったなら、火あぶりの刑を甘んじて受けることになるのであろうが、レイチェルは刑を受け入れたくない自分に気付く。自分が魔女でないことも強く自覚する。

レイチェルがザックの逃亡を助けていたのは、「自分を殺してもらう」という打算のためではないと気づく。言葉では特に言わないが、ザック自身を大事に思っていて、だからこそ助けたいということを強く自覚する。そしてそれは、神の意思に背いているとかそういうことではなく、自分が本当に信じるべき神に気付いたということでもある。魔女裁判の炎を消したのは、彼女が神の奴隷をやめ、自立した人間として神と向き合うということに気付いたから。

この彼女の心の変化が、10話でザックの傷を縫ってあげるシーンにもよく表れている。縫ってどうにかなる傷ではないのに、それでザックの容態がだいぶマシになるのはストーリー上の必然。

そう、結局作品自体が神を否定していない。しかも、ハリウッドの映画並にキリスト教と向き合い、現代でも通じる価値観で話を作っている。だからこそこの作品は「いいぞ」と感じる。

『殺戮の天使』ネタバレ考察:プレイエリアとは

『殺戮の天使』について、ネタバレ前提の考察を書いていく。ラストシーンの解釈など核心的な話を先にしようかとも思ったが、まずは作品の舞台から話した方が楽そうなのでそうする。

1話、レイチェル・ガードナーはとある建物のB7、地下7階に自分がいることに気付く。ここから話が始まる。

この時点の彼女の認識では、カウンセリングを受けに病院に来たのに、気付いたらここにいた、となる。

なぜカウンセリングを受けることになったのかというと、「人が死ぬところ、殺されるところを見たから」。嘘は言ってない……。

B7はタイプライター(が接続されたPC)の問診だけでB6に上がる(記憶消去を確認しているのだろう)。エレベーターが開くと同時に

ここから先は、『プレイエリア』です

と放送がある。

カタカナで「プレイ」は'play'か'pray'か分からないけれど、'pray'は動詞であって名詞や形容詞にはならないので、'play area'であろう。誰が何をplayするかは早々にザックが現れて明らかになる。

Aパートではレイチェルはザックの魔の手から逃れてB5に脱出できる。ところが、BパートでザックがB5まで彼女を追いかけて来てダニーを殺す。この建物のルールとしてはあり得ない行為。このザックの重大なルール違反が元になって、「ザックに殺してほしいレイチェル」と、「レイチェルに建物の外に出ることを手伝ってほしいザック」の奇妙な利害の一致が生まれ、以後二人で上を目指すことになる。

1話の段階でこの作品が、現実世界のリアリティと違うということはすぐ分かる。ダニー先生が明らかに人間ではない。

さらに見ていくと分かってくるのは、おそらくこの建物は地獄の一種だということ。

本来は、何か現世でひどい悪事を働いた人間が死後ここに送り込まれる。フロアごとに殺人鬼が待ち構えていて、いずれかのフロアで捕まって殺される。そうやって現世の罪の代償を払うことになる。

ザック、ダニー先生、エディ、キャシー、神父の全員が人間ではない。現世では殺人鬼だったものが、地獄の仕置き人として再雇用されている。地獄の管理人は人間ではなく、人を超えた何物かであるので、地獄はその人を超えた者に仕える者となる。作品的には管理者は神なので、各フロアの殺人鬼は天使となる。『殺戮の天使』、"Angels of Death"とは彼らのことで間違いなかろう。

初見の人には、白ベースの衣装、金髪碧眼の美少女という容姿から、「レイチェルちゃんマジ天使」、略して"RMT”となるかもしれないが、注意して見ればAngelsと複数形なのでこの解釈は正しくないと分かる。立華かなでさんはマジ天使ですけどね。

とはいえ、話が進むと、レイチェル・ガードナーはB1に棲む殺人鬼であることが判明する。

レイチェルちゃんもマジ天使だった。

ただ、1話時点ではその記憶は消されているので、地獄に送り込まれた亡者の一人として話が始まる。

なぜ地獄の仕置き人が1亡者に格下げされてしまったのかは、たまたま聖書を読んで、自分がしたことが許せなくなったからだ、というのがストーリーの流れ(ネタバレ)。流れ的に正当防衛が成立しそうだけど、当人が「自分は許されない、生きていてはいけない」と思ってしまったのだから仕方がない。

ダニー先生に両親は今頃地獄にいると聞いて覚悟を決めたものの、例の重大なルール違反でB5に上がってきたザックがダニー先生を殺してしまう。これにより追われる身になったザックに「お願い、私を殺して」と願うところで1話はEND。

両親はB1で仲睦まじく()しているのでダニー先生もあながち嘘は言ってない。

物語の中では、登場人物は明確に強い願いを持って行動している。「劇的欲求」と言う。各キャラが「何となく」で行動する作品は素人のもの。「ザックに自分を殺してほしい」がレイチェルの劇的欲求。ザックは「この建物から出たい」。実は序盤の二人の劇的欲求は自分のことしか考えていない。

物語では登場人物は成長する。この作品では、話が進むと自己中心的な欲求が変化する。何があってどのように変化するか。それを描くのが作者の腕の見せ所。

作品を全部見た人はもうご存知のことではあるが。未見の人はぜひ見て来てください(さんざんネタバレしておいて平然と言う)。

殺戮の天使の主要キャラ

イラストを描いていて自分の中で再評価することになった『殺戮の天使』。それではと原作ゲームもやって昨日クリアした。

www.gamemaga.jp

上記が原作ゲームの公式サイト。PCでやる分には無料で可能。ニンテンドーSWSITCH版やスマホ版は有料だけどそんなに高いわけではない。

play.google.com

PCの前で延々ゲームできる身分ではないので、Android版をDLして電車などでポチポチやってた。ゲームと言っても分岐してマルチエンドになるわけではなく、1本のストーリーを鑑賞する作り。

私がこの作品を高く評価するのは、アメリカを舞台にして、かの地のキリスト教に向き合って作られているということと、各所にちりばめられたサブカル的アイテムの多さ。

この作品の評価記事を書くなら、これらの2つの面からアプローチする必要がある。少なくとも、自分はそうしなければならないと考えている。作品のテーマに関連した話はキリスト教に触れないといけないので、今はまだ原稿を温めているところ。一方、サブカルネタはすぐに話せる。その一つがキャラクターの名前。

レイチェル・ガードナー

Pixivの百科事典などを見ると、本作の主要キャラのファーストネーム旧約聖書から持って来ているとある。レイチェルの元はヤコブの妻であるラケル

ja.wikipedia.org

名前の意味は子羊、雌羊、純粋なもの。

https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB

ということで、信心深い純真な乙女にふさわしい名前となる。

もっとも、1980年代の映画の世界を知っていると、「レイチェル」と聞けば思い出すのは『ブレードランナー』のタイレル社のアンドロイド。演じるのはショーン・ヤング。映画はP.K.ディックの原作を大幅に改変しているが、レイチェルは原作にも出る。

これらのレイチェルは名前の通り純真キャラではないので、アニメのレイチェルは予想の範囲内。

姓の「ガードナー」は庭師という意味だが、ここで止まってしまったら惜しい。我々1990年代から疑似科学を観察してきた人間には、疑似科学批判の基礎となる『奇妙な論理』の著者のマーチン・ガードナーの名前を思い出さずにいられない。

レイチェルが「頭がいい」という設定なのは作者がこの本の著者をイメージして設定しているからで間違いないだろう。

アイザック・フォスター

アイザック旧約聖書のイサク。アブラハムとサラの息子。

ja.wikipedia.org

フォスターは、伝説的なアメリカの女優、ジョディ・フォスターからとったと見て間違いない。

タクシードライバー』で12歳の娼婦役を演じた金髪少女。同じ時期には『白い家の少女』も演じている。この頃の彼女のイメージはレイチェルにかなり近い。

そして、この作品に名前を持ってくるにふさわしい映画といえば、『羊たちの沈黙』。1991年の大人のジョディ・フォスターが幼少期のトラウマを抱えつつ殺人鬼に挑む。

レイチェルとバディであるからこそ、フォスターの名前を持ってきたと考えざるを得ない。

エディ

主要キャラ全員に言及している時間はないので、もう一人、エディについて。

B4の墓守でかつ殺人鬼。覆面の中身は少年。

エドワードの名前が旧約聖書由来かどうかはともかく、墓守というキャラからいって元ネタはエド・ゲインであろう。

ja.wikipedia.org

羊たちの沈黙』の殺人鬼のモデルでもある。その他いろいろな作品に影響を与えている。

こういった具合に様々な要素がちりばめられていて、そういうネタが好きな人は心を揺さぶられつづける。

www.youtube.com

そういう話を抜きにしてもPV第2弾はよくできていて作品をよく表している。テレビ放送時と違い全16話は分かり切っているので、12話で切られてがっかりすることもない。原作をやってもいいし、アニメから見てもいい。もっと多く知られるべき作品だと思う。

殺戮の天使二次創作2022

『殺戮の天使』の話題ついでに、この絵の制作過程を少し語ってみる。

Clip Studio Paintの機能を使ってタイムラプスを保存し、メイキング動画を作った。

www.youtube.com

制作サイズは2400x3600画素。300DPIでほぼA4。真方形ではなく2:3なのは写真のフォーマットに慣れてるから。

お盆休み中にネタを思いついてクロッキー帳にぱぱっとメモしておいた。それを見ながら液タブで作業開始。

まずは太さ30の鉛筆ツールと消しゴムでラフ。線を沢山引いて、見えてきた形を残して消しゴムで消す。描くことと消すことは等価。どんどん描いてどんどん消す。絵の中で人体がどうなっているのかを把握できるまでひたすらやる。

ラフがある程度進んだら色を薄くし、新しいレイヤーを重ねてそちらに次のラフを描く。それを何回か繰り返す。

途中段階でぱぱっと色をつけて色ラフにする。彩色のコンセプトはここで大まかに決めておく。色を塗らないと分からない形もあるので、線画で煮詰まったら色をつけてみるのもお薦め。

自分で同じポーズをしてみて左の膝が絵の通りにはならないのを確認し、膝の位置を修正。左脚がぐっと前に出てきた。

それから構図に動きが不足していたので若干回転させた。左上-右下の対角線を軸に重要なものを配置する構図がこれで決まった。

ラフの最終段階は太さ8の鉛筆ツールで、本番の線画だと思って描き込む。本番の線画と思いつつもラフなので気になるところはどんどん消して修正する。

線の細いラフができてから、本番用のレイヤー設計をして、人物用の線画レイヤーに線画を清書する。レイヤーは人物、衣装、髪の毛で分ける。レイヤーを間違えないようにレイヤーにクリスタの機能で色を割り振っている。割り振りを解除すると黒になる。今回二人いるのでザックは別レイヤーで書いてる。

線画ができてからレイヤーごとに色を塗っていく。右の靴底を少し直して足首の曲がり具合を調整。

背景を描き込んで、レイヤー分けした塗分けに対し色調整。背景を先行するのはそうしないと色のゴールが分からないため。全体の配色が掴めてきたら主題と背景を順番に描き込んでいく。

そして人物の影つけ。右下の羽毛はラフの上にレイヤーを重ねて、丁寧に形をイメージしてシルエットで描いていく。それからそのレイヤーにクリップしたレイヤーで陰影をつける。物が小さいのでこれでそれっぽくなる。線画の工程がない分時短できるので、特に背景では「シルエット→陰影」というやり方を推奨。

完成までもう一歩。

レイチェルが明るい配色なので、グロー効果のフィルター処理を実施。

そして完成したのがこちら。制作サイズを公開中。

www.pixiv.net

作業中に100%に拡大するのは稀なので、等倍で見ると粗が目立ちますが、誰かの参考になればと思い等倍で公開しています。

4年前と違い板タブから液タブに変えました。クリスタではスマホを左手ツールとして使えるので助かりました。

『殺戮の天使』とEDCポーチ(ネタバレあり)

2018年に放送された『殺戮の天使』は、大ヒットとは言わないまでも、根強いファンがいる作品。かくいう自分も気に入っていて、pixivに上げた二次創作はもう4枚目になる。

作品の年代設定は1980~90年代のようだ。この時代の洋画の要素が作品の設定に取り込まれている。携帯電話も出ない。実は作品世界はリアルの時間軸とリンクしていないが、それはまた別の話。

とはいえ、この頃アメリカあたりで流行っているEDCというのを知り、そういう目で見ると、レイチェル・ガードナーが肩から下げているポーチがEDCポーチになっているのでは、と推測をするようになった。ちなみにEDCポーチの具体は下記など参照。

www.goodspress.jp

EDCとは「Every Day Carry」の略で、毎日持ち歩くべき、普段使いする、またはいざという時必要となる小物のこと。

レイチェル・ガードナーは、目の前で死んでいた小鳥を見てポーチに手を伸ばす(1話)。

そこには針と糸が入っていた。彼女はお裁縫が好きで得意。

殺人鬼にバラバラにされた小鳥も、こんなふうに修復できる。とっても優しい。

これぐらいなら、裁縫セットを持ち歩いている人など珍しくないのでEDCと言うほどではない。

しかし、針金と電池で即製の発火装置を作るとなると話は別(5話)。

電池は改めて確認したら、3話で手に入れたリモコンの電池だったと判明。

これが3話のリモコン。

しかし、針金は手に入れたアイテムとは限らず、ポーチに最初からあった可能性もある。

EDCでは、針金やパラコードも何かの役に立つから、と持ち歩いている人がいる。

他にナイフやフラッシュライト、筆記用具、現金、クレジットカード、ライターなどが定番。

そしてアメリカ人のEDCを検索して眺めているともう1点。

6話で登場するのは;

アメリカ人のEDCでおなじみ、拳銃でした!

こんな記事もあるぐらい。

armsweb.jp

時代設定的にいかにもEDCです、とはなっていないが、ポーチの中身を考えるときにEDCが作者の頭にあった可能性は否定できない。

作品はAmazonプライムビデオや他の配信で見られます。

ブチャの虐殺でロシアを擁護する人々

ロシアによるウクライナ侵攻では、キーウ近郊まで迫ったロシア軍が占領下の民間人を虐殺するという、痛ましいことが起きた。

ja.wikipedia.org

当然ロシアはその罪を認めていない。

大使館が提示した動画に「証拠」などというものはない。これに対し、べリング・キャットはオシントによる証拠をもって反論している。どちらを信じるべきかは明らかだろう。

mainichi.jp

戦争で占領軍が撤退した後に民間人が虐殺されていたら、もっとも自然な結論は「占領軍がやった」であり、これを覆すには相応の証拠が必要になる。説得力のある証拠が提示されるまで、我々は「自然な結論」を変更する必要はない。

しかし、こういう言ってる本人さえ信じていないような嘘を信じてしまう人が、世の中にはたくさんいる。

Quoraというサイトでは、会員が質問すると他の会員が丁寧に回答してくれる。そのQ&Aによって知識を蓄積しようという試みである。

そのQuoraが、ロシアによるウクライナ侵攻では、プーチン応援団のエコーチャンバーとなりつつある。ここでロシアを擁護しアメリカを非難すれば高評価がたくさんつき、シェアもされ称賛される。

もちろん、反論はいくらでも可能なので、「そうじゃない!」というご意見はどんどん回答していってもらいたい。

ここでは、その集合知を蓄積しようというサイトに現れたロシアを擁護する意見をカウントし、何らかの対策をしないとエコーチャンバーがいかに容易に形成されるかを示したい。

問題の質問はこれ。

jp.quora.com

27件の回答を表にしてみる。並びといいねやシェア数は2022年8月24日時点。意見は本文を読解して肯定を「〇」、否定を「-」で示した。これにより虐殺をロシア軍がやったか否かについて4通りに分類できる。Yes/Noの2通りよりこちらの方が、どっちもどっち論や判断保留という曖昧な回答に対応しやすい。ここで、こういうロシア軍がやったと明確な事項に曖昧な回答をするということはロシア軍の味方であることを付記しておく。

No. 回答日 虐殺はロシアがやった ロシアはやってない 高評価数 シェア数
1 4月16日 11 2
2 4月8日 81 1
3 4月15日 1
4 4月8日 38
5 7月18日 5
6 4月15日
7 4月8日 7
8 4月9日 25
9 4月9日 1
10 4月8日 2
11 4月8日 7
12 4月18日 32 4
13 4月8日 22
14 4月13日 4
15 4月10日 16
16 4月13日 2
17 4月8日 1
18 4月9日 5
19 4月9日 2
20 4月8日 7
21 4月8日 1
22 4月8日 1
23 4月8日 2
24 4月8日 1
25 4月25日
26 5月18日 5
27 4月8日

27件のうち15件は「ロシア軍がやった/違うというのはフェイク」であり、56%に留まる。

ロシア軍はやっていない(ウクライナがやった)という-〇は6件。ロシア軍もやったかもしんないけどウクライナだって怪しい、も加えれば(この案件では中立=ロシア寄り)12件で44%。周りの人間と話をしていてブチャ虐殺がロシアのせいじゃないなどという人間はまず見ないから、この質問に特異な信念を持つものが集まってきていると言える。

回答数、高評価数、シェア数の全てが「ロシア軍がやった」の方が多数派であるが、そうでない意見がこれだけ多いこと、最大で38も高評価がついていることは注意する必要がある。この質問回答がロシア擁護派のエコーチャンバーとなっている可能性が高い。

最後に「ロシア軍はやっていない(ウクライナがやった)」という回答について、信じるべき根拠が示されているものは一つもないことを書いておく。

要点1:ブチャでの虐殺についてメディアは突如沈黙した。この沈黙は、フランス国家憲兵隊が関わる捜査で、遺体から金属製の”ダーツ”が発見されたからである。この金属製の”ダーツ”が決定的な証拠となり、虐殺はロシアが行ったというプロパガンダがピタリと止んだ。

https://gunji-senryaku1.quora.com/%E3%83%96%E3%83%81%E3%83%A3%E3%81%A7%E3%81%AE%E8%99%90%E6%AE%BA%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%AF%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%81%A0%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%81%8C-%E4%BF%A1%E3%81%98%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%81%8B-%E5%AE%A2%E8%A6%B3%E7%9A%84%E3%81%AA%E5%88%A4%E6%96%AD%E3%81%AF%E5%85%AC%E7%9A%84%E3%81%AA%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%A9%9F%E9%96%A2%E3%81%8C%E3%82%84%E3%82%8B%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%81%8B%E3%82%89-%E3%81%82%E3%81%AA%E3%81%9F%E3%81%AE%E4%B8%BB%E8%A6%B3%E3%82%92%E3%81%8A%E8%81%9E%E3%81%8D%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%84%E3%81%A7%E3%81%99-11

ソース元のスペインのmpr21は過激派のフェイクニュースサイト。これを参照している意見はフェイク。

時系列で考えましょう

3/30 ロシア軍撤退した

3/31 ブチャ市長は復権宣言

4/3 410の死体を発見

4/4 ロシアは安保理に調査を提案したが、議長のイギリスによる却下

4/8現在、国連の調査はまだ始まっていない

https://jp.quora.com/%E3%83%96%E3%83%81%E3%83%A3%E3%81%A7%E3%81%AE%E8%99%90%E6%AE%BA%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%81%AF%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/answers/348831632

べリングキャットが衛星写真で路上に遺体がずっと放置されていたことを確認済。

こういった与太話をつぎつぎと繰り出して、お仲間どうして高評価をつけあっている場所が当たり前のように存在しているのである。

軍事研究 2022年 06 月号 [雑誌]

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