藤田嗣治、全所蔵作品展示。

2015年10月4日、国立科学博物館を見学した後、竹橋に移動して東京国立近代美術館に行った。

http://www.momat.go.jp/

MOMATコレクションの展示で、特集が「藤田嗣治、全所蔵作品展示。」

2015年9月19日から12月13日まで開催。

この日は第一日曜日のため無料。びっくりした。それでも人が少なく、ゆっくり「レオナール・フジタ」の絵画を鑑賞できた。

この展示を知ったのは、書店で気になって購入した『芸術手帳』2015年9月号に案内があったため。

美術手帖 2015年 09月号

美術手帖 2015年 09月号

ミリタリー好きで、かつpixivに多少の兵器のイラストをアップしている者としては、やはり「戦争絵画」というものは心惹かれるものがある。

世界的に有名な画家、藤田嗣治は戦争絵画でも知られる。軍部に協力して制作した油絵の素晴らしさ。そして、戦後に戦争協力の罪を問われ、日本に絶望したかのようにフランスに渡り二度と戻らなかったその人生。

東京国立近代美術館には藤田嗣治の作品が数多く所蔵されており、今回の展示はその全てを鑑賞できる。

戦争絵画は戦後GHQに接収され、1970年に「永久貸与」という形で日本に戻ってきたもの。それを現在収蔵しているのがこの美術館。

藤田嗣治の戦争絵画は年代順に展示され、画風の変遷をその目で確かめることができる。

太平世戦争前の絵画で一番目を引くのは、幅約4.5mという大作、『哈爾哈河畔之戦闘』。草原の戦場で日本兵ソ連戦車を撃破し、銃剣を構えて車内の敵兵の様子を伺っている絵。

美しい草原、立ち上る黒煙、リアルな戦車、勇敢かつ殺気を放つ日本兵。この絵を直接鑑賞できてとても感動した。

現実のノモンハン事件では日本兵ソ連戦車によりかなりの被害を出した。この絵は戦死した兵士への慰霊のために描かれたもの。藤田の芸術的な才能と兵士への誠実な心が伝わってくる。

この後日本は太平洋戦争に突入。緒戦の華々しい戦果の後、負け戦に転じ、敗戦に至る。

藤田の絵はそんな日本の状況に呼応するかのように色合いは暗く、描かれる場面は凄惨なものに変わってゆく。

それでも、その画風であっても軍に認められていたというところには、日本人の芸術に関する独特の感性を感じる。軍歌のペーソスに通じるもの。

そして藤田の戦争絵画のピークとも呼べるのが「サイパン島同胞臣節を全うす」。米兵に追い詰められたサイパン島の市民が必死の抵抗をしつつ、崖から海に身を投げるなどして自らの命を絶つ場面を描いたもの。

この時点でおそらく藤田は、日本軍のため、お国のため、という次元では絵を描いていないと推測される。その構図やモチーフは異民族に追われる民を描いた過去の絵画と共通のものだという。藤田は戦争そのものの中から、芸術家が描くべき普遍的なテーマを見出し、それをキャンバスにぶつけた。きっかけは戦争であったとしても、この絵を仕上げたものは、画家の芸術的な欲求そのものであったと考える。

こういった感想をいだいた次第なので、まだ一ヶ月あまり期間があるため、もし気になる方がいらしたら、ぜひ竹橋まで足を運んでいただけることをおすすめする。