Great Spangled Weblog

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知性の不在

はてなダイアリーid:noharra氏の日記に関して。


 教育とは(少なくとも小学校の教育)とは、ちっぽけな子どもたち一人一人が主人公である。上の文章には全然書きませんでしたが、わたしの子どもを送り出してくれた卒業式には、(君が代日の丸はあったが)その基本線がしっかり貫かれており、良かったと思います。

一片の法律や通達で教育を良くすることなど出来るはずがなく、現場の先生たちが生徒とともに試行錯誤するのを、父母も協力するなかでおおらかに見守っていく方が良いと思います。実際、テレビでは、法律や規則などを逸脱気味の「ごくせん」や「金八先生」などの(ちょっと時代遅れかなみたいなテイストの)ドラマが大人気です。

 国家の強制によって教育を良くすることができる、ということはないでしょう。

「教育とは」「子どもたち一人一人が主人公である」と書いて国家の強制を否定しておきながら、意に沿わない意見を学生に言われるとこう言い返す。


もし自分の子どもがあなたと同じような考え方だったらと思うと恥ずかしくて顔から火が出そうです!

意見が食い違わない範囲で「子どもたち一人一人が主人公」という認識なのか、単に高校生はもはや「教育」の「主人公で」はないのか。

ともかくね。子供達のため、といって国家の強制を無茶苦茶な理屈や行動で否定しながら、それを当人に批判されると罵倒が返ってくると。こんな大人がいるとはこっちこそ恥ずかしい。

他にも馬鹿げた記事が多いが、特に私の印象に残っているのはこれ。前にもやんわりと批判したのだが(id:spanglemaker:20050103#p3)今日は直球で。


 日本のユダヤ人問題といえば、朝鮮人問題ということになる。1910年以来民族の独立を奪い民衆を抑圧したという事実の存在は、同時期におけるアウシュビッツにいたるユダヤ人抑圧〜虐殺の事実とパラレルである。

どこが?

日本は朝鮮人朝鮮人であるというだけで強制収容所に収用するようなことはしていないし、朝鮮人の絶滅などまったく考えたこともなかった(アウシュビッツが本当に絶滅収容所なのかという議論もあるし*1。)。

ユダヤ人はドイツ国民であったり周辺国の国民であったわけで、民族が独立していたわけではないし。

こういう馬鹿げた前提の上で、北朝鮮拉致問題に関するこういう意見が出てくるわけである。


 生きているかどうか分からないめぐみさんなるものに大騒ぎするわりには、半年以上中国に拘留されながら野口さんに対しては何故国民的救出運動が盛り上がらなかったのか。右翼の立場からすると、難民救済する日本人は日本人ではないのか。であればおそらく北朝鮮国益のために生きている(生きざるをえない)横田めぐみ救出を叫ぶのは矛盾していないか。

<略>

北朝鮮問題とパレスチナ問題の構造の一致、というより差異の問題になった。(北朝鮮に対する報道は少なくない。必ずしも排外主義一色でもないとも言える。)横田めぐみさん、拉致された日本人を北朝鮮から奪還せよ、というストーリーばかりが叫ばれるが、めぐみさんはまだ帰ってこない。帰ることが大事なのか。そうではなく大事なのは移動の(国境を越える)自由だろう。一人でも多くの脱北者に保護を与えることに積極的に成るよう、わたしたちは日本政府と中国政府に働きかけるべきだろう。

横田めぐみさんは日本人としての権利を持っている。例えば誘拐されたら救出される権利。

被害者の権利を保証する、という人道的観点からこそ「拉致された日本人を北朝鮮から奪還せよ、というストーリー」が叫ばれているのではないか。

被抑圧者の肩を持ってきれいごとを並べて善人面しているが、誘拐の被害者を救出するな、という外道な発言をしていることに気づいていない。「被抑圧者」の認識も歴史歪曲が伴っている。

これで人権がどうとか言ってるのだからお笑いだ。

しかし肌寒くなるのは、この外道な発言にも肯定的なコメントがついていることである。


# swan_slab 『>拉致された日本人を北朝鮮から奪還せよ、というストーリーばかりが叫ばれる
そのためには食糧支援も止めてやる!といってしまうわけですよね。。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041209-00000057-kyodo-intこんな記事が出ているときに。
様々なことを多角的に報道しないから視野狭窄になるんでしょうね。』

視野狭窄」はどちらか。「日本に搾取された朝鮮」という視野狭窄にあるからこぞ、無辜の市民が外国に誘拐されたことの悲惨さが理解できない。「奪還せよ、というストーリー」がなぜ叫ばれるのかが分からない。そして、北朝鮮人民の飢餓が日本に責任があると勘違いしてしまう。

北朝鮮の飢餓問題は金日成金正日父子の農業政策の失敗に第一の原因がある。これについて日本を責めるのはお門違い。食料支援は日本の善意であって義務ではない。

id:noharra氏は■ <<<金正日有罪>>>とも言っているが、拉致被害者を救出させないことに比べると熱意に欠けるように見える。それでなくても、「女性国際戦犯法廷」と同じ次元で「金正日有罪」と言われてもはなはだ困る。あんなものに裁判としての正当性を認めたら日本の恥だ。

そして3月にも拉致被害者を冒涜するような記事を書いている。


 現在多くのプチウヨとかが口にするのは、被害者としての「横田めぐみ」です。日本人少女めぐみさんが無垢な被害者であり、彼女に対する加害者として「敵」=金正日一派=北朝鮮国家が名指されます。このような排外主義は私にとっても不快なものです。ですがそこで思考停止して良いのでしょうか。このごろ思うのは、めぐみさんというのは「日本人」というより「難民」である、ということです。彼女が失踪してから20年近く、少しは気付きながら日本国(外務省)は、国家と国家のつき合いを重んじて、一人の日本人の運命に深く関わっていこうとはしませんでした。それが数年前から家族会、救う会とかができて、少しづつ世間の注目もあつまり、ようやく現在のような(そういう言葉を使うことが許されるとしたら)国民的アイドルに成ることができたのです。世界中でひどい目にあっている女性たちはたくさん居り、めぐみさんにだけ注目することが正しいわけでは無いのは言うまでもありません。しかしいまでは有名になった「めぐみさん」自身たった2,3年前までは国民的レベルでは誰も知らない、見捨てられた存在であったわけです。めぐみさんを見捨てたまま知らん顔を続けるのが正しいわけではない、と言うことには同意いただけるのではないでしょうか。とすると、次の問題は、「めぐみさんに多くの人の関心を集める方便としてナショナリズムに訴えること」の是非です。これは例えば、韓国人慰安婦某女にできるだけ多くの人の関心を集める方便として韓国人ナショナリズムに訴えること、とパラレルな問題です。

「プチウヨ」罵倒はかまわないが、「めぐみさんというのは「日本人」というより「難民」である」という発言は看過できない。

横田めぐみさんはれっきとした日本人であり、先にも言ったように、日本人としての権利をしっかりもっている。国民である権利を自ら捨ててしまった難民と同列に扱うべきではない。

他にもひどい目にあっている女性は沢山いるだろうけれど、横田めぐみさんという日本人の権利を守るのは日本人しかないではないか。日本人が日本人としてなんとかしなければならない。彼女の権利を大事にするという思いこそが、日本のナショナリズムを高めている。これは実に自然なことだ。

ナショナリズムを高揚し国民を搾取するために為政者が危機を煽るのではない。危機にあるから団結するためにナショナリズムが自発的に高揚する。北朝鮮あたりではどうだか知らないが、今現在の日本は間違いなく後者だ。9.17以来の金正日政権への怒りは国民に広く共通するもので、その発端は金正日が自分の罪状を認めたことにある。金正日が誠実な態度であったならば拉致問題に関してナショナリズムの高揚はあり得ない。

ぜひこういう方には、日本人の団結や日本国政府の働きなしに、横田めぐみさんを救出し人権を守る方法を具体的に提示してもらいたいものである。

人権を守るためには戦争も辞さない覚悟がいる。それが現実だ。リベラルを標榜するならぜひこれを直視してもらいたい。

*1:例えばhttp://maa999999.hp.infoseek.co.jp/ruri/sohiasenseinogyakutensaiban2_mokuji.html。とりあえず紹介のみ。内容についてここでは論評しない