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「うつ」かもしれない

「うつ」かもしれない 死に至る病とどう闘うか (光文社新書)

「うつ」かもしれない 死に至る病とどう闘うか (光文社新書)

『うつと自殺』(ISBN:4087202399)というストレートなタイトルの本があるが、本書も、うつ病がもたらす自殺の悲劇を少しでも減らしたいという願いが込められている。副題に「死に至る病とどう闘うか」とある程で、うつ病と自殺の関係については、本書の方が掘り下げが深い。著者の推測によるとうつ病による自殺者は国内で年間2万人以上だという(P.171)。

本書からは、うつ病から自殺に至ってしまう病理と、自殺防止のためのキーワードとして、「視野狭窄」というのが浮かんでくる。うつ病により陥ってしまう自殺に向けての「視野狭窄」から、いかに患者を救うかが鍵となるようだ。

著者は「すべての自殺を防ぐことはできない」としながらも、下記のように自殺防止への道筋を述べている(P.212)。

 何度も繰り返しますが、自殺者の九割は精神疾患に罹患していますし、そのなかでも六割がうつ病に罹っています。つまり「うつ」の早期発見・早期治療が、自殺数を減らすことにつながるのです。

そして、具体的な対策の例として「新潟県東頚城郡松之山町における、老人自殺予防活動」を紹介している。

著者のこのような自殺防止への熱意の背景には、年に何人かは患者が自殺してしまうという厳しい現実がある。そのたびに眠れない思いをするという。「うつ病」の診断をもらって自分の苦しさばかり気にしていた自分は、本書を手に取って、医師にもこのような辛さがあると知って衝撃を受けた。

他に本書で印象に残ったところ。

P.60に「仮面うつ病」は存在しない、とある。その前段の「自律神経失調症」も存在しないのでは、というのも大事な箇所だと思うが、こちらも気になる。下記にあるように、要するに「仮面うつ病」であっても精神症状が全くないことはないといのだという(P.60)。

 うつ病には必ず自律神経症状が伴います。さらにいえば、自律神経症状を伴い、抑うつ気分や不安を訴えないなどということはありません。患者さんに詳しく話を聴けば、ほとんどなんらかの抑うつ、不安などの精神症状が認められます。

自分についても、胃の不調が主な身体症状だが、胃がおかしい時は気分もひどい落ち込み方をする。やはり身体症状だけの「仮面うつ病」はないのではと思う。「うつ病」があって、身体症状と精神症状のどちらがより目立つか、ということだと思う。もっとも、医師から面と向かって「仮面うつ病だ」と言われたことがないから確実なことは言えないが。

P.40ではうつ病の原因について考察されているが、結論は不明とのこと(P.40-41)。

 「うつ」の原因として、なんらかの脳の可塑性(<略>)のようなものが関与していると私も考えています。なにか脳の脆弱性が根底にあり、そこに精神的なダメージが加わって「うつ」を発症するのではないでしょうか。精神的ダメージが脳に影響を与えることは、これまで様々な研究で実証されていますが、それだけで「うつ」を発症するわけでもありません。根本的に「うつ」の原因はわかっていないのです。

うつ病は治療すれば必ずよくなると言われる。確かに休養と投薬によって症状が改善される、という意味合いでは、そのように言うこともできるだろう。もっとも、長年治療を受けても「うつ」の症状に悩まされている方をよくネットで拝見するので、「必ず」などと言い切ってはいけないのかもしれないが。自分も症状がだいぶよくなったが先日ぶり返しに遭ったし。

ともかく、うつ病の治療が結局は対症療法で、根本的な原因に対策をとることができないというのが悩ましい。

自分にも、長くて遠くても治癒まで道のりがある信じて、ゆっくりとでも歩いてゆきたい。