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軍用機開発物語

旧日本軍の軍用機について、開発者自ら語る開発の概要。

佐野栄太郎氏による零式水上観測機の記事が、独創的な技術と自信に満ちた文章で特に面白かった。例えば(P.144-145)。

 本機についてとくに記憶された議論は、上下翼間張線の問題であった。
 海軍はあくまで、海軍規格の二本式を主張したが、私は性能向上のためには空力的、強度的からみて規格通りの必要なしとの見解を固持し、ついに一本式の実施にふみきったことである。
 つぎに水上機単浮舟には、水中舵をつけることが、海軍の常識であったにもかかわらず、本機主浮舟に水中舵がないので、これも大きな問題としてとりあげられた。
 しかし、私はあくまで性能向上(重量軽減と機構複雑化の防止)のため、さらに水上旋回においても、なんら支障がないという技術的自信をもって、自分の主張を通したのである。
 後日、これらのことは実証された。

「零観」の緊張感のあるきりっとしたスタイリングは設計者の溌剌とした精神の現れと分かる。

日本機の設計者像については、「彩雲」の記事で内藤子生氏が以下のように書いている(P.189)。

 複葉機から単葉機へ、木製機から全金属製機へとはげしい航空機のうつりかわりを、技術者としてのりこえてきた人々が、彩雲が試作された昭和十七年には、一〇年にあまる経験をもち、いくたの苦労をかさねて、年齢も三〇歳前後で、もっとも油の乗った時期であった。

30代の若さと10年の経験をあわせ持つ技術者が、大きく力を発揮して作り上げてきたことにより、日本の大戦機には時代を超えた魅力が備わっているのだと思う。