戦闘機屋人生

戦闘機屋人生―元空将が語る零戦からFSXまで90年

戦闘機屋人生―元空将が語る零戦からFSXまで90年

高山捷一元空将を軸に、日本の空の守りと航空産業を語る。

116ページには、兵器は国産を基本とすべしということについて、高山氏の持論が語られている。

「外国機を導入してライセンス生産するほうが安上がりだという考え方もありますが、これではすでにハードウエアとしての兵器の中身がわかってしまっていて、手の内が相手に知られているということなのです。これでは金をかけたわりには値打ちが下がってしまい、有効性をもたない。もっと相手がすくむような、抑止力をもった兵器であるためには、やはり、手の内が知られていない国内開発の兵器であることを基本方針とすべきです。そのためには、開発、生産能力もつねに向上させ、維持し続けることが必要です」

『なぜ、日本は50年間も旅客機をつくれなかったのか』(http://d.hatena.ne.jp/spanglemaker/20080414/p1)にもほぼ同じ発言が載っている。

高山氏はライセンス生産の問題点についてさらに踏み込んだ指摘をしている(P.248-249)。

(一)すでに開発されたものを、そのあと日本が導入して生産をはじめるのだから、自衛隊に配備されるのは、開発国と比べて五、六年は遅れるため、あらゆる点で最新のものが入っていない。とくに、電子機器の技術進歩は急激であるため、配備された頃には旧式になっている。

(二)生産が主となるため、研究開発能力の向上には役立たない。そればかりか、自らの手で研究開発する苦労をしないため、すべての点で受け身となって、自ら考えることをしなくなる技術者をつくってしまう。しかも、なにか問題が起きたとき、設計データや試験データがないため、お手上げとなって、開発国にすべて依存する結果となり、迅速な対応ができずに国防上からも問題となる。

(三)最新鋭の航空機を導入しようとすると、それだけ高額のライセンス料(ロイヤリティ)を要求される。そればかりか、一九八〇年代半ば以降は、最新技術を駆使した部分ほどブラックボックス化され、その傾向は最近になるほど顕著になって、もっともほしい技術が得られない。

(四)ライセンスの場合、契約上から輸出は許可されないため、将来に向けた産業の発展に結びつかない。

日本の防衛全般については、以下のように書いて強すぎるアメリカ依存をいましめている。

「『アメリカとの協力関係が崩れたときに日本はどうするんだ』という危機感をもつかどうかということです。なにか善意に解釈して日米協力体制が基本だという前提に信頼し安心しきって、政治家も自衛隊も国民も危機感がまったくないと思われます。危機意識を前提にすると研究開発や工業生産能力を向上することが絶対に大事だという結論が当然の帰結として出てきます。
 やはり基本の心構えとして、国を守るためには、軍隊だけでは決して守れない。国民全体の国を守るんだという意識が重要です」

「国民全体の国を守るんだという意識が重要です」というのは確かにそう思う。

日教組反日教育あたりはこの辺の突き崩しにかかっている。以前デイヴィッド・ハルバースタム氏のドキュメント番組を見て、ソ連の学校には週一回「軍事」の授業があると聞いてうらやましく思ったりした(笑)。そこまではいかなくとも、空襲の被害にあったお年寄りの話を聞いたりする機会があるのであれば、たまには現役自衛官の講演を聞くこともあってもよいのではと思う。少なくとも、小学校で警察官や消防士の仕事を教えるなら、自衛官の仕事も教えないとおかしいだろう。

国民の国防意識の向上は、軍隊を増強するとか戦争につながるとかそういった安直な結果を招くとは限らない。国民の意識は政治に反映され国力に応じた適度な防衛力整備に向けた充実した防衛政策が生まれるようになるだろう。

以上のような本筋とは別に、高山氏がF-104をベースとした水上戦闘機を構想していたというのが書いてあって面白かった(P.249)。

 防衛庁を去るにあたって、実現できずに残念に思えた航空機があった。それは独自に考え出した水上戦闘機である。F104Jが採用を決定された頃、高山は戦前に零戦中島飛行機で水上戦闘機として実用化した経験があって閃いた。

 零戦の場合はプロペラが水面を叩くとまずいので、丈を高くする意味もあってそりのような浮き舟をつけている。だが、ジェット機のF104Jではその必要はない。

 プロペラ時代には夢想だにしなかったが、ジェット化されたことで、胴体そのものを浮き舟にできる。胴体を浮き舟とすると、水の抵抗は大きくなるが、エンジンが大馬力を誇るGE製J79だけに、その力はさほど問題にはならない。

そして、新明和菊原静男氏にかけあって図面を書いてもらったという(P.251)。

 日本の自然条件に適していて、実現すれば世界初の独創的な水上戦闘機ができあがるだけに、高山はいまもってあきらめきれない口ぶりで語った。

「菊原氏の協力で、スマートな姿態のF104J水上戦闘機の図面ができあがって、航幕の部長会議に技術部長から何回か提案してもらいましたが、残念ながら、未採用のままで、私の未練はいまだに続いています」

「世界初の独創的な水上戦闘機」のくだりはサンダース・ローSR.A/1とコンベアXF2Yシーダートのことを失念している。

それにしても、F-104Jがベースの水上戦闘機とはいったいどんなものだったのだろう。描かれた図面というのを激しく見てみたい。