なぜ、日本は50年間も旅客機をつくれなかったのか (だいわ文庫)
- 作者: 前間孝則
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2008/03/10
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
表紙にMRJがあるので、MRJについて詳しくあるかと思ったらそうではなかった。
MRJ開発に至るまでの、日本の航空機開発史を要領よくまとめた本。
これまでに日本が開発した航空機について、それぞれの問題点を鋭く指摘している。どんな機体を取り上げているかというと目次から拾ってこんな具合。
常々日本の航空機開発には強い関心があるので、とても面白く、一気に読んでしまった。
読んでいて3箇所ほど付箋を貼った。それぞれ紹介すると、まずあとがきの356ページ。
このため、わずかでも風通しを良くする意味からも、半世紀余におよぶ戦後日本の航空機産業の内実をいま一度捉え直して、そのなかから、メルクマール(目標)になると同時に、多くの問題性をはらんでいる重要なプロジュクトをとり上げて、その実態を明らかにすることを本書において試みたのである。
本書がどんな本かがここに説明されている。
54ページはT-1の国内開発を推進した防衛庁高山捷一ニ佐(当時)の言葉。
「外国機をライセンス生産するほうが安上がりだという考え方がありますが、それではすでにハードウエアとしての兵器の中身がわかってしまっていて、手の内が相手に知られているということなので、金をかけた割には値打ちが下がってしまい、有効性をもたない。もっと相手がすくむような、抑止力をもった兵器であるためには、やはり、手の内が知られない国内開発の兵器であることを基本方針とすべきです。そのためには、開発、生産能力もつねに向上させ、維持し続けることが必要なのです。」
兵器を国産についてこんな考え方もあると。
110〜111ページ、C-1の航続性能が政治的に短くされてしまったことに関して。
こんなにも軍事的には筋が通っていない批判でありながらも、これがまかり通って、それに過剰に反応して自己規制し、輸送機の航続距離を短くして、事を荒立てないようにする日本の防衛庁のひ弱さは、なんと形容したらいいのだろう。このばからしさを筋立てて国民に説明して納得させようとしない、またできない防衛庁や政府の軍事的幼稚さこそ、日本の防衛上の弱点であると、近隣諸国の軍事専門家はとっくに見抜いているはずである。
そしてそのことこそ、日本国民にとっては逆に脅威なのである。
「ひ弱」とか「軍事的幼稚さ」など、かなり強い言葉で批判している。
付箋は貼ってないけどちょっと気になる箇所。112ページ。
このため、自衛隊は新たに大型のロッキード社製C130を完成機で輸入することになった。ちなみにC130は現在までに合計三一機も購入した。
wikipediaによると、航空自衛隊が導入したC-130Hは合計で16機とのこと。
小牧基地がいかに広いとしても、C-130×31機では多すぎると思う。1飛行隊のみでの運用だから、16機の方が正しいだろう。