日本評論社の『こころの科学』の2009年7月号が「うつ病は治るか」という特集だったのに今頃気づいた。
http://www.nippyo.co.jp/magazine/5057.html
内容を確認してみると、「典型的なうつ病」≒治りやすい、「新しいタイプのうつ病」≒治りにくいとかいった感じでうつ病について広く書かれている。
で一番気になること。比較的治りやすいとされる典型的なうつ病であったとしても、それは、風邪が治るようにきれいに治るのか。あるいはそうではないのか。
宮岡等・宮岡佳子:「「うつ病が治る」とはどうなることか」という記事にその辺のことがさらりと書いてあった。
まず、抗うつ薬の役割。
病状が増悪している期間を挿話(エピソード)と呼ぶ。すなわち進行性の経過をとることが多い統合失調症に対して、うつ病や躁うつ病は挿話性の経過をとる。抗うつ薬は、症状を改善させるというよりは、治療しなくても改善するが、改善までの期間を早める役割を果たしていると考えられる。
うつ病の治療は休養と投薬とは言うが、どちらかというと、休養の役割が大きく、薬はその補助という位置づけと考えたほうがいいのだろうか。
そして「治る」ということに関して;
(5)再発の可能性と治癒という用語
うつ病は本来挿話性の疾患であり、再発することが少なくない。現在の精神医学は「再発の可能性がない状態に至っている」と判断する方法を持っていないため、うつ病では、うつ病症状が消失しても、疾患がよくなったことを意味する「治癒」という用語を用いず、とりあえず症状がよくなったと理解して「寛解」と呼ぶことがある。
「現在の精神医学は「再発の可能性がない状態に至っている」と判断する方法を持っていない」というのは謙虚な記述だと思う。
うつ病を患ったからには、どんなに容態がよくなっても、病気にかかったときと同じ状況に引き続き置かれていると「再発する」という認識はもっていたほうがいいようだ。
『誤解だらけのうつ病治療』という本でも、蟻塚亮二医師が、病気になる前の自分を目指すべきではない、ということを書いている。同書48ページ。
わかりやすいように、人を惑星に喩えて話しましょう。
惑星は、太陽など恒星の中心を軸にして、一定の軌道を描いて回っています。もし人が惑星だとしたら、うつ病になる前に戻るというのは、同じ軌道で円を描くようなものです。結局、そうなると、また同じうつ病の状態を繰り返すことになってしまう。
そうではなくて、微妙に軌道を変えていく。つまり、生き方を今までの軌道で完結するのではなく、少しずつ軌道をずらしていくことが、うつ病治療には大切なのではないかと思うのです。
「うつ病は治る」というフレーズが安易に使われすぎているように感じる。そう言うときは、休んで薬を飲めば最悪の状態からは脱出できる、という意味あいのときに限定すべきではないかと思う。
うつ病は人生を見つめなおし、生き方を変える機会であり、病気にかかったときの状況を変えようとしないかぎり、何度でも繰り返す。このことを、「治る」と同時に伝えるようにすべきだろう。
なお、自分の場合どうだったかというと、「残業をしない勤め方」に改めるぐらいでは簡単に再燃してしまった。なんとか定時に出社する生き方は維持したいのだが、最近また調子を崩してきており、再燃を防ぐことの難しさを長いこと実感している。
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