しばられてみる生き方

「戦場」という究極のストレス環境で任務を達成することが要求される、軍事組織のストレスコントロールのノウハウを紹介。

一方、市民の、「自由が多すぎる」ことによるストレスの考察もある。

自衛隊幹部とメンタルヘルス担当者というふたつの立場を活かした本で面白かった。

自由すぎる生活は「選択」という行為で消費するエネルギーが多い。このため、自由がありすぎることはかえって人を苦しくさせる。

もちろん、軍隊で戦前の新兵訓練だとか最前線だとか自由が縛られすぎるのも苦しいだろうが、今の自衛隊はそんなひどいところではない。著者はむしろこう書く(P.34)。

 だから、自衛官の自由度のバランスは、おそらく日本人の中では「ちょうど良い」レベルに保たれやすいのだと思う。

 自衛官という軍隊組織のプチ束縛感が、逆にヒトを元気にしているように思えてならない。

自由は確かに素晴らしいが、だからといって束縛はなんでもなくしてしまえ、というのもまたよくないようだ。例えば、生徒に自由を! といって制服を廃止した高校で、また制服が復活したところがあるという。年頃の子供らが毎日着る服を選ぶのはかなり悩むだろう。選択に失敗すると人間関係がこじれかねないので深刻だったという声も聞いた。

とはいえ、災害派遣や海外任務など、自衛隊ならではの激務というのがあるわけで、「束縛感が理想的」な場合ばかりではなく、メンタル面で不調を訴える人が少なくない。だからこそ下園二佐(確か今の階級は二佐のはず)もカウンセラーの職務を担っている。

ここで目を引いた事例がある。

激務のあと、その直後ではなく、数ヶ月から1年もたって調子を崩す人がいるという。「遅発疲労」と呼ぶとのこと(P.48)。

 海外勤務だけではなく、ある大きな仕事を集中的にこなし、それが終わってしばらくしてから、体調を崩すことがある。

 このようなケースを、私達は遅発疲労と呼んで、注意を喚起している。

自分も3月に年度末の激務をこなし、それから徐々に調子が悪くなっていって、半年以上たった11月にうつ病の診断が出て自宅療養になった。

このようなタイムラグの存在が、専門家に認知されているとこの本で知ることができた。

そのメカニズムは、激務で蓄積した疲労を、本来休息で癒さなければならないのだが、「達成感」が疲労感を打ち消してしまって、十分な休息ができず、むしろ仕事をさらに続けてしまうなどして、うつ症状が出るまで疲労を蓄積させてしまう結果になるとのこと。

自衛官では、海外勤務の間仕事を人に代わってもらっていた恩返しの気持ちもあって無理をしがちだとか。

49ページの図によると、激務の間は「感情が高ぶりむしろ元気に感じる」、激務が終わった後は「疲労はあるのにそれを感じられない」とある。この「疲労を感じられない」状態には注意が必要だと経験的にもそう思う。

うつ病にかかると、疲労を検知する身体の仕組みがいささか劣化するらしい。あるいは、疲労を感じられなくなるからストレスを溜め込んでうつが発症するのかもしれない。

色々参考になることが書いてあったので、今後に役立てていきたいと思う。また、軍隊のことも知識が増えて、ミリオタ的にも面白かった。