創作物を鑑賞するとき、作品間の類似点を見つけるのは楽しみの一つだ。
特に岡田斗司夫:『オタク学入門』(ISBN:4872332792)を読んでから、それが正しい鑑賞方法の一つだと信じている。
根拠は簡単にまとめることができる。
- パクリを峻別することにより、その作品のどこが独創的かがはっきりする
- 作品間の連なりを追うことで発想の系統を描くことができ、作品や創作行為に対する理解が増す
『オタク学入門』は特に後者を説いている。パクリの指摘そのものは必ずしも作品を貶めるものではない。
パクリと一言で言っても盗作・剽窃、オマージュ、パロディ、偶然など様々な形があり、また質の高低もある。盗作・剽窃は創作者として最低の行為だが、オリジナルの権利を侵害しない形で表してしまうものは簡単に善悪を断じることはできない。
したがって、悪いパクリを見つけてニヤニヤするのはパクリを指摘する楽しみのごくごく一部でしかない。マイナーなネタ元を探し当てて狂喜したり、いかに著作権をかわしてパクっているかという技巧を観察したり、多くの作品でパクられている要素はなにゆえに人気があるのか考察したり、そういった様々な様態がある。
これは何もアニメや映画など創作物に限ったものではない。例えば自動車のデザインなども、パクリ論を抜きにしては語れない。
生物の系統分類や進化の研究は、自然の創造に対する類似点の研究であると言う事ができる。神ならぬ人間の創造なのだから、創作物に対してそれを行っていけないわけがない。逆に、科学が神を糾弾するのではないように、パクリの研究も創作者を糾弾するものではない。たまたま悪いパクリが見つかった場合、槍玉に挙げられるだけである。