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鳥の時代

鳥の時代

鳥の時代

1980年に書かれた鳥の進化史。日本語訳の出版は1985年。

DNAによる系統解析や、中国で相次いだ羽毛恐竜の発見などがまだない時代の本。

とはいえ、鳥の祖先が樹上棲の小型の恐竜であること、羽毛が、飛行に先んじて恐竜の時点で主として保温のために獲得されたものであることなどがこの時点で推測されている。

鳥全般について幅広く書かれているが、中でも「飛べない鳥の進化」の章が面白かった。

クイナの仲間は容易に飛行をやめる傾向があるという。例えば沖縄のヤンバルクイナも飛べないクイナだ。クイナの仲間は、発生の容態から、ネオテニー化によってただちに飛ぶための翼を手放すことができると考察してあり、著者によると、飛べない鳥とは「大きなヒヨコ」とされる。飛ぶために必要な骨や筋肉は鳥の体重の3割ぐらいを占めるので、飛ばなくなればそれらの資源を節約できる。しかし、鳥によっては発生の初期の段階で翼ができてしまうので、容易には翼を手放せない。

ダチョウ、エミュー、キーウィ、ヒクイドリなどの飛べない鳥は「走鳥類」としてくくられるが、共通の飛べない祖先から進化したのか、それとも、各々の飛べる祖先から個別に地上に降りて飛べなくなったのか、つまり単系統か、多系統の収斂進化なのかという議論がある。本書では単系統という説には懐疑的だが、多系統であると断じているわけでもない。ただ、それらの飛べない鳥が、相互に骨盤の形状が違うことは図で示している。そこからすると、多系統で収斂進化、というのが真実味があるように思える。

キーウィは絶滅したモアの生き残りかと思っていたが、そうではないようだ。

猛禽類」の章では、ハゲタカの仲間が新世界と旧世界でそれぞれ別の祖先から進化した関連のない2系統からなることが示されている。頭に羽毛がない似たような姿は、収斂進化の結果だという。wikipediaでも両者は分けて記述してあり、旧世界のものはハゲワシ類で猛禽類、新世界のものはコンドル類でコウノトリ目に分類されている。