Inkscapeを練習しながら語る飛行機の翼(その2)

前回のまとめ:翼は梁である。

主翼は揚力で機体を空に浮かべる装置で、同時に、揚力で機体の重さを支える梁でもある。

空力的な重要部材であると同時に、強度が必要な部材、というところが面白い。

そして、前回書いたように、翼の付け根は上に曲げようとする力がかかっている。

なので、図のように翼の付け根にヒンジがあったとすると、

こんな具合に主翼がバンザイして墜落してしまう。

これを防ぐにはどうするか。

たとえば、胴体の下に突起を出して、翼とバネでつなぐ。

バネが伸びて引っ張り力がかかり、翼を支えられるかもしれない。

この図は何をもとにして描いたかというと、

鳥の体の断面図。図はwikipediaから。

鳥類の体の構造 - Wikipedia

十字懸垂の達人、鳥は、こんな具合に肋骨の発達した竜骨突起と翼を太い筋肉でつないでいる。

その筋肉の量が相当なものというのは焼き鳥から連想される通り。

翼を下に引っ張り下ろすためにある大胸筋は飛べる鳥では体重の15~25%を占めると上記wikipediaには出ている。翼を持ち上げる烏口上筋と合わせると体重の25~35%になるという。

これだけの筋肉を鍛え、維持していないと鳥は飛んで生きることができない。

人間も油断すると筋肉が減って脂肪ばかり増えてしまうから、鳥も相当大変な思いをしているだろう。

大変だろうというのは印象だけの話ではなく、鳥は離島で天敵がいないなどの環境に居つくと、多くの種が飛ぶのをやめてしまう。絶海の孤島の例でいえばマダガスカル島ドードーニュージーランドのモアがそう。

モアなど哺乳類がまったくいなかった島で草食動物の生態的地位を占めてかなりの大型に進化した。人類が海を渡ってやってくるまで飛べなくても普通に生きながらえてきた。今でもキウイのような飛べない鳥がニュージーランドには生息している。

鳥がこのような多くの筋肉を保持しているのは、ただ十字懸垂をするためだけではなく、積極的に羽ばたいて地上から飛び立つためでもある。つまり、鳥の筋肉は翼を保持する強度部材であると同時に、エンジンの役割も担っている。

飛行機も重量のかなりの部分をエンジンが占めているから、こう考えると鳥と飛行機の距離は近い。ゼロ戦主翼がやけに前の方についているのも、重いエンジンが機首にあるからで、逆に胴体は尾翼を支えるただの板金の筒で中はほぼガランドウになっている。

飛行機の開発に挑んだ人々の歴史をたどると、イギリスのジョージ・ケーリーは1799年には飛行機の推力と揚力を分離する構想をもっていたとされる(佐貫亦男:『不安定からの発想』)。

飛行機の主翼は前進に必要な力(抗力)に対して10倍ぐらいの揚力が出せるから、自重の1/10の推力が出せるエンジンがあれば飛ぶことができる。

小鳥のように地上から滑走なしで飛び上がるには体重を上回る推力が必要だけど、二乗三乗法則があって大きいものほどそのような飛行は難しくなる。鳥も大型の鳥は滑走しないと離陸できなくなり、飛べる鳥の体重の上限は15kg程度とされる(ぐぐったらアフリカオオガンが22kgだとある)。中生代を生きた翼竜は翼幅こそ10m以上と飛行機並みになっても、体重は70kg程度だったとされる。人ほどの体重が、それに付加するする装置で羽ばたき飛行をすることはおよそ不可能だというのがこういった数字からも分かる。

生き物は往復運動が得意なので、羽ばたきにより空を飛ぶことを可能にして、いわば羽ばたいて離陸できる筋力があるため、その余力で翼を水平に支えている。大型の鳥は滑空であっても翼を支えるのはけっこう大変だそうだけど、ともかく筋肉で翼を支えている。

機械は回転運動が得意だから、プロペラなどに推進力は分担させ、揚力は連続した梁で受ける。人はそうやって飛行機を発明して飛べるようになった。推力と揚力を分離するという発想は大きい進歩だった。

なお、機械は回転運動が得意なので、鳥の羽ばたきと同じようなことを回転する翼で実現しました、というのがヘリコプターということになる。ヘリコプターの仕組みも面白くて考え出すと止まらなくなるけど、話が長くなってしまうので今回はここまで。