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橋はなぜ落ちたのか

橋はなぜ落ちたのか―設計の失敗学 (朝日選書 (686))

橋はなぜ落ちたのか―設計の失敗学 (朝日選書 (686))

長大橋の失敗学。

過去の橋梁の失敗を直視し、そこから多くを学ぶことでブルックリン橋の成功を成し遂げたローブリング父子の評価が高い。

橋の崩落に至る大事故は、ケベック橋、タコマ海峡橋などおおむね30年ごとに起きているという。その理由を技術者の世代交代などを挙げて考察している。

そして、このサイクルでいくと2000年頃、斜張橋で事故が懸念されるとしている(P.199-200)(カッコ数字は丸数字)。

 要するに、今日の発展の速さで行くと、斜張橋のジャンルは次にあげるいくつかの理由によって二〇〇〇年ごろに途方もない崩落を起こす可能性が高い。(1)長スパンの斜張橋が普通になると予測されること、(2)この橋の形式のパイオニアたちがもはやその形式の設計や助言がかつてのような大きな影響力をもたないこと、(3)いくつもの橋が何十年間も架かっており実積があるため、新しい斜張スパンの監督者や設計者たちが、より軽量でよりきゃしゃで、もっと経済的でさらに大胆なスパンに向かうことが予測されること、などである。しかし、警告に気をつけていればとりわけ、その崩落が不可避であると考える理由はない。

幸い、この予言は的中しなかった。

もっとも、斜張橋のスパンは、この本が書かれた1990年代から2000年ではいくらも進歩していない。本が書かれている時の世界記録は1995年開通のノルマンディ橋だが、1999年完成の多々羅大橋は890m、これが21世紀に入ってもしばらく1位でありつづけた。1000mを超えるのは2008年完成の中国の蘇通長江公路大橋で1088m。本書で構想中と書かれた1200m級の斜張橋はまだ実現されていない。

事故が起きなかったことは喜ぶべきことだが、著者が予測するほど大胆な技術的挑戦がなされていないかったとも言える。

最後に、あの有名なタコマ海峡橋の崩落の動画を紹介する。私も新入社員研修で見せてもらった。