ひこうぐも

ひこうぐも―撃墜王・小林照彦陸軍少佐の航跡 (光人社NF文庫)

ひこうぐも―撃墜王・小林照彦陸軍少佐の航跡 (光人社NF文庫)

「飛燕」を駆って首都防衛の任に就いていた244戦隊の戦隊長で知られる、小林照彦少佐(終戦時)のご婦人の書かれた手記。

読み応えのある本。もっとも、正面からのレビューはamazonの書評や下記ブログなどに既によいものがあるので、私として何か書くのは遠慮する。

http://blog.goo.ne.jp/messneko/e/21d3a864b3c38b5d404b403cea36a64c

この本で、キ100、五式戦に対してよく言われる「低空にありても絶対不敗、高位の場合には、絶対的に必勝なり」という評価の原典を見つけたのでここに紹介したい。

本書には小林戦隊長の日記がいくつか転載されており、昭和20年6月3日の分に当該の記述がある(P.245-246)。

 六月三日
午前出撃の予定なりしも、昨日来敵機来襲の算、大なりしため、早朝より哨戒厳戒しあたりるところ、警報発令せられたるを以って、直ちに離陸、全機落下タンクを外し邀撃す。
戦果。撃墜七−九機。自爆一機(山下軍曹)、未帰還二機(本多軍曹、藤井軍曹)。戦隊集結し得ざりしが弱点なりき。未帰還機の生還を希うや切なり。「コルセア」の性能は大して良好ならず。キ100を以てすれば、低空にありても絶対不敗、高位の場合には、絶対的に必勝なり。上昇性能、旋回性能ともに我がキ100は優りあり。突入速度、稍々劣れる感あり。射弾回避は早期なるを要す、寮機を連れある場合特に然なり。
生田少尉敵機を胴体着陸せしめ、捕虜とす。殊勲甲なり。予は発動機故障となり、万世に不時着す。明日はまた、早朝出撃とか。器材の不良なるは相変らずなり。残念なる事なり。日本戦斗隊弱きにあらず、日本戦斗機の性能悪きにあらず。器材が悪きなり。材質そのもの及び工作技術が悪きなり。
若干時の戦斗にて直ちに故障続発するは、一に材質不良と、工作技術の拙劣に依るものなり。

244戦隊はこの時期、義号作戦のため鹿児島県知覧に移動し、特攻機の直掩の任務に就いていた。使用機が「飛燕」から五式戦に更新されたのは『ミリタリー・クラシックス』Vol.7によると昭和20年5月12日と出ている。

液冷エンジンの「飛燕」がトラブルに泣いたのはよく知られるが、大戦末期には五式戦といえども稼働状況は十分なものではなくなっていたことがこの日記から伺える。