まずモーターラウンジに展示してあった車。
マツダRX500。1970年の東京モーターショーに展示されたコンセプトカー。ロータリーエンジンをミッドシップに積み、ウェッジシェイプの効いたボディにガルウイングドアをそなえるエキゾチックなスポーツカー。
これはかっこいい! スーパーカーブームを体験した世代にはたまらないかっこよさ。
ミッドシップ車でキャビン後方のエンジンの上のボディをどう処理するかはいくつかパターンがあるが、この車のように屋根をそのまま後方に伸ばし、リアエンドで垂直に切ったデザインはあまりない。しかもサイドウインドウ後方のインテイクがまたかっこいい。
独創的でいい車。こんな車が30年も埋もれていたとはもったいないことをした。
エンジンとトランスミッションはルーチェロータリークーペのFF用のがあるからそれを流用したのだろうか。どちらの車も情報が少なくて詳細は分からない。
ホンダRC160。
250ccなのに4気筒。しかもDOHC4バルブ。もちろん4サイクル。そして空冷。いかにもホンダらしいエンジン。
おそらくガスタービンの発電機を搭載した電気自動車(シリーズハイブリッド)ということだと思うが、この会社は1965年にもうハイブリッド車に手を出していたのか。
シリーズハイブリッドという技術自体はエレファント自走砲など先例があり魔法の技術というわけではない。トヨタのハイブリッドですごいのは遊星歯車を使った動力分割機構でそれが出現するのはプリウス以降。
そして日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車。
第1回、1980年のファミリア。
すっきりしたスタイル、優れた操縦安定性、センスのいい内装(XGの場合)などで爆発的にヒットし、危なかったマツダを救った。
姉が1300に乗っていたので免許とりたての時運転したことがある。非力で特に低速トルクがなくエンストしやすかったが、それ以外は運転しやすく、山道を走っても楽しかった。というか楽しみをこの車で覚えた。別にとばすわけではないが、減速、シフトダウン、ハンドル操作、カーブを抜けてシフトアップ、といった一連の動作がストレスなくできて気分がよかった。
第3回、1982年のFFカペラ。
日本では人気がなかったが欧州では「マツダ626」として人気があった。欧州で強いマツダのイメージはこの車が作ったといっていい。
第4回、1983年のシビック。
ホンダの車のイメージは1982年のリトラクタブルヘッドライトを採用した2代目プレリュードで大きく変わった。これはかっこよかった。
そして3代目シビックの登場。
これも驚いた。3ドア車の屋根をリアエンドまで伸ばして胴体を垂直に切るスタイルが斬新。しかもその後端で鉄板が見えるのは外枠のみ。フロントマスクもスラントしたすっきりした形になった。これでホンダ車のイメージは完全に変わった。タミヤからプラモデルが出たので作った。
ホイールベースを短くしたクーペ車のCR-X、ホイールベースを長くしてミニバン的な車になったシャトルも印象的だった。
80カローラ用のFFのドライブトレインを後ろにもっていって作ったミッドシップ車。このレイアウトでは日本初の市販車ということで話題になった。同じ発想のミッドシップ車にフィアットX1/9がある。
四角張った遊びのないスタイルで、あまりかっこいいとは思えなかった。話によると、トヨタのある重役の人が試乗したとき、頭をぶつけたので屋根が数センチ高くなったとか。しかし、屋根を少々低くしてもこの車がかっこよくなるようには見えない。
とりあえずミッドシップ車を量産するようになった日本車だが、本当にかっこいいミッドシップ車は2代目MR2やNSXが出るまで待たなければならなかった。
第6回、1985年のアコード。
4ドアセダンなのにリトラクタブルヘッドライトというかっこよさ。今こんなセダンはない。
第7回、1986年のパルサー3兄弟からラングレー。
ビスカスカップリングを使ったフルオート・フルタイム4WDが話題になりカー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。
展示車はなんとラングレー。プリンス店で売るためにスカイラインと共通のイメージをもたせた丸型リアコンビランプが採用されている。薄いヘッドライトもスカイラインにイメージを似せている。
車種統合でこの後人知れず消えていくはずが、宮崎某の車として一時期不本意な形で有名になった。
第9回、1988年のシルビア。
洒落たスタイルとFRの優れた走行性能で爆発的ヒットとなったS13。
プレリュードを抜いてスペシャルティーカーの市場で一番人気になった。慌てたプレリュードはリトラクタブルヘッドライトでないモデル、inxを作ったが人気は取り戻せなかった。
バブルの到来もあり、この車はすごい勢いで売れた。2ドアクーペが月に何千台も売れるなど今からは想像もできない。
スペシャルティカーというジャンル自体がこの車とともにその後衰退していった。S13シルビアはその最後の花で、日産もS14、S15とがんばったが、S13の人気は再現できなかった。