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特別展「海 ――生命のみなもと――」

マクセルアクアパーク品川の後に国立科学博物館の特別展を見学してきた。

umiten2023.jp

国立科学博物館は入場に行列ができていて大変な混雑だった。この行列がなんと常設展の待機列。どうやらクラウドファンディングで話題になったので夏休みだし子供に見せるのによかろうとどっと人々が詰めかけたらしい。

k-tai.watch.impress.co.jp

特別展は珍しく週末なのに前日に予約がとれたので、この混雑は予想していなかった。

時間になって入場すると、常設展がぎっちりというのは新鮮な体験だったが、特別展の方は割と空いていた。これは多分、テーマが「海」では漠然としていて展示が想像できなかったからじゃないかなと思う。

しかし、実際に入ってみるとサプライズが。もしこれが知られたらもっと人がたくさんくると思う。

入場するとまず地球ができてからどう海ができたか。そしてどう生命が誕生したか。

ここで展示されていたのが、はやぶさ2が持ち帰ったリュウグウのサンプル片。昆虫のノミほどの大きさの欠片がケースに入って展示されていて、そんな小さな物質だけど、C型小惑星の一部として確かに真っ黒な欠片であり、はやぶさ2がはるばる旅をして地球に持ち帰った小惑星の一部というとても貴重な物質。

この展示がSNSであまり拡散されていないのはおそらく、撮影禁止だからなのかと思う。

はやぶさ2が持ち帰ったリュウグウの欠片が見られますよ」ともっと知られたら人はずっと増えるだろう。

他に石英に閉じ込められた化石海水という貴重な展示もあったが、これも撮影禁止。

海の成り立ちに続いて生命の誕生。熱水噴出孔の模型は撮影可だったので撮った。チムニーの本物も展示されていた。

現在、生命が発生した場所として有力視されているのはこの熱水噴出孔。ここでは様々な物質が存在して複雑な分子が生成され得るという。

そうでなくても、熱水噴出孔の周囲は独特の生態系が作られていて興味深い場所となっている。

生命の進化の関連でシーラカンスの標本。アクアマリンふくしまから持ってきたもの。

続いて現在の海の生きもの。さっき品川でイルカショーを見たが、ここではそのイルカの骨格が見られる。

イルカは見る分にはいいけど、歯はこんななので噛まれると大怪我するので、野生のイルカには近寄らない方がいい。今年は怪我した人がいる。

この特別展では、海の生態系について新しい視点がいくつも提示されていた。これを知るだけでも来る価値がある。

写真は深海平原の生き物。

地球の海はおよそ8割が深海平原で、深さ2200m~5500mという深くて平らな海底が広がっている。

海には魚がいるわけだが、魚のほとんどは大陸棚のように浅い海域にいて、外洋の深海平原にはほとんどいない。このため、面積が地球の半分以上を占めるにもかかわらず、深海平原の生態系はあまり注目を集めていなかった。

今回これにも着目している。深海平原の主要な生き物はナマコと単細胞生物のゼノフィオフォアだという。面積を考えると、これらの生き物も地球の生態系の中で相当の量を占めているかもしれない。

特にゼノフィオフォアは、単細胞なのに数cmの大きさがあり、写真にあるように標本は目に見える大きさ。生き物が少ない海底平原なのでこの大きさの単細胞生物が生きていけるのではと思うが、生態はまだよく分かっていない。

写真はナガスクジラの模型の中に実際の骨が埋め込んであって、クジラの骨がどう収まっているのかが分かる。

同時に、「ホエールポンプ」という新しい用語が提示されている。これは、海の中の物質の垂直移動という新しい概念に関するもので、有機物がマリンスノーとして海底に沈んでいく一方で、クジラが海面と海中を往復することで有機物を鉛直方向の運んでいるということを示す。海水の水平移動である海流は知られているが、物質の垂直移動もまた海の生態系に深くかかわっている。

続いてキーストーン種という概念の説明。写真のラッコはジャイアントケルプの生える海域で生態系のバランスに影響を与える種だという。ラッコが減るとウニが増えてケルプを食べ、ケルプが減少して行ってしまう。ラッコが存在することが豊かなケルプの森を支えているという話。陸ではダムを作るビーバーがキーストーン種の一つ。

さらにストランディングの説明ブース。今年大阪湾にマッコウクジラが迷い込んだが、これもストランディング。このクジラは死後海底に沈める処分がなされたが、調査も行われていてその結果が展示されていた。

写真の方はマスストランディングとして日本の海岸の多数漂着し、死んだイルカの頭蓋骨。

ストランディングは人のせいで起こるとは限らないが、海の環境の重要なヒントになる。

次の展示エリアは海と人間の関係。写真は原始時代に可能な方法で台湾から日本に移動する方法を検討したときに丸木舟。いろいろ大変だったが、丸木舟で移動可能であることは実証された。

www.youtube.com

最後に現在の海と人のかかわりあいについて。写真は熱水噴出孔から金を集める方法の展示で、海にはまだまだ利用できる資源があるという話。

海洋調査は無人艇が活用されている。

JAMSTECの北極研究船の模型。

そして環境問題。写真は海から回収されたプラスチックごみ。生分解されないのでいつまでも海に残り、蓄積されてきている。レジ袋もその一つであるから、無償配布はやめましょうというのは国家間で決められた流れ(別に小泉進二郎が思いついた政策ではないし、必要なら有償で入手できるのでレジ袋が禁止されたわけでもない)。

この展示ではアルミ缶もあり、アルミニウムは溶けてしまうがコーティングの樹脂はずっと残るという。

クジラやウミガメの胃から多量のプラスチックごみが出てきたという展示もあった。

さらに海洋の酸性化が指摘されている。低酸素化も始まっているという話。いずれもまだ顕著に確認できることではないが、温暖化やごみ問題とともに、注目していかなければいけない問題。

以上のように、一通り現在の海をめぐるあれこれを知ることができる特別展で、誰もが一度は見るべきものだと思う。

そこで、もっと多くの人に見てもらうためには、何かとタイアップすればいいのではと思いついた。

例えばアイドルマスターミリオンライブ!とタイアップして高坂海美とめぐる特別展海とかどうか。と思い作った雑コラ。

はやぶさ2が持ち帰ったリュウグウの欠片が見られる」ということだけでも、もっと広まれば人が集まると思う。